侍女と愛しの魔法使い【旧題:幼馴染の最強魔法使いは、「運命の番」を見つけたようです。邪魔者の私は消え去るとしましょう。】

きなこもち

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私と最愛の魔法使い~王女様、私の夫に惚れられても困ります!~

悲報

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 その日、ナタリーの住む家には、隣に住む隣人のエルという女性獣人が遊びにきていた。エルは猫耳の獣人で、3人の子どもを持つ母親だ。何かとこの国に慣れていないナタリーに親切にしてくれ、良き相談相手であり、友人でもあった。
 やんちゃな子ども達を遊ばせながら、ナタリーとエルはイスに座り、ゆっくりと話をしていた。
「そういえば、ナタリーは帝国の魔法塔と、王宮どちらにも住んでたことがあるのよね?王女様って評判悪いけど、やっぱり怖いの?噂では、去年結婚した魔法使い出身の王配と実の兄に実権を握られて、今は以前の勢いは見る影もないって話だけど····王配のウィルってナタリーは知り合いなの!?」
 噂好きのエルに質問され、ナタリーは返答に困ってしまった。王配がナタリーの知るウィルなのか、そうでないのかはこの国では確かめようがなかったが、ウィルの安否を常に気にかけていた。ナタリーとウィルが再び会うことはきっともうないだろうし、ナタリーには会う資格もなかったが、彼に無事でいてほしかった。
エルには、お腹の子の父親のこと、ナタリーがなぜここにきたのか、詳しいいきさつは話していなかった。エルの夫は国境の兵士をしており、帝国の情報を仕入れてくるので、エルは帝国の時事ネタについて、ナタリーよりも情報通だった。
「いえ·····私は住んでいたといっても、顔が広くないから分からないわ。」
 ナタリーは知らないふりをしてごまかすと、エルは思ったような面白い話が聞けず、残念そうな顔をした。
「そういえば、つい先日、王宮で反乱があって人が亡くなったのを知ってた?魔法使いの勢力を王宮に入れることに対する反発があったみたいで、王宮内で爆発があったんだって。その爆発に巻き込まれたのが····確か、国の危機を救う予言をした聖女様だったかしら?」
 (·········え?)
 ナタリーは耳を疑った。
「聖女様って·······エステル様?エル───その話、間違いないの?」
「そう!エステル様よ!今日帝国では大々的に葬儀を執り行うと言ってたわ。」
 ナタリーの頭は真っ白になった。エステルが死んだ·····?アッシュと婚姻の誓いを結んだ、前世でアッシュと恋仲だったエステルが······?死ぬときは、二人一緒と誓いを立てた────
 ナタリーは真っ青な顔で立ち上がり、ふらふらと玄関の方へ向かった。
「ナタリー!どこへ行くの?大丈夫!?」
「········私、確かめなきゃ。ルイーゼに会いに行ってくる。」
 ナタリーは、すぐ近くの距離にあるルイーゼの居住地に向かい、先程の話の真偽を確かめに向かった。
 自室にいたルイーゼは、ナタリーの顔面蒼白な顔を見て驚いた。
「一体どうしたんだ、ナタリー!?」
「ルイーゼ様····聖女エステル様が亡くなったというのは───本当ですか·····?」
 きっと何かの間違いだ。エルの夫が勘違いし、間違った噂話を広めたに違いない。
「そのことか。ああ、間違いない。聖女様は王宮内での反乱による爆発に巻き込まれ、2日前に亡くなった。本日が葬儀だと伝えられている。でも、どうして·····?聖女様と知り合いか?」
 ナタリーは目の前が真っ暗になり、それから何も聞こえなくなった。ルイーゼの姿がグニャリと歪んだ。

 ナタリーはその場で意識を失い倒れた。

 意識を失ったナタリーは夢を見ていた。そこは一面真っ白な空間で、まるで雲の上のようだ。アッシュとエステルが、手を繋いで寄り添いながら、階段を上がっていく······二人とも、とても穏やかで幸せそうな顔をしていた。
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