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29.涙のクリスマス・イブ

涙のクリスマス・イブ

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サーコのモノローグへ戻ります。
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クリスマスイブ。
あれからずっと待っていたがジングからはまだ連絡がない。退院できたかな。携帯、買い換えたんだろうか。

今日は朝から出勤だ。それにしても、クリスマスイブというのにこの洗車の列はなんだろう? キレイにしてお出かけしたいということ? ずっと連続で手を動かし続ける。ワックス臭くなりそう。
昼もほとんど休憩ゼロで働き、14時ごろやっとお昼にありつけた。今日は菓子パンひとつとペットボトルのお茶だけ。そして17時までぶっ続けで働く。

勤務を終えて家路につく。
スーパーの前で気がついた。ラインに通知マークが来ている。あたしはいそいでクリックした、ジングだ!

Merry Christmas!メリー・クリスマス!

たくさんのスタンプ。そしてメッセージ。

Don't worry心配しないでAsako麻子I'm O.K.私は大丈夫

あたしは電話のボタンをクリックした。呼び出し音が鳴って、電話に出る音。
「サーコ!」
ジングだ。ジングの、トモの声がする。あたしは電話にすがりつく。
「ジング! 大丈夫なの? 退院したの?」
「はい、昨日退院して、すぐスマートフォン買ってラインをインストールしました」
変わらない声がする。あたしは泣きながら彼に話しかける。
「良かった。良かった! とても心配したよ?」
「ありがとう。ごめんね。もう大丈夫だから」

良かった。ジング、クリスマスに間に合った。神様、感謝します。

ジングは、トモは声を弾ませる。
「しばらく通院があるので、沖縄へは2月頃行きます。またラインします」
「わかった。リャオさんも心配してたよ?」
「このあと電話しますよ。じゃ、また。メリークリスマス!」
「メリークリスマス! またね!」

あたしは電話を切って空を見上げる。日が沈み、星が瞬き始める。
この空は韓国まで広がっている。
スーパー中に「きよしこの夜」のオーケストラが流れている。

二千年以上前のベツレヘムの町で、イエスキリストはお生まれになりました。
この世の悪からあたしたちを救うために。

神様はジングを守ってくれた。2月になれば、ジングに会える。
よし、2月までバイト頑張ろう。
あたしはスマートフォンを胸元に抱きしめてそう誓った。
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