上 下
12 / 30

翠鳳さまの娘

しおりを挟む
翌朝、昨日の雨が嘘のようにカラリと晴れていた。何事も最初が肝心というし。緊張するけど頑張ろう。洗った敷布を白鬼丸が作ってくれた竹竿に干していたら、
「そちがりんか?」
すらりと背の高い女性に声を掛けられた。
「は、はい」
とても綺麗な女性だった。銀色の髪がさらさらと風に揺れていた。
「そちが来るのを待っていられなくてな。わらわのほうから参った」
「翡翠さま、はじめましてりんです。ご足労をお掛けしてすみません」
慌てて頭を下げた。
「翠鳳から聞いたときは驚いたが……」
翡翠さまにじっと見つめられた。
赤い目に吸い込まれる。嘘はつけないと思った。
「翠鳳が娘というなら、そちはわらわの娘になる。遠慮せずとも甘えていいぞ。ほんにまぁ、可愛いのう。でも、わらわの美しさには叶わぬがな」
翡翠さまがにこっと笑み、頭をぽんぽんと撫でてくれて、
「これをあげよう」
扇子を渡された。
しおりを挟む

処理中です...