46 / 65
45話 沈黙の理由
お茶会の翌日。
王都で流行りのお店で買ったエクレアと、お茶会で出したバラ色のお茶の葉を手土産に、お母様がモンパトワル子爵邸にやってきた。
私の妊娠が本当なのか確かめに来たのだろう。
裏庭のガセボに案内して、お母様がもってきたバラ色のお茶とエクレアをさっそく出した。
「ユベール卿は?」
「果樹園で問題がおきたらしいの。 それで領民に呼ばれて朝から留守にしているわ」
「そう…」
なぜかお母様はひどく落ち込んでいるように見える。
『そんなに私の妊娠がショックだったの?』
…とほんの少し傷ついたけど。 今さら落ち込んだりしない。
「ありがとうございます、お母様。 昨日、お茶をいただいたとき、手に入らないか… お母様にお願いしようと思っていたので」
お母様が持ってきてくれたバラ色のお茶を飲みながら、私が手土産のお礼をいうと… 見るからに憔悴しきっていたお母様がうっすらと笑った。
いつもの高圧的な態度がどこかへ消え… お母様は疲れはてた顔をしている。
「お母様、お疲れのようですね?」
「ええ。 少しだけね」
「……」
(お茶会でパスカル卿が求婚したり。 私が妊娠をあかしたり。 ユベールの男色家疑惑をはらしたりと… たった数時間のあいだに、盛りだくさんのできことが続けておきたから疲れていて当然ね)
「昨日、あなたがこのお茶をおいしそうに飲んでいたから… お茶会が終わったら持たせてあげようと思っていたけど。 ユベール卿と先に帰ってしまったから」
「ごめんなさい、お母様。 妊娠がわかってから、ユベールが過保護になってしまって…」
本当は… あのあと大さわぎなるとわかっていたから、私たちは巻き込まれないよう逃げ出したのだ。
私はティーカップを皿におき自分のお腹をなでた。 お母様は私の手の動きを目でおい、お腹を見つめる。
「デルフィーヌ… あなた、本当に妊娠しているのね?」
「ええ」
「ユベール卿は子爵家の義務で、あなたを妊娠させたの?」
思わず私はギョッ… とした。
「……えっ! 義務?!」
(義務というと… つまり? ………ああっ! 後継者問題のことかな?)
「違うの?」
ジッ… と私の真意をさぐるように、お母様は私を見つめる。
「違います。 私とユベールは愛し合っているから… 妊娠しました」
「そうなの?」
「はい。 正直にいうと… こんなに早く妊娠するとは、私もユベールも想像していなかったの」
このことに関しては、私自身が1番驚いている。
まだまだ、ぺったんこのお腹の中に… 私たちの赤ちゃんがいるなんて、本当に信じられない。
…でも、よくよく考えると初夜をむかえた日から、私たちは一緒の寝室で仲よく眠っている。
新婚夫婦がそんなふうに夜をすごしていれば、お医者様も妊娠するのは自然なことだと言っていた。
「ユベール卿は… 嫌々、あなたを妊娠させたのではないのね?」
「もちろんです。 ユベールはとても情熱的な人ですから」
(だって、昨夜もユベールは………)
頬がカッ! と熱くなり、手のひらでパタパタと顔をあおいだ。 そんな私をお母様は目を丸くして見ている。
「それで、デルフィーヌ。 ユベール卿がパスカル卿に言っていたことだけど……」
「好意を寄せられていたことですね?」
「ええ」
「結婚相手をさがすために、従兄のシリルお兄様とジョルヴィル伯爵家の舞踏会に出席したとき… ユベールとパスカル卿がそのことで言い争う姿を見て、男色家のウワサはウソだと知りました」
「…あなたは最初から男色家ではないと知っていて、ユベール卿と結婚したというの?!」
予想どおりお母様は驚いた。 次はきっと私が黙っていたことで責められるだろう。
「はい」
「なぜ、そのことを話さなかったの?」
私は静かにスゥ──… ハァ──… と呼吸をととのえてから、お母様の質問に答えた。
「セルジュのように、ユベールまでシャルロットに奪われたくなかったからです」
「……何を言っているの、デルフィーヌ?」
「強欲なシャルロットは、私の大切な物を奪うのが好きだから」
「いくら何でもそんなことは…」
いつもの高圧的なお母様なら、私の話に耳をかたむけることなんて無いけれど。
落ち込んでいる今なら、少しは聞いてくれそうな感じがする。
「私のお誕生日にお祖母様にいただいたブローチを、癇癪をおこしたシャルロットに貸せと言ったのを、お母様はおぼえていますか?」
