9 / 24
わらしべ長者
しおりを挟む
わらしべ長者 ― 二つの道 ―
むかしむかし、ある村に貧しい青年がいた。
ある日、寺で祈っていると、不思議な声が耳に届いた。
「最初に手にしたものを大切にしなさい。それがお前の運を開く。」
青年がふと見ると、足元に一本のわらしべが落ちていた。
彼はそれを拾い上げ、歩き始めた。
⸻
道すがら、泣いている子どもに出会う。
青年はわらしべを渡した。
子どもは喜び、礼にミカンをくれた。
そのミカンを持って歩くうちに、喉の渇いた旅人に出会う。
青年はミカンを差し出し、代わりに美しい布をもらった。
布は、町で馬と交換された。
馬は病弱だったが、青年の手厚い世話で元気を取り戻し、
その姿を見た商人が金貨と屋敷を差し出した。
こうして青年は、一本のわらしべから立派な一軒家を手に入れた。
村人はそれを“奇跡”と呼んだ。
⸻
同じ村に、ひとりの少女がいた。
彼女もまた、偶然拾った一本のわらしべを手にしていた。
「これが、私の始まりか……」
少女は考えた。
燃やせば火が起きる。編めば形になる。
乾かせば麦わら帽子になり、束ねればスダレにもなる。
やがて、藁を乾燥させ、発酵させて肥料を作り、
家畜の飼料にも応用した。
畑は豊かに実り、人々は買い求め、
少女の納屋は日に日に広がっていった。
数年後。
少女は、自らの手で建てた一軒家の縁側に腰を下ろし、
夕陽を見つめていた。
通りを歩く青年が、笑いながら声をかけた。
「君も家を手に入れたのか。」
「ええ、わらしべのおかげで。」
二人は顔を見合わせ、静かに笑った。
⸻
青年は「幸運の連鎖」で家を得た。
少女は「工夫と時間」で家を築いた。
道は違えど、根は同じ――
たった一本のわらしべ。
運に導かれる者もいれば、
働きで運を育てる者もいる。
どちらの家も、夕陽の中で同じように輝いていた。
青年は、わらしべ一本から次々と財を手に入れていった。
牛を得、屋敷を得、人々の称賛を得て、いまや立派な豪邸の主人である。
そんな彼の成功譚を、少女は静かに見つめていた。
彼女もまた、一本の藁を手にしたあの日から、地道に働き、工夫を重ね、
藁を麦わら帽子に、スダレに、肥料に変えて、確かな暮らしを築いてきた。
祝いの宴の夜、青年が誇らしげに語る。
「すべては運のおかげさ。神様が俺を選んだんだ。」
少女は微笑んだ。
その瞳は、どこか冷ややかだった。
「……そう。いつまでもその幸運が続くといいね。何のスキルもないあなたに。」
確実な未来のための物語です
むかしむかし、ある村に貧しい青年がいた。
ある日、寺で祈っていると、不思議な声が耳に届いた。
「最初に手にしたものを大切にしなさい。それがお前の運を開く。」
青年がふと見ると、足元に一本のわらしべが落ちていた。
彼はそれを拾い上げ、歩き始めた。
⸻
道すがら、泣いている子どもに出会う。
青年はわらしべを渡した。
子どもは喜び、礼にミカンをくれた。
そのミカンを持って歩くうちに、喉の渇いた旅人に出会う。
青年はミカンを差し出し、代わりに美しい布をもらった。
布は、町で馬と交換された。
馬は病弱だったが、青年の手厚い世話で元気を取り戻し、
その姿を見た商人が金貨と屋敷を差し出した。
こうして青年は、一本のわらしべから立派な一軒家を手に入れた。
村人はそれを“奇跡”と呼んだ。
⸻
同じ村に、ひとりの少女がいた。
彼女もまた、偶然拾った一本のわらしべを手にしていた。
「これが、私の始まりか……」
少女は考えた。
燃やせば火が起きる。編めば形になる。
乾かせば麦わら帽子になり、束ねればスダレにもなる。
やがて、藁を乾燥させ、発酵させて肥料を作り、
家畜の飼料にも応用した。
畑は豊かに実り、人々は買い求め、
少女の納屋は日に日に広がっていった。
数年後。
少女は、自らの手で建てた一軒家の縁側に腰を下ろし、
夕陽を見つめていた。
通りを歩く青年が、笑いながら声をかけた。
「君も家を手に入れたのか。」
「ええ、わらしべのおかげで。」
二人は顔を見合わせ、静かに笑った。
⸻
青年は「幸運の連鎖」で家を得た。
少女は「工夫と時間」で家を築いた。
道は違えど、根は同じ――
たった一本のわらしべ。
運に導かれる者もいれば、
働きで運を育てる者もいる。
どちらの家も、夕陽の中で同じように輝いていた。
青年は、わらしべ一本から次々と財を手に入れていった。
牛を得、屋敷を得、人々の称賛を得て、いまや立派な豪邸の主人である。
そんな彼の成功譚を、少女は静かに見つめていた。
彼女もまた、一本の藁を手にしたあの日から、地道に働き、工夫を重ね、
藁を麦わら帽子に、スダレに、肥料に変えて、確かな暮らしを築いてきた。
祝いの宴の夜、青年が誇らしげに語る。
「すべては運のおかげさ。神様が俺を選んだんだ。」
少女は微笑んだ。
その瞳は、どこか冷ややかだった。
「……そう。いつまでもその幸運が続くといいね。何のスキルもないあなたに。」
確実な未来のための物語です
0
あなたにおすすめの小説
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる