侍女と愛しの魔法使い【旧題:幼馴染の最強魔法使いは、「運命の番」を見つけたようです。邪魔者の私は消え去るとしましょう。】

きなこもち

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私と幼馴染の最強魔法使い~幼馴染に運命の恋人が現れた!?~

フィガロ探索

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 レイはまとまったお金を持ち出していた為、当分の生活費と、最低限の身の回りのものを揃えるには困らなかった。

 シェリーが申し訳なさそうに

「ごめんね、私ほとんど役に立たなくて。」

 と言うと、

「シェリー、気にしないで。僕、いつか魔法界を出て自由に暮らそうっ!て夢があってさ。その為に用意してたお金だったんだ。その夢が、こんなに早く叶っちゃった。シェリーのおかげだよ。」

 レイは続けた

「しかし、シェリーも気の毒だよね。あんなに働いてたのに、持ち出せるお金も貰えてなかったなんてさ。きっとあれだ!大魔法使いが、君に逃げられたり、自由にされたくなくて、まとまったお金を渡さなかったんだな。」

 なんてひどいやつだ!とぶつぶつ言いながら、レイは顔をしかめた。もはや、アッシュに「様」をつけることもしなくなったレイに、シェリーは苦笑した。

「それはそうと。。。」

 レイが話を変えるように切り出した。

「僕たち、フィガロに着いたばっかりだよね?せっかく人間界に来たんだから、まずはフィガロを探索しようよ!」

「ええ、そうね。せっかくなら楽しまなきゃ。」

 2人は、ワクワクしながらフィガロの街を探索に出掛けた。

 ◇

 フィガロは美しい街だった。

 いたるところに噴水や広場があり、観光地なだけあって、あらゆる種類の店が軒を連ねていた。

 小さな子ども連れの家族が、笑いながら広場を走り回っている。

 魔法界では見られない、幸せそうな光景だった。

 シェリーが遠い目をしていると、レイから呼ばれた。

「シェリー、ちょっとこっちきて。見たいものがあるんだ。」

 指を指したのは、庶民的なブティックだった。

「レイ、服を買うの?」

「僕のじゃなくて、君のだよ。」

「え?私は別にいらない。。。」

 シェリーは断ろうとしたが、レイはシェリーの背中を押しながら、店に入っていった。

「もう侍女じゃないんだから、黒い服ばかり着なくていいんだよ。前から思ってたけど、シェリーに黒ずくめは似合わないよ。」

 今着ている服は侍女服ではないが、唯一持っていた外出用の黒いワンピースだった。

 それもそうかと思い、シェリーは服を選び始めたが、なかなか決められなかった。

 かわいい、綺麗だと感じる服はいくつかあったのだが、その服を着る自分が想像できなかったのだ。

「決められない?じゃあ、僕が似合いそうなの選んじゃうね。」

 レイは、一通り店内を見た後、ささっといくつかチョイスしシェリーのところに持ってきた。

 レイが選んだ服は、どれもシンプルかつ可愛らしく、実用性も兼ね備えているようなワンピースやカーディガンなどだった。

「選んでくれてありがとう。すごくかわいいけど、似合う自信がないわ。」

 シェリーが苦笑いすると、レイがきっぱりと言った。

「絶対似合うよ!断言する。試着してみる?」

 レイに試着姿を見られるのがなんだか恥ずかしく、試着はいいと断った。

 サイズはきっと大丈夫だと自分に言い聞かせ、選んでくれたものを買ってもらうことにした。

「レイ、ありがとう。今はお金ないけど、出世払いするわね。」

 シェリーが申し訳なさそうに言うと、レイは

「いいよ。僕たちもう家族みたいなものだろ。」

 と言った。シェリーは両親がおらず、唯一家族と呼べるような人はアッシュだけだった。

 アッシュの元を離れた今、今度は、友達のような、かわいい弟のような家族ができた。

 シェリーはレイの言葉が、嬉しいと同時に、なんだかくすぐったかった。


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