僕らの距離

舵平 純生

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嚆矢

惹起

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活気溢れる
夏休みが終わり
通常営業に戻る店内

清人の痣も消え
居候生活にも
慣れ始めていた

朝飯と昼食を
清人と共に部屋で食し
夕飯のコンビニ弁当を
部屋へ届ける関は

清人が来る以前の
生活リズムを取り戻す

和風スナック『小夜子』で
飲み明かす日もあれば

風俗へ出掛ける日もあり

深夜に帰宅する関は
寝静まる清人のベッドへ
潜り込み眠る日々

次第に清人との会話も減り
清人の存在すらも
薄らぎ始めていた


午後5時半
遅い昼休憩を終えた関が
店へ戻る時刻が過ぎ

勤務を終えた穂苅が
関の部屋のドアを叩く

清人がドアを開けると
勝手に上がり込む穂苅は
歩きながらベルトを外し
ズボンと下着を下ろし
ソファーへ腰掛ける

下半身を晒し
スマホを弄る穂苅は
小刻みに右脚を揺する

「やれよ 清人」

穂苅の足元へ
跪く清人は
穂苅のペニスを咥え
フェラチオを強いられた

突如 髪を握られた清人は
ペニスを咥えたまま
穂苅の顔を見上げ

清人の髪を握りながら
消えた顔の痣を確認する穂苅は
握る髪を手放し
スマホを弄り

「明日から
 客取るぞ
 出掛ける用意して待ってろ」

清人の動きが止まり
清人の頭を鷲掴みする穂苅は
喉奥までペニスを押し込み

「早く達かせろよ」

噎ぶ清人は唾液を滴らせ
懸命なフェラチオを施し
口内へ射精する精子を
口に含み

流し台へ吐き捨て
口を濯いだ

下着とズボンを履きあげ
ベルト閉める穂苅は
関の煙草へ火を灯し

「俺は協力してやってるんだからな

 金を返済する為に
 撮影出来ないんじゃ
 客取るしかないだろ

 俺だって買春の周旋なんて
 本当は したくないんだぜ

 わかるよな 清人」

穂苅に背を向け
流し台の前へ佇む清人

数回吸った煙草を
灰皿で揉み消す穂苅は
清人の背後へ移動し
肩に腕を回す

「心配ないって
 何回も話しただろ

 客はAVの購入者だし
 身元も割れてる

 金払いもいいし
 話も通してある

 客も清人を抱く事
 楽しみにしてるんだ
 悪い話じゃないだろ」

玄関口で靴を履く穂苅は
振り返り念を押す

「関ちゃんには
 言うなよ

 わかってるな 清人」

終始 口を閉じた清人は
威嚇する穂苅の顔を見ず

「…はい」

命令に従う返事をした

穂苅の姿が消え
軋む胸元を握る清人は
ズルズルと流し台の前へ
しゃがみ込み

高鳴る動悸と切れる息を
整えながら
震える両手を握り絞め
必死に耐える事しか
出来なかった

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