侍女と愛しの魔法使い【旧題:幼馴染の最強魔法使いは、「運命の番」を見つけたようです。邪魔者の私は消え去るとしましょう。】

きなこもち

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私と幼馴染の最強魔法使い~幼馴染に運命の恋人が現れた!?~

アッシュとナタリー~旅立ち~

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 教会まで移動するのには、馬車を使うのかと思ったが、『移動魔法』というものを使うらしかった。
 魔法使いの1人が、魔法使い一行とアッシュ、ナタリーを囲むようにして杖で地面に魔方陣のようなものを書いた。そうすると、魔方陣が光始め、一瞬宙に浮いたような感覚があったかと思うと、気づいたときには教会前に戻っていた。
 ナタリーは驚き、そして初めて目の当たりにした魔法に感動した。
「魔法ってすごい…!!」
 それしか言葉が出てこなかった。

 教会に戻ると、シスター達に泣きながら抱き締められ、部屋でゆっくり休むように言われた。アッシュは、魔法使いと、シスター長に別室へ連れていかれた。きっと特別な話があるのだろう。
 ナタリーは、アッシュは今度こそこっぴどく叱られればいいと思った。とにかく、2人とも無事だったことに安堵し、疲労からか、泥のように眠った。


 ◇


 ナタリーは、扉のノックの音で目が覚めた。
 翌日の午前中まで寝ていたようだ。
 シスターがドアから顔を出した。
「ナタリー、身支度と着替えを済ませて、シスター長の部屋まで来なさい。」
 もしかしたら、昨日のことで自分も怒られるのだろうか…とドキドキした。部屋に入ると、長髪の魔法使い1人と、シスター長、アッシュがいた。なにやら緊張感が漂っており、ナタリーは不安になった。
 シスター長が言った。
「ナタリー、話があるの。アッシュは、昨日のことがきっかけで、魔力が目覚めたの。魔法使いとして中央に行くことになったわ。」
 ナタリーは、アッシュがあまりにも異質だとは感じていたが、やはり魔法使いだったのかと妙に納得した。
「それでは、アッシュはここを去るということですか?」
「ええ、そうなるわ。今日発つつもりよ。」
「そうですか…そんなに急に。」
 ナタリーはなんだか寂しくなった。荒れくれ者のアッシュには迷惑ばかりかけられたが、いざいなくなると思うと、やはり心配が募った。こんな性格で、魔法使いとしてやっていけるのだろうか?ナタリーがあれこれ心配していると、シスター長は言葉を続けた。

「それでなんだけど、ナタリー、あなたにも中央(セントラル)に行ってもらうわ。」
 ナタリーは意味が分からず聞き返した。
「……はい?私が?」
 シスター長は頷いた。
「あの、私には魔力なんてありません。付いて行っても、何のお役にも立たないと思います。」
「ええ、あなたには魔力はないけど、魔法使いとして行くのではないのよ。アッシュ1人では心配だから、ナタリーが助けてあげて。アッシュも、あなたについてきて欲しいと言ってるの。」
 どういうことだろう。魔法使いになるアッシュを助けるとは。足手まといにしかならないのではないか。侍女としてお世話をしろという意味だろうか。
「アッシュが、そう言ったと…」
 何もかも疑問しかないが、一番信じられないのは、アッシュが私に付いてきて欲しいと言ったことだった。私のことを、邪険に思っていたくせに、何かの間違いじゃないか。

 その時、戸惑うナタリーを見てアッシュが言った。
「ああ、ナタリーと一緒がいい。」
 はっきりそう言われたことで、ナタリーは覚悟を決めた。自分は、有無を言わさずアッシュと共に中央(セントラル)へ行かなければならないのだろう。

 この時から、ナタリーの人生は、アッシュに握られたも同然になった。
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