永遠のヒーラー(ショートショート集)

シンリーベクトル

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わらしべ長者

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わらしべ長者 ― 二つの道 ―

むかしむかし、ある村に貧しい青年がいた。
ある日、寺で祈っていると、不思議な声が耳に届いた。

「最初に手にしたものを大切にしなさい。それがお前の運を開く。」

青年がふと見ると、足元に一本のわらしべが落ちていた。
彼はそれを拾い上げ、歩き始めた。



道すがら、泣いている子どもに出会う。
青年はわらしべを渡した。
子どもは喜び、礼にミカンをくれた。

そのミカンを持って歩くうちに、喉の渇いた旅人に出会う。
青年はミカンを差し出し、代わりに美しい布をもらった。

布は、町で馬と交換された。
馬は病弱だったが、青年の手厚い世話で元気を取り戻し、
その姿を見た商人が金貨と屋敷を差し出した。

こうして青年は、一本のわらしべから立派な一軒家を手に入れた。
村人はそれを“奇跡”と呼んだ。



同じ村に、ひとりの少女がいた。
彼女もまた、偶然拾った一本のわらしべを手にしていた。

「これが、私の始まりか……」

少女は考えた。
燃やせば火が起きる。編めば形になる。
乾かせば麦わら帽子になり、束ねればスダレにもなる。

やがて、藁を乾燥させ、発酵させて肥料を作り、
家畜の飼料にも応用した。
畑は豊かに実り、人々は買い求め、
少女の納屋は日に日に広がっていった。

数年後。
少女は、自らの手で建てた一軒家の縁側に腰を下ろし、
夕陽を見つめていた。
通りを歩く青年が、笑いながら声をかけた。

「君も家を手に入れたのか。」
「ええ、わらしべのおかげで。」

二人は顔を見合わせ、静かに笑った。



青年は「幸運の連鎖」で家を得た。
少女は「工夫と時間」で家を築いた。

道は違えど、根は同じ――
たった一本のわらしべ。

運に導かれる者もいれば、
働きで運を育てる者もいる。

どちらの家も、夕陽の中で同じように輝いていた。

青年は、わらしべ一本から次々と財を手に入れていった。
牛を得、屋敷を得、人々の称賛を得て、いまや立派な豪邸の主人である。

そんな彼の成功譚を、少女は静かに見つめていた。
彼女もまた、一本の藁を手にしたあの日から、地道に働き、工夫を重ね、
藁を麦わら帽子に、スダレに、肥料に変えて、確かな暮らしを築いてきた。

祝いの宴の夜、青年が誇らしげに語る。
「すべては運のおかげさ。神様が俺を選んだんだ。」

少女は微笑んだ。
その瞳は、どこか冷ややかだった。

「……そう。いつまでもその幸運が続くといいね。何のスキルもないあなたに。」




確実な未来のための物語です
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