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俺は敬語を使う事も忘れて、東条の話にのめり込んでいく。

東条は窓の外に目をやり、続ける。

「うん。キスやハグもそうだけど、例えば今みたいに、友達や恋人が熱で倒れたりすると……いや、倒れたりしなくとも、ついつい余計なお世話をやいてしまうんだ。これは海外関係なく、元々の僕の性質だね。妹はそんな僕を当たり前だと思っているから、いつも世話をやかれてくれてたけど……その感覚のまま幼稚園、小学校、中学、高校と過ごしていたら……あれは中学生の頃だったかな。友達に″やり過ぎだ″って怒られたことがあるよ」

そう言って、東条は自嘲気味に笑った。

(友達に……?)

東条が別の誰かの世話をやく場面を想像すると、なんだかモヤモヤした気持ちになる。

(それにさっき、”恋人”とも言ってたよな……恋人、いたのかな)

まぁ、このイケメンに限って、彼女いない歴=年齢ってことはないだろう。

それどころか、海外にいたのなら恋人の数も多かったかもしれない。

(……っつーか、なんで俺はそこ気にしてんだよ…!? あーもーわけわかんねぇ!)

妙なイライラが募りかけ、俺はブンブンと首を横に振った。

東条はそんな俺の様子を、特に気にすることもなく、その後も自分の過去について語っていった。

(……ふぅん)

俺は東条の話を聞いているうちに、色々と理解した。

分かった事をまとめると、要するにこういう事だろう。

東条は、

″極端に人と接し過ぎてしまう癖があり、それが恋愛感情からなのか、ただの友情なのか、判断が出来ない。だからなるべく、その接し過ぎる癖が出ないよう自制しながら生きている″

(いや、マジか。てか、それってただのチャラ男とも言えるんじゃねーのか……!?)

内心ツッコミつつも、俺は気を取り直し、東条に向かって真面目に言った。

「まぁ、その……なんかさ、そういう癖って俺には無いから分かんねーけど……あんま押さえ込みすぎると逆にこう、反動とかもありそうじゃね?」

「ああ、ある日ガマンが爆発してしまうってやつだね。うーん、それは僕も感じてはいるんだよ……特に、キスやハグはついついしてしまわないように抑え込んでいるからね。ああ、でももし……いや、そんな人いないか」

「……?なんだよ?」

自嘲気味に笑う東条に、俺は首を傾げる。

すると少しして、東条は思い切ったように言った。

「いや、あくまでも例えばの話だけど。もし、キスやハグを無条件に受け入れてくれる人がいるなら、僕は発散出来るし助かるんだけど……」

「無条件に……恋人じゃなくても、ってこと?」

「うん、そうだよ」

これは……。

さすがの俺でも分かるけど、女子にとってはサイテーな男だろう。

こんなイケメンにキスだのハグだのされたら、高確率で恋愛感情を抱いてしまうのではないだろうか。

それなのに、別に恋愛感情はないだとか、ストレス発散だとか言われた日には……言われた女子の気持ちを想像すると、いたたまれなくなる。

「お前……サイテーだな。女の敵じゃん」

「なっ……!だから、例えばの話だって言っただろう!?僕だって、本気でそんな事、考えないよ」

「あー……わりぃ、そうだった。てかさ、じゃあ……」

東条の表情がやや曇った気がして、俺はつい、焦って余計な事を口にする。

「そういうのオッケーな男友達とかいたら、よくね?」

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