25歳の誕生日のプレゼントは場末の地下物件でした

シンリーベクトル

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レッツノートは頑丈なパソコン

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壁際にずらりと並ぶ二十台のパソコンが、夜の居酒屋をどこか異様に光らせていた。

「なあ……これ、全部新品で買ったんじゃないよな?」
白鳥が呆れ顔でつぶやく。

「買うわけないでしょ」西村が冷静に答える。
「二十台全部リースよ。もし一台二十万円なら四百万円かかるけど、リースなら月々数万円で済む。
 しかも企業落ちの中古を混ぜれば、さらに安くなる。――つまり“低予算で一気に導入”の整合性は取れるの」

「なるほどな……お前、数字出すと説得力あるよな」
白鳥は苦笑いしながら、ペットボトルを口に含んだ。

「しかもリースなら壊れてもサポート込み。初期費用ゼロで、月々の飲み代から一人百円積み立てれば余裕で回収できる」

今度は涼子が腕を組み、誇らしげに続けた。
「こういうのを“資産を持たずに運営を回す”って言うのよ。ベンチャーやスタートアップでは常識」

「おいおい……飲み屋でベンチャー論やめろよ」
高橋が吹き出す。
「でもまあ、これ見てると“俺たち、ほんとにやり出したんだな”って実感するよな」

山本はノートPCの画面を指でつつきながら、どう使ってやろうかと目を輝かせていた。


 もともと建設現場のバリバリ現役だった白鳥の号令で、改装工事は始まった。
現場監督のように腕を振るいながらも、予算はカツカツ。

白鳥と高橋、そして仲間たちは廃材を集めては
「こっちに使える」「いや強度が足りない」と言い合い、埃にまみれて夜遅くまで悪戦苦闘を繰り返した。

高橋が手伝いながらぼやく。
「現場仕事で汗かくのは慣れてるけど……仕事終わってからも働くとはな」

「文句言うな。予算ゼロでやるなら、工夫しかねぇんだ」
白鳥はヘルメットを投げ置き、図面をにらむ。

何度も衝突しながらも、ようやく形になった。
低予算とは思えない仕上がりに、白鳥のこだわりも息を吹き込まれている。

 そして完成の日。

仲間たちが暖簾をくぐった瞬間、女性陣が足を止めた。

「……え、ここ、本当にあの地下室なの?」
理沙が目を丸くする。

壁は白とグレーで統一され、廃材をリメイクした木目が温かいアクセントになっている。
観葉植物が点在し、天井には白鳥が現場から持ち込んだ資材で取り付けたペンダントライトが柔らかく灯っていた。
各席には小さなパーテーション、そしてきらりと光るレッツノート。

「前の地下室の面影、完全に消えてるんだけど……」
西村が呆然とつぶやく。
「まるでGoogleのオフィスか何かじゃない?」

理沙がきゃっと声を上げる。
「オシャレすぎる! 写真撮ってインスタに上げたい!」

一方で山本は首をかしげた。
「これ……もうちょっとシンプルでもよかったんじゃないか?
 居酒屋っていうより、イケてるベンチャーのオフィスだろ」

涼子は胸を張り、堂々と宣言する。
「いいのよ。これが新しいコンセプト“知的エンタメ空間”!
居酒屋とオフィスとライブハウスのハイブリッド!」

そのとき高橋が、現場で手伝った荒れた指で天井のスポットライトを指差した。
「じゃあ、あそこで俺がアコギライブやってもいいんだな?」

「ええ!」
涼子が力強く頷く。
「あなたの音楽で、この空間に“魂”を吹き込むのよ!」

白鳥は汗にまみれた数週間を思い出しながら、静かに店内を見渡した。
苦労して積み上げたからこそ、この地下空間には確かに仲間たちの熱が刻まれていた。
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