桜空

彩矢

文字の大きさ
15 / 50

彼との出会い

「ねぇ半谷さん、いいことを教えてあげる。婚約は解消にならないわよ。残念だったわね。玉の輿に乗れなくて。ビンボー人は所詮ビンボー人。藤堂とは不釣り合いよ」
「気色悪い。ヘドが出る」
「同じ空気吸うとかマジで無理」
若い男性は僕が両性だということを知っていた。
冷たい視線と容赦ない言葉を浴びせられた。
僕だって好きで両性に生まれたわけじゃない。ごくふつうの男の子として生まれたかった。悔しかったけど反論したら火に油を注ぐようなもの。唇を噛み締めて耐えた。
「あ、そうだ。半谷さん、私ね」
唯花さんがグラスを置いて、お腹にそっと手をあてた。
「ここに藤堂との赤ちゃんいるの」
「え?」
一瞬聞き間違えじゃないか。そう思った。だって妊娠しているなら煙草もお酒もダメなはず。
「私飲んでないわよ。どこに目がついているのよ。馬鹿じゃないの」
唯花さんがきゃははと笑い出した。
「半谷さんさ、唯花さんは誠意を見せれば大事にしないと言ってるんだよ」
「フツーなら訴えられてもおかしくないのに。さすがは唯花さんだ」
「どういう意味ですか?」
「本当に馬鹿ね、あんた。言わなきゃ分からない?」
黒服の男性たちに背中に背負っていたリュックサックを奪い取られた。
「返してください!」
唯花さんは知っていたのかも知れない。今日が給料日だってことを。振込じゃなく、現金払いだということを。
「もしかしてたったこれだけ?」
「笑える」
茶封筒の中身を見た瞬間男性たちと一緒にまた笑いだした。お嬢様育ちでおそらく働いたことがない唯花さんには一生かかって分からないと思う。アルバイトをふたつ掛け持ちして、月十四万稼ぐのがどれだけ大変か。
「唯花さん、キャッシュカードありました」
「お願いです。それだけは返してください!」
それまで取られたら一貫の終わりだ。唯花さんのところに行こうとしたけど、黒服の男性たちに体を掴まれ引き戻された。
「痛い思いをしたくないだろ?暗証番号を言え」
ドスのきいた低い声で脅された。

感想 0

あなたにおすすめの小説

魔性の男

久野字
BL
俺はとにかくモテる。学生の頃から、社会人になった今でも、異性問わずにモテてしまう。 最近、さえない同性の先輩に好意を持たれている。いつものことだろう。いい人だから、傷つけたくはないな。 そう、思っていた。

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

バツイチ上司が、地味な僕を特別扱いしてくる

衣草 薫
BL
理性的でクールなバツイチ上司・桐原恒一は、過去の失敗から、もう誰も必要としないと決めて生きてきた。 男が好きだという事実を隠し、「期待しなければ傷つかない」と思い込んできた部下・葉山直。 すれ違いと誤解の果てに、直が職場を去ろうとしたとき、恒一は初めて“追いかける”ことを選ぶ。 選ばれないと信じてきた直と、逃げないと決めた恒一。 二人の距離が近づくことで、直は「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。 元ノンケ上司×自己肯定感低め部下の社会人BL。※ハッピーエンド保証。

こんな予定じゃなかったんです

にこるん
BL
とある国のとある騎士の話 新米騎士のミミルはいつものように訓練場へ向かう。 その道中、今日も向けられる熱い(暑い?)視線 そのうち続き書きます

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

ネガティブなΩがスパダリαから逃げる

ミカン
BL
オメガバース

αからΩになった俺が幸せを掴むまで

なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。 10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。 義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。 アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。 義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が… 義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。 そんな海里が本当の幸せを掴むまで…