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27話 質問の答え2
今、私の目の前にいるジョエル様は… 威圧的な騎士のジョエル様ではなく、ヴィクトワールの婚約者となった冷酷なジョエル様でもない。
私がよく知る優しいジョエル様にもどっていた。
ジョエル様は後悔が浮かぶ顔で私にたずねた。
「アナイス、もう一つだけ知りたい。 君なら基本的な防御魔法ぐらいは使えるだろう? なぜ虐待される前に使わなかった?」
「もちろん使おうとしたわ。 …でも、それでは躾にならないと叔父様が禁止したの。 もし魔法を使ったら… 今度は学園に通うことを禁止すると言われたから」
叔父様は魔法士の認定はされていないけれど、ワザ―トン子爵家の血筋だからヴィクトワールと同じく簡単な魔法なら使える。
だから私が防御魔法をこっそり使おうとしても、すぐに魔力の流れを感知され見破られてしまうのだ。
「…なるほど。 アナイス嬢は学園で魔法の勉強ができなくなることを恐れて、魔法で身を守れなかったというわけか……」
ウスタシュ様は難しい顔で腕組みをして、何かを考え始める。
「卑劣なヤツだ。うちの父上と同類だな」
ジョエル様はボソリ… とつぶやいた。
コンッ! コンッ! コンッ!
突然、廊下側から扉がたたかれた。 ガチャッ… と扉が開き試験官を担当している、魔法騎士団の副団長があらわれる。
「ジョエル、そろそろ休憩時間は終わりだが… ワザ―トン子爵令嬢の治療はまだか?」
私は副団長の呼びかけで、自分が試験を受ける立場なのだと思いだした。
「……っ!」
わ… 忘れていたわ! そうよ、私は認定試験を受けていた最中だったわ!
涙で濡れた自分の頬を手でぬぐった。
今度こそ何が何でも試験会場に戻ろうと、あわててベッドから下りようとしたが… 私の意識が無い間に靴を脱がされていたのだと気づく。
ベッドの周囲を見まわし、自分の靴を捜していると…
「待ってくれアナイス、オレが……」
「邪魔しないで下さい! 私は絶対に試験を受けますから!」
「わかっているから、そんなに心配するな」
ケンカ腰の私にジョエル様は苦笑して、ベッドの下から靴を出すと私の足にはかせてくれた。 そのうえ、シルクの手袋まで丁寧にはめてくれる。
「事情がわかったから、オレは君が魔法士になることを反対しない」
「……本当ですか?」
「ああ、オレは君の味方だ。 信じて欲しい… 誓約魔法を使って誓っても良い」
「誓… 誓約魔法だなんて!」
誓約を破れば身体的に何らかの罰則がかせられる魔法だわ。 そんなモノをむやみに使えば… 私が解除を許すまで、一生付いてまわるかもしれないのに?
私の手を取りジョエル様は血が付いた手袋の上から節の太い親指でなでた。
…そして忠誠を誓う騎士のように跪き、私の手にキスをする。
「ジョエル様… 本気ですか?」
「君がオレを信用できないのは当然だと思う。 それでも… オレが君を守ることを許してほしい」
「……っ!」
本気で私の味方になってくれるつもりなの…?
跪いたままのジョエル様が、私をまっすぐ金色の瞳で見あげてくる。
「アナイスを必ず守り抜くと誓う」
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