永遠のヒーラー(ショートショート集)

シンリーベクトル

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隠しダンジョン

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――第十三層、南壁。

ランタンの灯が、ざらついた岩肌を淡く照らしていた。
湿った空気。静かな滴の音。
パーティの四人は、長い探索の果てに、奇妙な違和感に気づいていた。

「……ここの壁、他と違うな」
先頭の戦士ガルドが、手のひらで叩いた。音が鈍い。
魔導士のリーネが首をかしげる。
「石質も違う。ここだけ苔も生えてない。まるで“新しい”……?」

「罠か?」
盗賊ジークが眉をひそめる。
「いや、もしかしたら隠し部屋かも!」
僧侶ミラが小さく目を輝かせた。
「この階層に伝説の聖杯があるって話、聞いたことある!」

ガルドは剣を抜き、静かにうなずいた。
「……行くぞ。壁を壊す。」

岩を打つ音が響く。
ゴッ、ゴッ、ゴッ。
最後の一撃で――壁が砕けた。

次の瞬間。
“音”が変わった。

――ドウゥゥゥン……!

暗闇の向こうから、何かが押し寄せる。
重く、冷たい、圧倒的な“水の音”。

「……まさか――!」

海水が爆発のように吹き出した。
轟音。岩壁を砕く勢い。
松明が弾け飛び、リーネの叫びが泡に呑まれる。

冷たい。
光が消える。
息ができない。
身体が浮く。
掴んだ手が、滑って離れる。

ミラの祈りが、泡の中で消えた。
ジークの短剣が、流れの中で輝いたのを、ガルドは最後に見た。

――ダンジョン第十三層、南壁。
その向こうには、かつて海だったものが眠っていた。
何百年も前に沈んだ“地上の記憶”。
封印の壁は、それを閉じ込めていたのだ。

翌日。
探索隊の報告には、こう記されていた。

「二階層以降海水により侵入不可能。」



噂だけが一人歩きしていないか?という問いかけの物語です
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