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18話 父親
しおりを挟む父親に話があると呼ばれジュリーが執務室へ来ると… 男爵領が見わたせる窓の前に立ち父親は静かに見なれた風景をながめていた。
「お父様… お話があると聞きましたが」
ジュリーが先に声をかけ執務机の前で父親を待つ。
「うむ…」
父親はハァ―――ッ… と大きなため息をつくと執務机の椅子に腰を下ろし… よく日に焼けた筋張った指を組み机の上に置く。
「お父様?」
「アリアーヌはどうしている?」
父親はジュリーの顔を無表情で見つめた。
「アリアーヌですか? あの娘なら、体調を崩して部屋に閉じこもっていますけど」
気鬱からくる体調不良だと思うわ。 今までは私があの子をなだめて、部屋から引っ張り出していたけれど。 私はそういう面倒はみないと決めたから。
「ジュリー… アリアーヌは身体が弱いから、心も弱いな」
「ええ、そうですね」
アリアーヌの場合、甘えもあると思う。 でも、それがどうしたと言うの? 今までずっと、そうだったのに。
「だからお前はこれからもアリアーヌを助けてやってくれ」
「お父様… それはどういう意味ですか…?」
ジュリーは眉をひそめ問い返すと… 父親は淡々と答えた。
「お前は今まで通り、ここで暮らせば良いと言っているのだ」
「ここで…?」
それは私に他家へ嫁ぐなと言っているの?
「どこにも行かなくて良い」
「嫌です!」
「父親の命令が聞けないのか?」
「嫌です! 嫁ぎ先があれば、私はすぐにでも結婚するつもりです」
たとえ相手が子持ちで、ずっと年上だったとしても… それでも私はこの家に残りたくない。
アリアーヌとジョナサンが結婚してこの家に住むのだから。 一緒になんて絶対に嫌よ!
「いや、結婚はあきらめろ。 お前はこの男爵家の長女で私の娘だ… 私の右腕となり、今まで通り領地の運営をお前に手伝って欲しいのだ」
「これからはジョナサンの仕事です。 ジョナサンが息子になるのです! アリアーヌの世話をするのも夫のジョナサンの役目だわ」
『結婚をあきらめろ』ですって?! 冗談ではないわ。 確かに私では結婚相手を見つけるのも難しいけれど。 それでも最初から望みを捨てたくない。 あきらめたりしないわ!
「ジョナサンがお前ほど熱心に仕事に取り組むとは思えない…」
「いいえ、それは…!」
「お前が男だったなら……」
父親は悔しそうにつぶやいた。
「そんなこと… 今まで私に学ばせたように、お父様がジョナサンに男爵領のことを教えれば良いのでしょう?」
私は長女だけど… 女性だから男爵にはなれないわ。 結局、セイフォード男爵家を継ぐのはジョナサンだから。 ジョナサンがやるべきよ。
「セイフォード男爵家を守るのは、やはりお前だジュリー!」
「……っ」
私を高く評価してくれるのは嬉しいわ。
お父様の命令通り私が男爵家に留まれば、今までの努力がすべて報われるのかもしれないけれど。 でも… それだと自分が男爵家の便利な道具になった気分だわ。 だからお父様の命令を素直に聞き入れることができない!
同意できないわ。
これから婿養子として迎え入れるジョナサンよりも… 父親は実の娘ジュリーを信頼し男爵家から出すことを考えていなかった。
ジュリー本人は複雑である。
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