【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、元婚約者を諦められない

きなこもち

文字の大きさ
8 / 34

アリオンside2

しおりを挟む
「なぁ 聞いたか?クロエ令嬢、お前の次は、今度は専門科のイオを脅して言いなりにしてるらしいぞ。」

 アリオンが放課後、帰り支度をしていると、ルイがとんでもないことを言ってきた。

「は?」

 アリオンは、信憑性のない話を平然と話してくるルイに、心底呆れた。

 また、婚約解消という状況になった友人に対して、面白半分でクロエの近況を伝えてくるコイツは、デリカシーというものが欠如してる男だと思った。

「ルイ、くだらない噂話してくるな。それに、僕の次はって何だ?クロエに脅されたことは一度もないが。」

 アリオンに相手にされず、ルイは口を尖らせて反論した。

「いや、でもさ、クロエ令嬢とイオが一緒に帰ってたのは本当なんだよ!男子から聞いた話だと、仲良さげに笑いながら帰ってるの見たって。。。」

「・・・・・・」

 ルイが男子から聞いてきた内容は、噂話よりさらにアリオンを苛立たせる内容だった。コイツは本当に不愉快な男だ。


 (仲良さそうに笑って一緒に帰った、だと?クロエとあのイオとかいう男子生徒が??ありえない。。。)


 アリオンは、クロエが最近、専門科の3匹とよく一緒にいることは知っていた。

 アリオンをいつも最優先に考え、行動していたクロエが、他の生徒と仲良くするなど、腹立たしいことこの上なかったが、自分の立場で腹を立てるのは筋違いと分かっていた。


 しかし、一人の男子と仲良くするのは話は別だ。

 クロエに笑いかけられて、落ちない男などいないことは、アリオンの実体験として分かっていた。

 アリオンからすると、イオは、特に秀でたところがない、どこにでもいる男子生徒の印象であった。

 何をとってみても、クロエの隣に立つのにふさわしい人物だと思えなかった。

 大した努力もせず、少し人気者だからクロエにも気に入られると思っているのだろうか?


 一方で、純粋で男慣れしていないクロエは、軽い口説き文句ですら真に受けてしまうのではないか、という不安もあり、アリオンは気が気でなくなってしまった。


 アリオンとルイが教室で一緒にいると、そこへ図書室から帰ってきたセリーナが合流した。

「お二人さん!なに話してるの?」

 アリオンは、ルイに余計なことは言うなと目で合図をした。

 ごく自然と、アリオンとルイの方に手を掛け、セリーナが身を乗り出すようにして聞いてきた。このところ、ルイはセリーナを意識しているように見えた。

 セリーナは元々ボディタッチが多いが、ルイよりもアリオンに触る機会が圧倒的に多い。そんなとき、ルイは決まって不機嫌になるのだ。

 アリオンは優越感というよりは、居心地の悪さを感じ始めていた。


 ◇



 以前、アリオンの屋敷にセリーナが来ていたところを、クロエに見られたことがあった。

 そもそも、なぜセリーナがあの日アリオンの屋敷にいたのか。


 婚約解消をクロエに伝えたあと、クロエは翌日から学校を休んだ。

 アリオンは罪悪感と、自分への無力感で押し潰されそうになり、またクロエの体調が心配であった。

 迷惑かとも思ったが、一度クロエを訪ねてみようと思う、とセリーナに話した時だった。


「アリオン様、やめた方がいいですよ。婚約解消されたのに、下手に優しくされたらクロエ様、もっとつらいです。。。」

 アリオンは、それは確かにそうかもしれないと思った。どの面を下げてお見舞いに行こうというのか。

「それに、アリオン様、最近寝てないでしょう?顔色も真っ青だし、ぼーとしてる。私、心配だから、今日はアリオン様のお家まで行かせてください。家で、私に悩みを吐き出したらきっと楽になりますよ。」

 セリーナが原因で婚約解消したとクロエは思っている。

 そんな中で、セリーナを家に呼ぶのはどうかと思った。

 一度断ったが、それでも行くと食い下がってくるセリーナを、断固拒否する力がアリオンには残っていなかった。

 クロエが屋敷に来たと聞いたとき、内心会いたかったが、セリーナとは絶対に鉢合わせしない方がいいと判断し、面会を断った。

 予想外にも、クロエが中へ入ってきてしまったため、最悪の修羅場となってしまったのだった。

 さらに最悪だったのは、クロエがセリーナに対して激しく怒っていた為、怒りの矛先を変えようと、自分がとっさに放ったことばだった。

『セリーナに惹かれてしまった』

 自分はこのように言った。そう言われたあとのクロエのひどく傷付いた顔を見て、

 (ああ、僕は言ってはいけないことを言ってしまった。)

