側妃が欲しいのですか? 言い訳は聞きたくありません

みみぢあん

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13話 苦い薬湯茶

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 2日連続でマクシミリアンと夜をごしたことで… ベアトリスはニヤニヤ笑いを侍女のロッティに向けられる。

「……っ」
 もう、ロッティ! 私のために喜んでくれるのは嬉しいけれど… あなた侍女失格よ? いつまでそんなふうに、ニヤニヤと笑っているの? 母国から付いて来てくれた侍女でなければ、とっくに辞めてもらっているところだわ。

 マクシミリアンと久しぶりに朝食をとりながら、ニヤニヤ笑うロッティを追い払おうとベアトリスは… 
「ねぇロッティ、いつもあなたがれてくれる、疲労回復にくお茶が欲しいの… すぐに用意して!」

「はい、妃殿下! すぐにご用意いたします」

 ロッティは薬湯茶やくとうちゃれに朝食室の扉へ向かうが… マクシミリアンが呼び止める。

「ロッティ、そのお茶を私の分も用意してくれないか?」

「…はい?! 王太子殿下も飲まれるのですか?」
 ギョッ… と驚いた表情でロッティは立ち止まり、聞き返した。

「ああ、私が飲んではダメなのか?」

「いえ、とても苦みがあるお茶なので… 王太子殿下が不快な思いをされるのではないかと……」
 少し前までニヤニヤと笑っていたロッティが、おびえた表情で答える。

「不快だって? そう思うものを、君は私の大切なきさきに出しているのか?」
「あ… あの、妃殿下のお身体に良い飲み物なので…!」
「なら、その身体に良い飲み物を、私にも出してくれ」
「は… はい! すぐにお持ちします!」



 ロッティが朝食室を出て行くのを見送ってから、ベアトリスは向かいがわに座るマクシミリアンに、心配そうな顔でたずねた。

「マクシミリアン様… 本当に独特な苦みがあるお茶ですよ? 飲まない方が、よろしいかと…」

「君がそんなに苦いお茶を飲んでまで、頑張って公務をこなしているのなら… 夫の私も飲むべきだと思うが?」

「本当に… あまり、無理はしないでくださいね?」
「身体に良い薬湯茶だろう? 大丈夫さ」
「それは、そうですけど…」

 だが… ロッティが運んで来た薬湯茶を一口飲むと、マクシミリアンは顔色を変える。

 ベアトリスは苦笑いを浮かべた。
「だから、言いましたのに?」

「くっ…!」
 妻にそこまで言われては、夫として面目めんぼくが立たないと… マクシミリアンは意地を張り、ググッ… と薬湯茶を飲み干した。

「マクシミリアン様、そんなに無理をされなくても…」

「ベ… ベアトリス… 君はこんなに苦いものを… いつも飲んでいるのか?」
 マクシミリアンは口を押さえて、妻にたずねた。

「ええ…」
 あなたが私の寝室に訪れた、翌朝だけですけどね…?

 ポッ… とベアトリスは頬をそめる。

「ベアトリス… 君がこんなに苦いものを飲んでいるなんて、私は君を尊敬するよ!」

「ふふふっ… これも慣れると平気になるのですよ?」

 薬湯茶の苦みで顔をしかめるマクシミリアンをベアトリスがなだめていると… 朝食室の外で待機たいきしていた、マクシミリアンの護衛騎士が室内に入って来る。


「王太子殿下、ファゼリー伯爵がいらっしゃってます、急ぎの案件があるとかで… こちらにお通ししても、よろしいですか?」

「エドガーが?」
 マクシミリアンは『部下を通しても良いか?』 …とベアトリスを見る。
 ベアトリスはマクシミリアンの視線に気づき『良いですよ』…とうなずく。

「伯爵を通してくれ!」




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