最強の力を持っていますが封印して 今を生きます。

はぎの

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第二十九話 葉月の夢

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 阿藤を殺してから葉月は、家に引きこもりって酒を飲み、眠っていた。

 夢は葉月にとって悲しくも優しい過去の世界を見せる。

 五年前、家族が生きていた時から、『封魔』に入って人生が大きく変わる時の葉月の人生を。

――

 小さな村の、和風で小さな農家の家。葉月はその家の畑でジャガイモを掘り返していた。家の手伝いである。彼女は着物の袖をめくり、手を土で汚しながらも、土の中に隠れているジャガイモを手に取る。
手で軽く土を払い落とし、隣に置いたかごの中に入れる。

「よし、すべて掘りえたな」

 彼女はかごに収められた多くのジャガイモを見て、笑顔になった。大地の恵み無くしては人は生きていけない。それは夢幻界も変わらない。 そして彼女はかご持ち、重さでよろよろとしながら家の縁側に置いた。そして、障子の向こうで、ほつれた服を縫っている母に話しかけた。

「お母さん 全部掘り終えたよー」

 すると障子が開いた。障子の先には、畳の上で正座をして裁縫をしている妙齢の女性の姿があった。彼女は葉月の母親である。彼女は手を止めて、優しく葉月に話しかける。
「そう、ありがとうね」

「ねえお母さん。手伝い終わったから遊びに行ってもいい?」

「ええ、いいわよ」
 母親のその言葉に、葉月は「やったー」と喜び、近所の友達の家へ走り出した。走り出した葉月の背中を母親は見て、我が子の元気な姿に頬をゆるめた。

――――
 葉月は同い年の女の子の友人を呼び出して、山の中を駆けまわったり、かくれんぼをしたりして遊んだ。
 そんな遊びを長時間していると、疲れて草むらのに寝転がった。息を整えたのち、葉月は世間話として、今夢幻界で起こっている事を話し始めた。

「先導師って知っている?」

「知っているよ。すごい力を持っている人でしょ。それがどうしたの?」

「先導師のせいでさ。この夢幻界がおかしくなっている様な気がして……」

 葉月は心配そうな声でそう話した。それに友人は意地悪そうな顔をして「何、葉月怖いの? 」と葉月に、尋ねた。それに葉月は真剣な声でこう答えた。

「とても怖いよ」
――――

 時刻は夕方、葉月は友人と別れて、帰宅していた。彼女は今で母親と父親の三人で食卓を囲んでいた。
ちゃぶ台に並ぶ料理の品々は茹でた山菜やにヒエやアワ。現代日本の料理に比べると何とも貧相な料理だが、葉月たちはこれに満足していた。たとえまずくても、家族と一緒なら不思議と美味しく感じられた。
葉月たちは団らんのひと時を過ごす。葉月はこの時間ずっと続けばいいなと願った。

しかし、そうはならなかった。
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