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Epilogue

5.結婚式~誓いの言葉と指輪交換、式終了まで

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At Southern Garden in the Southern Hospital, Nakagusuku Village, Okinawa;  April 14, 2001.
The narrator of this story is Tsutomu Kochinda(Uema).

「間に合った! 上間、多恵子、おめでとうなー!」
扉から勢いよく一人の人物が入ってきた。
「島ちゃん! ありがとう、来てくれたんだ?」
「なんとか仕事切り上げて、高速飛ばしてきた。はい、約束のブーケ」
島ちゃんはそう言って、持ってきたブーケを渡しながら、舐めるように多恵子を眺めている。
「多恵子。お前、今日はでーじ、きれいだなー!」
「どうもありがとう」
多恵子が顔を赤らめて、にっこりした。

良かったね、ほめてもらって。その衣装、カーテンって、言うなよ?

多恵子がベールをかぶって、伊東先生と扉の外へ出て行った。僕は左手で松葉杖を構え、祭壇の側にスタンバイした。いよいよ、本番だ。

“Ladies and Gentlemen. Stand up, please!”
(みなさま、お立ち下さい)

Dr. Caldwellの声が響き、参列者全員が立ち上がる。今回はDr. 自ら進行役を買って出てくださった。お父上が本物の牧師さんなんだってさ。知らなかった。
照喜名が吹くワーグナーの「結婚行進曲」に合わせて、多恵子と腕を組んだ伊藤先生がバージンロードを歩いてきた。僕の側で、東風平こちんだ夫妻がこんな会話をしていた。
「お父さん、多恵子、ー似合とっさー」
ぬーがやら、みーから汗小あしぐゎーっんじてぃゅーしが」

祭壇に着き多恵子が伊東先生の手を離れ、僕の側へやってきた。
僕らは祭壇の前へ並んだ。
Dr. Caldwellの落ち着いた声が響き渡る。

Dearly beloved,
(愛する者たちよ)
we are gathered together here in the sight of God
(我々はこの神の家に集まり)
to join together this Man and this Woman in holy Matrimony;
(この男子と女子との結婚の儀式を執り行おうとしています)
which is an honorable estate, instituted of God in Paradise,
(ここは、清められた場所、神が定めた天国から)
and into which holy estate these two persons present come now to be joined.
(一緒になるこの二人への祝福がもたらされる、聖なる場所であります)
I ask you now in the presence of God and this congregation to declare your intent.
(私は今、神の霊と集った人々の前で、あなたがたへ意志を問います)

Dr. は多恵子の方を向いた。

Taeko, Will you have this man to be your husband,
(多恵子よ、あなたはこの男子を夫とし)
to live together in a holy marriage ? 
(この聖なる結婚の儀式において一緒になることを誓いますか?)
Will you love him, comfort him, honor and keep him in sickness and in health,
(彼を愛し、彼を励まし、病める時も健やかなる時も、彼を尊敬し、彼と共にあり)
and forsaking all others, be faithful to him as long as you both shall live ?
(そして何をおいても、その命の限り彼に誠実であることを約束しますか?)

想像したよりも力強く、多恵子が誓いの言葉を述べた。

“I will.”
(はい、誓います)

続いて、Dr. が僕のほうを向いた。

Tsutomu, Will you have this woman to be your wife,
(勉よ、あなたはこの女子を妻とし)
to live together in a holy marriage ?
(この聖なる結婚の儀式において一緒になることを誓いますか?)
Will you love her, comfort her, honor and keep her in sickness and in health,
(彼女を愛し、彼女を励まし、病めるときも健やかなる時も、彼女を尊敬し、彼女と共にあり)
and forsaking all others, be faithful to her as long as you both shall live ?
(そして何をおいても、その命の限り彼女に誠実であることを約束しますか?)

僕も胸を張って答えた。

“I will.”
(はい、誓います)

続いて、マギーがグノーのAve Mariaを歌う中、僕は多恵子のベールを上げ、指輪を交換した。結婚指輪なんかいらない、って多恵子は言ってたんだけど、僕が強く希望したのだ。どうしてもこの指輪交換ってのをしたかったもので。プラチナで指輪を作る時間的な余裕がなかったので、ピンクゴールド製のペアリングを購入しました。

……今まで指輪なんてしたことないけど、思ったよりでかいな、これ。
照喜名てるきなの奴、いつも、こんなのつけて粟国さんと歩いているのか? 正気か?

無事に指輪の交換を終え、Dr. が両腕を上げた。ランチタイムの間に式を終わらせる必要があるため、これで締めくくりなのです。

God, bless these hands that you see before you this day.
(神よ、彼らの手を本日より祝福してください)
May they always be held by one another.
(彼らが常にお互いを助け合えるよう)
Give them the strength to hold on during the storms of stress 
and the dark of disillusionment.
(襲い来る嵐にも、幻滅の闇にも耐え得る強さを彼らにお与えください)
Keep them tender and gentle as they nurture each other in their wondrous love.
(彼らがすばらしい愛情の中で互いに成長していけるよう、優しさと慈しみをもってお守りください)
Help these hands to continue building a relationship founded in your grace,
rich in caring, and devoted in reaching for your perfection.
(彼らの豊かな愛情が、あなたのように完璧でありつづけ、あなたの慈悲のもとに築かれた彼らの契りがずっと続くよう、彼らの手をお助けください)
May Tsutomu and Taeko see their four hands as healer, protector, shelter and guide.
(勉と多恵子とが、彼らの四つの手でもって、彼ら自身を癒し、守り、覆い、導くよう)
We ask this in your name, Amen.
(あなたのお名前のもとにお祈りいたします。アーメン)

続けて、参列者全員が祈りの言葉を唱えた。

“Amen.”
(アーメン)

そして僕らは、今度は照喜名が吹くメンデルスゾーンの結婚行進曲に乗せて、腕を組んでバージンロードから退場した。列席者全員から、拍手、喝采、指笛が乱れ飛んだ。

“Be happy forever!”
(どうかお幸せに!)
「おめでとー」
「おめでとうなー!」
「よかったね、ふたりとも」
「うまくやれよー」
僕らが教会の外へ出た頃、照喜名てるきながこう叫んだ。
「やっと、吹き終わったー!」
周りから爆笑が湧き上がった。(6.へつづく)

なお、後日婚約指輪を買った勉君の短編がアルファポリスにありますのでリンクします。
「婚約指輪は永遠なり?」https://www.alphapolis.co.jp/novel/421941900/845496306/episode/4309325
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