79 / 175
8
79
しおりを挟む
こんな他愛もない時間か、なんだかとても温かく感じて……
俺は少しの間目を閉じて優真の声に耳を傾けてみた。
「……陽斗君?」
「え……あ、わりぃ……っ」
しまった……!
つい雰囲気に浸って、途中から優真の声が子守唄みたいになっていたかもしれない。
話は聞いていたけれど、半分夢の中みたいな状態だったからうろ覚えだ。
(うぅ……)
申し訳なく思っていると、優真が顔を覗き込んできた。
「ごめん、僕の話ばかりで……退屈だったかい?」
見れば、優真は優真で申し訳なさそうにしている。
俺は慌てて手を振った。
「あっ、いや、そういうわけじゃ……!その、なんかちょっと、気が抜けてボーッとしてたっていうか」
俺はなんとか誤魔化す。
正確には、優真の声は心地よくて、こうして話を聞いているのが幸せでボーッとしてしまった……なのだけれど、それをそのまま伝えるのは恥ずかしすぎる。
照れ隠しに俯いていると、優真は小首を傾げた。
「……ホントにそう?」
「うん……あ!食べ終わった皿、片付けてくるな!」
俺は一旦この場を仕切り直そうと立ち上がり、空いた皿に手を伸ばす。
するとふいに、優しく手を掴まれた。
「……?」
「待って」
いつもより、少しだけ低く響く優真の声。
「な、なんだよ?」
「……」
暫し、見つめ合う。
なんなのだろうと戸惑っていると、いきなり後ろ頭を引き寄せられた。
俺はバランスを崩し、優真の胸になだれ込む。
「え……っ!?」
熱っぽい瞳が迫り、唇が塞がれ、俺は目を見開く。
「んっ……!?」
逃れようとすれば後ろ頭をぐっと押さえつけられて、キスが深まる。
俺の身体は一気に熱くなった。
恥ずかしさとドキドキに強く目を瞑ると、チュッと微かな甘い音を立てて、唇が離れた。
俺は優真の腕の中で抗議する。
「……っな、なに、すんだよ……っ!?」
動揺をかくしきれず、咄嗟に腕で口元をおおう。
真っ赤になった顔を見られたくない。
優真はそんな俺を見下ろしつつ、やや気まずそうに、いつもより弱々しい声を漏らした。
「……ごめん。なんか、陽斗君が目を閉じてるのを見てたら、その、なんかこう……」
優真は暫し考えてから、僅かに頬を赤くする。
「か、可愛くて、衝動的にキスをしたくなったんだ……本当は頬に軽く、いってらっゃいのキス程度にと思っていたのにね……気付いたら口に……ごめん」
「……っ」
二人の間に沈黙が流れる。
そして、優真がポツリと呟いた。
「……嫌、だった?」
「い……あ……いや、えと……っ」
……嫌じゃない。
嫌なわけないだろ。
でも「嫌じゃなかった♡」なんて、俺には言えない。
俺はなんとか、別の言葉を探す。
俺は少しの間目を閉じて優真の声に耳を傾けてみた。
「……陽斗君?」
「え……あ、わりぃ……っ」
しまった……!
つい雰囲気に浸って、途中から優真の声が子守唄みたいになっていたかもしれない。
話は聞いていたけれど、半分夢の中みたいな状態だったからうろ覚えだ。
(うぅ……)
申し訳なく思っていると、優真が顔を覗き込んできた。
「ごめん、僕の話ばかりで……退屈だったかい?」
見れば、優真は優真で申し訳なさそうにしている。
俺は慌てて手を振った。
「あっ、いや、そういうわけじゃ……!その、なんかちょっと、気が抜けてボーッとしてたっていうか」
俺はなんとか誤魔化す。
正確には、優真の声は心地よくて、こうして話を聞いているのが幸せでボーッとしてしまった……なのだけれど、それをそのまま伝えるのは恥ずかしすぎる。
照れ隠しに俯いていると、優真は小首を傾げた。
「……ホントにそう?」
「うん……あ!食べ終わった皿、片付けてくるな!」
俺は一旦この場を仕切り直そうと立ち上がり、空いた皿に手を伸ばす。
するとふいに、優しく手を掴まれた。
「……?」
「待って」
いつもより、少しだけ低く響く優真の声。
「な、なんだよ?」
「……」
暫し、見つめ合う。
なんなのだろうと戸惑っていると、いきなり後ろ頭を引き寄せられた。
俺はバランスを崩し、優真の胸になだれ込む。
「え……っ!?」
熱っぽい瞳が迫り、唇が塞がれ、俺は目を見開く。
「んっ……!?」
逃れようとすれば後ろ頭をぐっと押さえつけられて、キスが深まる。
俺の身体は一気に熱くなった。
恥ずかしさとドキドキに強く目を瞑ると、チュッと微かな甘い音を立てて、唇が離れた。
俺は優真の腕の中で抗議する。
「……っな、なに、すんだよ……っ!?」
動揺をかくしきれず、咄嗟に腕で口元をおおう。
真っ赤になった顔を見られたくない。
優真はそんな俺を見下ろしつつ、やや気まずそうに、いつもより弱々しい声を漏らした。
「……ごめん。なんか、陽斗君が目を閉じてるのを見てたら、その、なんかこう……」
優真は暫し考えてから、僅かに頬を赤くする。
「か、可愛くて、衝動的にキスをしたくなったんだ……本当は頬に軽く、いってらっゃいのキス程度にと思っていたのにね……気付いたら口に……ごめん」
「……っ」
二人の間に沈黙が流れる。
そして、優真がポツリと呟いた。
「……嫌、だった?」
「い……あ……いや、えと……っ」
……嫌じゃない。
嫌なわけないだろ。
でも「嫌じゃなかった♡」なんて、俺には言えない。
俺はなんとか、別の言葉を探す。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
34
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる