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こんな他愛もない時間か、なんだかとても温かく感じて……

俺は少しの間目を閉じて優真の声に耳を傾けてみた。

「……陽斗君?」

「え……あ、わりぃ……っ」

しまった……!

つい雰囲気に浸って、途中から優真の声が子守唄みたいになっていたかもしれない。

話は聞いていたけれど、半分夢の中みたいな状態だったからうろ覚えだ。

(うぅ……)

申し訳なく思っていると、優真が顔を覗き込んできた。

「ごめん、僕の話ばかりで……退屈だったかい?」

見れば、優真は優真で申し訳なさそうにしている。

俺は慌てて手を振った。

「あっ、いや、そういうわけじゃ……!その、なんかちょっと、気が抜けてボーッとしてたっていうか」

俺はなんとか誤魔化す。

正確には、優真の声は心地よくて、こうして話を聞いているのが幸せでボーッとしてしまった……なのだけれど、それをそのまま伝えるのは恥ずかしすぎる。

照れ隠しに俯いていると、優真は小首を傾げた。

「……ホントにそう?」

「うん……あ!食べ終わった皿、片付けてくるな!」

俺は一旦この場を仕切り直そうと立ち上がり、空いた皿に手を伸ばす。

するとふいに、優しく手を掴まれた。

「……?」

「待って」

いつもより、少しだけ低く響く優真の声。

「な、なんだよ?」

「……」

暫し、見つめ合う。

なんなのだろうと戸惑っていると、いきなり後ろ頭を引き寄せられた。

俺はバランスを崩し、優真の胸になだれ込む。

「え……っ!?」

熱っぽい瞳が迫り、唇が塞がれ、俺は目を見開く。

「んっ……!?」

逃れようとすれば後ろ頭をぐっと押さえつけられて、キスが深まる。

俺の身体は一気に熱くなった。

恥ずかしさとドキドキに強く目を瞑ると、チュッと微かな甘い音を立てて、唇が離れた。

俺は優真の腕の中で抗議する。

「……っな、なに、すんだよ……っ!?」

動揺をかくしきれず、咄嗟に腕で口元をおおう。

真っ赤になった顔を見られたくない。

優真はそんな俺を見下ろしつつ、やや気まずそうに、いつもより弱々しい声を漏らした。

「……ごめん。なんか、陽斗君が目を閉じてるのを見てたら、その、なんかこう……」

優真は暫し考えてから、僅かに頬を赤くする。

「か、可愛くて、衝動的にキスをしたくなったんだ……本当は頬に軽く、いってらっゃいのキス程度にと思っていたのにね……気付いたら口に……ごめん」

「……っ」

二人の間に沈黙が流れる。

そして、優真がポツリと呟いた。

「……嫌、だった?」

「い……あ……いや、えと……っ」

……嫌じゃない。

嫌なわけないだろ。

でも「嫌じゃなかった♡」なんて、俺には言えない。

俺はなんとか、別の言葉を探す。
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