「…ええ。 手首を扉にはさんでケガをした時ね?」
その手首のケガをセルジュに見せて、私が虐待しているとウソをつき醜聞になったのだから… 簡単に忘れられては困る。
「はい。 1度あの娘に渡せばもどって来ないと知っていて、私はこばんだわ。 でもお母様がそれを許さなかった」
「シャルロットにブローチを、返して欲しいと言えば良いでしょう?」
そんな簡単なことの何が問題なのかと… お母様は本当にわからないようすで戸惑っている。
「いいえ、シャルロットは『失くした』と私やお母様には言いわけをして、平気で友人にあげてしまうような娘です」
「そ… そんなことは、ないはずだわ… そんな…」
「シャルロットの宝石箱を… 内緒でのぞいてみればわかります。 私から奪った戦利品であふれているはずだから」
「……信じられないわ」
溺愛するシャルロットの可愛いところしか、見えていないお母様には理解できないかもしれない。
でも…… この機会を逃せば、きっとお母様にこのコトを伝えることはできない。
「私はセルジュをシャルロットに奪われたときに思ったの。 あのままロンスヴォー伯爵家に… シャルロットのそばにいたら、大切な物を奪われ続け… 私は幸せになれないと」
「デルフィーヌ… そ… そんなことはないわ」
「……」
(やっぱりダメなの?)
「…きっとあなたの勘違いよ」
「……」
(私の言葉はお母様の心に、少しも響かないの?)
「ねぇ、デルフィーヌ。 あなたは昔から頭がよかったから、考えすぎるところがいけないのよ?」
「……」
「あなたはとても簡単なことを、難しく考えてしまうから」
「……そうね」
(やっぱり理解してもらえない)
私はハァ──… と落胆のため息をついた。
「ねぇお母様。 ずっと理解できないことがあるの。 私が長女だからきびしく育てられるのは仕方ないと思うわ。 でもね、お母様……」
「…何かしら?」
「なぜ、お母様は私を愛してくれなかったの? 私もシャルロットと同じ、お母様の娘なのに」
「……っ」
「お母様…?」
「……」
お母様は私から目をそらし、黙りこんでしまった。
私は気まずい空気の中で、冷めてしまったバラ色のお茶を静かに飲んだ。
王都で流行りのお店で買ったエクレアと、お茶会で出したバラ色のお茶の葉を手土産に、お母様がモンパトワル子爵邸にやってきた。
私の妊娠が本当なのか確かめに来たのだろう。
裏庭のガセボに案内して、お母様がもってきたバラ色のお茶とエクレアをさっそく出した。
「ユベール卿は?」
「果樹園で問題がおきたらしいの。 それで領民に呼ばれて朝から留守にしているわ」
「そう…」
なぜかお母様はひどく落ち込んでいるように見える。
『そんなに私の妊娠がショックだったの?』
…とほんの少し傷ついたけど。 今さら落ち込んだりしない。
「ありがとうございます、お母様。 昨日、お茶をいただいたとき、手に入らないか… お母様にお願いしようと思っていたので」
お母様が持ってきてくれたバラ色のお茶を飲みながら、私が手土産のお礼をいうと… 見るからに憔悴しきっていたお母様がうっすらと笑った。
いつもの高圧的な態度がどこかへ消え… お母様は疲れはてた顔をしている。
「お母様、お疲れのようですね?」
「ええ。 少しだけね」
「……」
(お茶会でパスカル卿が求婚したり。 私が妊娠をあかしたり。 ユベールの男色家疑惑をはらしたりと… たった数時間のあいだに、盛りだくさんのできことが続けておきたから疲れていて当然ね)
「昨日、あなたがこのお茶をおいしそうに飲んでいたから… お茶会が終わったら持たせてあげようと思っていたけど。 ユベール卿と先に帰ってしまったから」
「ごめんなさい、お母様。 妊娠がわかってから、ユベールが過保護になってしまって…」
本当は… あのあと大さわぎなるとわかっていたから、私たちは巻き込まれないよう逃げ出したのだ。
私はティーカップを皿におき自分のお腹をなでた。 お母様は私の手の動きを目でおい、お腹を見つめる。
「デルフィーヌ… あなた、本当に妊娠しているのね?」
「ええ」
「ユベール卿は子爵家の義務で、あなたを妊娠させたの?」
思わず私はギョッ… とした。
「……えっ! 義務?!」
(義務というと… つまり? ………ああっ! 後継者問題のことかな?)
