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7話 訪問者2
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昼間の密会相手の正体を、知っていたことに驚いたマクシミリアンは、ベアトリスに聞き返した。
「ベアトリス… 君はコンスタンス嬢を知っていたのか?!」
「ええ、彼女がデビューした年に会いましたから… 王太子妃として当然です」
ほとんどのデビュタントたちは、社交シーズンの始めに開かれる王宮主催の舞踏会で、社交界デビューを果たすことを目標にしているわ… だから私たち王族は、その年デビューする貴族の令嬢たちと、自然と対面することになるから…
ベアトリスとあまり接点が無い相手でも、王太子妃の立場上、有力貴族のシフナル侯爵家の令嬢を、知らないわけが無いのだ。
「デビュタント? そうか、なるほど… 実は彼女は……」
「あなたの側妃候補ですね?」
「……ベアトリス」
マクシミリアンの頬がピクッ… と痙攣する。
「説明は不要ですわ、殿下… 私も王太子妃として、この国に嫁いで来た時から、殿下が私以外にも側妃を娶られることは、覚悟しておりましたから」
今の私はギリギリで持ちこたえているのに… これ以上こんな話を続けていたら惨めに泣いてしまうわ! だから、言い訳なんて聞きたくない。
視線をそらしたままベアトリスは、王太子妃の覚悟を先にぶつけて… マクシミリアンの話を途中でさえぎる。
そんなベアトリスを見て、マクシミリアンは眉間に深いシワが寄せた。
「ベアトリス…!」
「ですから殿下、私のことはお気になさらず… この寝室へ無理をしてまで来てくださらなくても、これからは殿下が求める女性の元へ、行かれれば良いのです! そうすればお世継ぎもすぐに産まれるでしょうし…」
こんな意地悪なこと、私だって言いたくない。
なのにあなたは数ヶ月ぶりに私の寝室へ訪れて… 今まで愛しあう時に使っていたこのベッドに座り、他の女性を受け入れる話を、この私にしようとするなんて… どうしてあなたは、そんなに残酷なの?!
「ベアトリス、聞いてくれ!」
「聞かなくてもわかります」
「私が愛しているのは君だけだ、ベアトリス!」
寝室へ来てから、ほとんど目を合わせようとしないベアトリスに焦れ… 礼儀正しいマクシミリアンにしては、珍しく強引に抱きしめる。
「殿下… マクシミリアン様、どうか今はやめて下さい! 触れられたくないわ」
私を愛している? うそだわ! 確かに今までは、愛していたかもしれないけれど… 6年も一緒にいたから、あなたは王子を産めない私に失望し、飽きてしまったのよ! 何か月も前から、健康を取り戻した私の寝室に、来なくなったのもそのせいでしょう?
触れられたくなくて、ベアトリスは広い胸をおし返そうと、マクシミリアンに抵抗するがビクともしない。
「お願いだベアトリス、大切な話なんだ!」
「嫌だわ、嫌! 聞きたくない! 放して下さい!」
心がグチャグチャだわ! 壊れてしまいそう!
「ベアトリス…!」
「嫌で…す…っ!」
「ベアトリス!」
マクシミリアンの腕の中で暴れるベアトリスは… 何度も、何度も、キスをされる。
最初は額に… 次は頬に… そして唇にも。
「マクシ… ミリ…アン…ッ…!」
繰り返し続けられるキスの雨を、じょじょに受け入れ、ベアトリスはいつの間にか暴れるのをやめて、マクシミリアンにしがみつき… 涙をこぼした。
「ベアトリス… ベアトリス… 私には君だけだ…!」
「うそよ! こんなの… 嫌よっ… マクシミリアン様…… 嫌っ…!」
ベッドに押し倒されたベアトリスは、マクシミリアンの唇が肌に触れるたびに、身体の奥についた火が勢いを増してゆく。
荒れた心を抱えたまま、欲望に流され… 1年ぶりの情交に、2人は夜が明けるまで溺れ続けた。
「ベアトリス… 君はコンスタンス嬢を知っていたのか?!」
「ええ、彼女がデビューした年に会いましたから… 王太子妃として当然です」
ほとんどのデビュタントたちは、社交シーズンの始めに開かれる王宮主催の舞踏会で、社交界デビューを果たすことを目標にしているわ… だから私たち王族は、その年デビューする貴族の令嬢たちと、自然と対面することになるから…
ベアトリスとあまり接点が無い相手でも、王太子妃の立場上、有力貴族のシフナル侯爵家の令嬢を、知らないわけが無いのだ。
「デビュタント? そうか、なるほど… 実は彼女は……」
「あなたの側妃候補ですね?」
「……ベアトリス」
マクシミリアンの頬がピクッ… と痙攣する。
「説明は不要ですわ、殿下… 私も王太子妃として、この国に嫁いで来た時から、殿下が私以外にも側妃を娶られることは、覚悟しておりましたから」
今の私はギリギリで持ちこたえているのに… これ以上こんな話を続けていたら惨めに泣いてしまうわ! だから、言い訳なんて聞きたくない。
視線をそらしたままベアトリスは、王太子妃の覚悟を先にぶつけて… マクシミリアンの話を途中でさえぎる。
そんなベアトリスを見て、マクシミリアンは眉間に深いシワが寄せた。
「ベアトリス…!」
「ですから殿下、私のことはお気になさらず… この寝室へ無理をしてまで来てくださらなくても、これからは殿下が求める女性の元へ、行かれれば良いのです! そうすればお世継ぎもすぐに産まれるでしょうし…」
こんな意地悪なこと、私だって言いたくない。
なのにあなたは数ヶ月ぶりに私の寝室へ訪れて… 今まで愛しあう時に使っていたこのベッドに座り、他の女性を受け入れる話を、この私にしようとするなんて… どうしてあなたは、そんなに残酷なの?!
「ベアトリス、聞いてくれ!」
「聞かなくてもわかります」
「私が愛しているのは君だけだ、ベアトリス!」
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「殿下… マクシミリアン様、どうか今はやめて下さい! 触れられたくないわ」
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「嫌だわ、嫌! 聞きたくない! 放して下さい!」
心がグチャグチャだわ! 壊れてしまいそう!
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「ベアトリス!」
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最初は額に… 次は頬に… そして唇にも。
「マクシ… ミリ…アン…ッ…!」
繰り返し続けられるキスの雨を、じょじょに受け入れ、ベアトリスはいつの間にか暴れるのをやめて、マクシミリアンにしがみつき… 涙をこぼした。
「ベアトリス… ベアトリス… 私には君だけだ…!」
「うそよ! こんなの… 嫌よっ… マクシミリアン様…… 嫌っ…!」
ベッドに押し倒されたベアトリスは、マクシミリアンの唇が肌に触れるたびに、身体の奥についた火が勢いを増してゆく。
荒れた心を抱えたまま、欲望に流され… 1年ぶりの情交に、2人は夜が明けるまで溺れ続けた。
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