 とひどく後悔した。

 クロエよりもセリーナに惹かれたから、婚約解消した、というのは全く真実ではなかった。

 セリーナには、親近感や居心地の良さを感じていたし、良い相談相手であったが、結局は激しい感情を突き動かされることはなかった。

 その後訂正しようにも、すぐに婚約解消の書簡が届き、両親にも伝えられた。

 今さら訂正したところで、何になる?
 アリオンが、婚約解消を申し出たのは事実だ。

 本心は、『婚約の為に、無理を重ねて自分自身が分からなくなる状態』が限界だったし、普段は優しいクロエが、アリオンが原因でセリーナを目の敵にするほど変わってしまったことも悲しかった。

 アリオンは、クロエが隣にいることが、長年日常に溶け込みすぎていたため、婚約解消によって

『彼女が隣からいなくなること』


を想像できていなかったのだった。
しおりを挟む
感想 88

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

王女殿下のモラトリアム

あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」 突然、怒鳴られたの。 見知らぬ男子生徒から。 それが余りにも突然で反応できなかったの。 この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの? わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。 先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。 お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって! 婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪ お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。 え? 違うの? ライバルって縦ロールなの? 世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。 わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら? この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。 ※設定はゆるんゆるん ※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。 ※明るいラブコメが書きたくて。 ※シャティエル王国シリーズ3作目! ※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、 『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。 上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。 ※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅! ※小説家になろうにも投稿しました。

隠れ蓑婚約者 ~了解です。貴方が王女殿下に相応しい地位を得るまで、ご協力申し上げます~

夏笆(なつは)
恋愛
 ロブレス侯爵家のフィロメナの婚約者は、魔法騎士としてその名を馳せる公爵家の三男ベルトラン・カルビノ。  ふたりの婚約が整ってすぐ、フィロメナは王女マリルーより、自身とベルトランは昔からの恋仲だと打ち明けられる。 『ベルトランはね、あたくしに相応しい爵位を得ようと必死なのよ。でも時間がかかるでしょう?だからその間、隠れ蓑としての婚約者、よろしくね』  可愛い見た目に反するフィロメナを貶める言葉に衝撃を受けるも、フィロメナはベルトランにも確認をしようとして、機先を制するように『マリルー王女の警護があるので、君と夜会に行くことは出来ない。今後についても、マリルー王女の警護を優先する』と言われてしまう。  更に『俺が同行できない夜会には、出席しないでくれ』と言われ、その後に王女マリルーより『ベルトランがごめんなさいね。夜会で貴女と遭遇してしまったら、あたくしの気持ちが落ち着かないだろうって配慮なの』と聞かされ、自由にしようと決意する。 『俺が同行出来ない夜会には、出席しないでくれと言った』 『そんなのいつもじゃない!そんなことしていたら、若さが逃げちゃうわ!』  夜会の出席を巡ってベルトランと口論になるも、フィロメナにはどうしても夜会に行きたい理由があった。  それは、ベルトランと婚約破棄をしてもひとりで生きていけるよう、靴の事業を広めること。  そんな折、フィロメナは、ベルトランから、魔法騎士の特別訓練を受けることになったと聞かされる。  期間は一年。  厳しくはあるが、訓練を修了すればベルトランは伯爵位を得ることが出来、王女との婚姻も可能となる。  つまり、その時に婚約破棄されると理解したフィロメナは、会うことも出来ないと言われた訓練中の一年で、何とか自立しようと努力していくのだが、そもそもすべてがすれ違っていた・・・・・。  この物語は、互いにひと目で恋に落ちた筈のふたりが、言葉足らずや誤解、曲解を繰り返すうちに、とんでもないすれ違いを引き起こす、魔法騎士や魔獣も出て来るファンタジーです。  あらすじの内容と実際のお話では、順序が一致しない場合があります。    小説家になろうでも、掲載しています。 Hotランキング1位、ありがとうございます。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました

あおくん
恋愛
父が決めた結婚。 顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。 これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。 だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。 政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。 どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。 ※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。 最後はハッピーエンドで終えます。

【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」 婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からなくなっていました。 婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。 ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/10/01  FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過 2022/07/29  FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過 2022/02/15  小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位 2022/02/12  完結 2021/11/30  小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位 2021/11/29  アルファポリス HOT2位 2021/12/03  カクヨム 恋愛(週間)6位

あなたへの愛を捨てた日

柴田はつみ
恋愛
公爵夫人エステルは、冷徹な夫レオニスを心から愛していた。彼の好みを調べ、帰宅を待ちわび、献身的に尽くす毎日。 しかし、ある夜会の回廊で、エステルは残酷な真実を知る。 レオニスが、未亡人クラリスの手を取り囁いていたのだ。 「君のような(自立した)女性が、私の隣にいるべきだった」 エステルは悟る。自分の愛は彼にとって「重荷」であり、自分という人間は彼にとって「不足」だったのだと。その瞬間、彼女の中で何かが音を立てて砕け散る。

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

処理中です...