「違うの?」
ジッ… と私の真意をさぐるように、お母様は私を見つめる。
「違います。 私とユベールは愛し合っているから… 妊娠しました」
「そうなの?」
「はい。 正直にいうと… こんなに早く妊娠するとは、私もユベールも想像していなかったの」
このことに関しては、私自身が1番驚いている。
まだまだ、ぺったんこのお腹の中に… 私たちの赤ちゃんがいるなんて、本当に信じられない。
…でも、よくよく考えると初夜をむかえた日から、私たちは一緒の寝室で仲よく眠っている。
新婚夫婦がそんなふうに夜をすごしていれば、お医者様も妊娠するのは自然なことだと言っていた。
「ユベール卿は… 嫌々、あなたを妊娠させたのではないのね?」
「もちろんです。 ユベールはとても情熱的な人ですから」
(だって、昨夜もユベールは………)
頬がカッ! と熱くなり、手のひらでパタパタと顔をあおいだ。 そんな私をお母様は目を丸くして見ている。
「それで、デルフィーヌ。 ユベール卿がパスカル卿に言っていたことだけど……」
「好意を寄せられていたことですね?」
「ええ」
「結婚相手をさがすために、従兄のシリルお兄様とジョルヴィル伯爵家の舞踏会に出席したとき… ユベールとパスカル卿がそのことで言い争う姿を見て、男色家のウワサはウソだと知りました」
「…あなたは最初から男色家ではないと知っていて、ユベール卿と結婚したというの?!」
予想どおりお母様は驚いた。 次はきっと私が黙っていたことで責められるだろう。
「はい」
「なぜ、そのことを話さなかったの?」
私は静かにスゥ──… ハァ──… と呼吸をととのえてから、お母様の質問に答えた。
「セルジュのように、ユベールまでシャルロットに奪われたくなかったからです」
「……何を言っているの、デルフィーヌ?」
「強欲なシャルロットは、私の大切な物を奪うのが好きだから」
「いくら何でもそんなことは…」
いつもの高圧的なお母様なら、私の話に耳をかたむけることなんて無いけれど。
落ち込んでいる今なら、少しは聞いてくれそうな感じがする。
「私のお誕生日にお祖母様にいただいたブローチを、癇癪をおこしたシャルロットに貸せと言ったのを、お母様はおぼえていますか?」
「…ええ。 手首を扉にはさんでケガをした時ね?」
その手首のケガをセルジュに見せて、私が虐待しているとウソをつき醜聞になったのだから… 簡単に忘れられては困る。
「はい。 1度あの娘に渡せばもどって来ないと知っていて、私はこばんだわ。 でもお母様がそれを許さなかった」
「シャルロットにブローチを、返して欲しいと言えば良いでしょう?」
そんな簡単なことの何が問題なのかと… お母様は本当にわからないようすで戸惑っている。
「いいえ、シャルロットは『失くした』と私やお母様には言いわけをして、平気で友人にあげてしまうような娘です」
「そ… そんなことは、ないはずだわ… そんな…」
「シャルロットの宝石箱を… 内緒でのぞいてみればわかります。 私から奪った戦利品であふれているはずだから」
「……信じられないわ」
溺愛するシャルロットの可愛いところしか、見えていないお母様には理解できないかもしれない。
でも…… この機会を逃せば、きっとお母様にこのコトを伝えることはできない。
「私はセルジュをシャルロットに奪われたときに思ったの。 あのままロンスヴォー伯爵家に… シャルロットのそばにいたら、大切な物を奪われ続け… 私は幸せになれないと」
「デルフィーヌ… そ… そんなことはないわ」
「……」
(やっぱりダメなの?)
「…きっとあなたの勘違いよ」
「……」
(私の言葉はお母様の心に、少しも響かないの?)
