従姉が私の婚約者と結婚するなら、魔法騎士団をめざします

みみぢあん

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28話 氷解



 “アナイスを必ず守り抜くと誓う”

 ジョエル様の誓いの言葉を聞き… 私の中にポツンッ… と何かが落ちて、こおりついていた胸にフワリと温かいものが広がった。

 胸の中を温めるポツンッ… と落ちた何かに名前をつけるなら… たぶん、“希望” とつけるのが正しいだろう。

 
「……」
 もう一度、アナタを信じてみたい…

 金色の瞳で私を見つめるジョエル様に、私は願いを込めてうなずいた。

「ありがとうアナイス…」

 ジョエル様はホッ… と安堵あんどの笑みを浮かべて立ちあがる。 私もジョエル様の手を借りてベッドから下りた。




 2階の試験会場まで、久しぶりにジョエル様にエスコートされる。
 私の歩調に合わせて歩くジョエル様のたくましい腕に『私は守られている』 …という心強さを感じた。

「本当に私が魔法士になることを… 危険だからと反対しないのですか?」
「うん。 アナイスの計画通りに魔法士になっておいた方が、今は何かと有利だろうし…」

「ジョエル様、実は1日でも早く自立してシモーヌを王都へ呼び寄せて、私が保護者になれたらと考えています」

 成人の儀式を受ける前の未成年者でも、認定試験に合格して魔法士になれば、成人した者と同じ権利を法的にいくつか与えられる。

「そうだった。 シモーヌ嬢のことも考えないといけなかった」 

「私は最初にシモーヌの安全を守りたくて、この計画を思いついたから」

 さすがにこんな場所では恥かしくて叔父様に自分たち姉妹を『娼館に売る』 …と脅されたからとは口に出して言いたくない。

「確かにアナイスが、保護者が必要な弱い立場の令嬢でいるよりは何倍も良いな…」
「はい」

 ジョエル様は力強くうなずきながら、私にほほ笑んだ。


「…ところでアナイス、実技試験で少しばかり手を抜くことはできないか?」
「はぁ?!」

「魔法騎士団は実技の試験を重要視するから、それでアナイスの引き抜きをけられたらと思って…」

「ああ、なるほど。 …でも、どれぐらい手抜きをすれば良いか、私にはわからないわ?」
「う~ん… そうか……」

「手を抜きすぎて不合格になったら、最悪でしょう?」
 実は師匠のフォスター先生とも、そのことを話し合ったことがあるけれど… やっぱり手抜きはしない方が良いと結論に達したのよね。

「こんなことなら、オレも1度ぐらいは試験官を担当しておけば良かったな」

 ジョエル様が眉間みけんにしわを寄せてぼやいた。


「オイ! オイ! オイ!! そこのお前たち! バカな相談は止めないか!!」

 後ろからついて来ていた副団長が、いきなり私たちの会話に割って入って来た。
 どうやらずっと、会話を聞かれていたらしい。

「ひゃっ!!」
 話に夢中になっていた私はすっかり副団長の存在を忘れていたため、悪戯いたずらが見つかった子供のようにギョツ! …とした。 

 でもジョエル様は平然と…

「副団長… オレたちは大切な話をしているので、邪魔はしないで下さい。 それに盗み聞きをするなんて不作法ですよ?」

「ジョエル…… お前が試験官の前でそんな話をするから悪い」
「別にカンニングや不正行為をするわけではありませんから、何も悪くはありません」

「お前ってヤツは……」

 副団長はしぶい顔でジョエル様をにらむが… ジョエル様は涼しい顔で『さぁ、話の続きをしよう』と私を見下ろす。

「ジョエル様……」
 騎士団の人たちに対して、いつもこんな調子なのかしら?


 私はマイペースな態度を貫くジョエル様が、少し心配になった。





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