「ねぇ、デルフィーヌ。 あなたは昔から頭がよかったから、考えすぎるところがいけないのよ?」
「……」
「あなたはとても簡単なことを、難しく考えてしまうから」
「……そうね」
(やっぱり理解してもらえない)
私はハァ──… と落胆のため息をついた。
「ねぇお母様。 ずっと理解できないことがあるの。 私が長女だからきびしく育てられるのは仕方ないと思うわ。 でもね、お母様……」
「…何かしら?」
「なぜ、お母様は私を愛してくれなかったの? 私もシャルロットと同じ、お母様の娘なのに」
「……っ」
「お母様…?」
「……」
お母様は私から目をそらし、黙りこんでしまった。
私は気まずい空気の中で、冷めてしまったバラ色のお茶を静かに飲んだ。
あなたにおすすめの小説
「義妹に譲れ」と言われたので、公爵家で幸せになります
恋せよ恋
恋愛
「しっかり者の姉なら、婚約者を妹に譲ってあげなさい」
「そうだよ、バネッサ。君なら、わかるだろう」
十五歳の冬。父と婚約者パトリックから放たれた無慈悲な言葉。
再婚相手の連れ子・ナタリアの図々しさに耐えてきたバネッサは、
その瞬間に決意した。
「ええ、喜んで差し上げますわ」
将来性のない男も、私を軽んじる家族も、もういらない。
跡継ぎの重責から解放されたバネッサは、その類まれなる知性を見込まれ、
王国の重鎮・ヴィンセント公爵家へ嫁ぐことに。
「私は、私を一番に愛してくれる場所で幸せになります!」
聡明すぎる令嬢による、自立と逆転のハッピーエンド。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
幼馴染最優先の婚約者に愛想が尽きたので、笑って家出しました ― 笑顔で去っただけなのに、なぜ泣いているのですか
ラムネ
恋愛
侯爵令嬢リオナは、婚約者アルベルトが「幼馴染が可哀想だから」と約束を破り続ける日々に耐えていた。領地再建の帳簿も契約も、実はリオナが陰で支えていたのに、彼は「君は強いから」と当然のように扱う。決定的な侮辱の夜、リオナは怒らず泣かず、完璧な笑顔で婚約指輪だけを返して屋敷を去った――引継ぎは、何一つ残さずに。
翌日から止まる交易、崩れる資金繰り、露出する不正。追いすがるアルベルトを置き去りに、リオナは王立監査院の臨時任官で辺境へ。冷徹と噂される監察騎士レオンハルトと共に、数字と契約で不正を断ち、交易路を再生していく。
笑顔で去っただけなのに、泣くのは捨てた側だった。
夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。
だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。
失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。
どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。
「悪女に、遠慮はいらない」
そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。
「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。
王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」
愛も、誇りも奪われたなら──
今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。
裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス!
⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。
【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!
お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ
Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。
理由は決まって『従妹ライラ様との用事』
誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。
「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」
二人の想いは、重なり合えるのだろうか ……
※他のサイトにも公開しています。
婚約を奪った義妹は王太子妃になりましたが、王子が廃嫡され“廃嫡王子の妻”になりました
鷹 綾
恋愛
「お姉様には、こちらの方がお似合いですわ」
そう言って私の婚約者を奪ったのは、可憐で愛らしい義妹でした。
王子に見初められ、王太子妃となり、誰もが彼女の勝利を疑わなかった――あの日までは。
私は“代わり”の婚約者を押し付けられ、笑いものにされ、社交界の端に追いやられました。
けれど、選ばれなかったことは、終わりではありませんでした。
華やかな王宮。
厳しい王妃許育。
揺らぐ王家の威信。
そして――王子の重大な過ち。
王太子の座は失われ、運命は静かに反転していく。
離縁を望んでも叶わない義妹。
肩書きを失ってなお歩き直す王子。
そして、奪われたはずの私が最後に選び取った人生。
ざまあは、怒鳴り声ではなく、選択の積み重ねで訪れる。
婚約を奪われた姉が、静かに価値を積み上げていく王宮逆転劇。
【完結】王妃はもうここにいられません
なか
恋愛
「受け入れろ、ラツィア。側妃となって僕をこれからも支えてくれればいいだろう?」
長年王妃として支え続け、貴方の立場を守ってきた。
だけど国王であり、私の伴侶であるクドスは、私ではない女性を王妃とする。
私––ラツィアは、貴方を心から愛していた。
だからずっと、支えてきたのだ。
貴方に被せられた汚名も、寝る間も惜しんで捧げてきた苦労も全て無視をして……
もう振り向いてくれない貴方のため、人生を捧げていたのに。
「君は王妃に相応しくはない」と一蹴して、貴方は私を捨てる。
胸を穿つ悲しみ、耐え切れぬ悔しさ。
周囲の貴族は私を嘲笑している中で……私は思い出す。
自らの前世と、感覚を。
「うそでしょ…………」
取り戻した感覚が、全力でクドスを拒否する。
ある強烈な苦痛が……前世の感覚によって感じるのだ。
「むしろ、廃妃にしてください!」
長年の愛さえ潰えて、耐え切れず、そう言ってしまう程に…………
◇◇◇
強く、前世の知識を活かして成り上がっていく女性の物語です。
ぜひ読んでくださると嬉しいです!
結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました
ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。
ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。
王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。
そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。
「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。