【完結】イマジン 準備号〜仲間が強すぎるので、俺は強くならなくて良いらしい〜

夜須 香夜(やす かや)

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第20話 伊吹、皐月と出会う

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 ドーム状の建物だけが並ぶ街中を歩いている。道は整えられた白いレンガでできている。
 一面が白い。汚れも所々あるが、白いのは確かだ。
 建物の軒数を数えながらでないと、迷いそうだ。
 交差点に着いて、俺は買い物に行った時に買った方位磁石で方向を確かめた。
「方向音痴じゃなくても迷いそうだな。ノジャは大丈夫かな」
 独り言を呟いてから、右に曲がった。
 ノジャたちから別れて、二十分した頃にギルドであろう場所に着いた。周りと同じ白いドームなのは一緒だが、大きさが違った。三倍はある。遠くからでも、頭部が見えていた。
 俺は扉をノックした。
「どうぞー」
 という声がしたので、中に入って行った。
 中もやはり白い壁で囲まれていて、デクストラタウンで見たギルドと同じように受付があった。
「ギルド、イマジンへようこそ」
 茶髪で猫耳の女性が立っていた。髪は二つ括りを下に垂らしている。
「あの、仁と粋という人に頼まれて皐月って人を探しているんです」
 俺は簡潔に要件を言った。
「ああ、皐月。仁さんたちに頼まれたのね。あなた、名前は?」
「伊吹です」
「伊吹! 下界から連絡が来ていた人ね」
 俺は首を傾げた。
「ギルド内で情報の共有をしているのよ。火星に向かっていて、ブリュアとウルイァで護衛をしているって。私はしょう。皐月ならここにいるわよ」
「そうなんだ! ありがとう」
 気になるワードがあった気がするが、今は急いでいるので、皐月が受付に来るのを待った。

 ソファに座って待っていると、二分くらいだろうか、一人の青年がこちらに来た。
 オークル色のボブヘアだが、前髪だけ茶髪だった。普通の人だ。魔族かヒュー族か、モモさんと一緒の色人いろびとか。そろそろわかってきたが、猫耳族以外は見た目だけでは種族がわからないことだ。神だったという例もブリュアさんで経験している。
「君が伊吹か?」
「そうだけど。皐月はあなたか?」
「そうだよ。晶から聞いた。大変みたいだな。セランヌタワーに帰るよ」
 セランヌタワーとは、俺たちが地球から転移してきた高層の建物のことだ。
 俺は皐月と一緒にセランヌタワーに帰ることにした。

「伊吹は異世界人なんだな。この世界に来て、驚いたか?」
「もちろん。杏奈に助けてもらわなかったら、死んでたかも」
「杏奈……姉さんに会ったんだな」
「え?」
 俺は皐月の見た目をまじまじと見てしまった。杏奈は猫耳族だよな。姉弟で種族が違うことってあるのか?
「あ、俺たちはミックスルーツじゃないよ。義理の姉弟なんだよ」
 ミックスルーツというのは異種族結婚した夫婦の間に生まれた子どものことらしい。
「俺は魔族。見た目だけだと、もう誰が何の種族かなんてわからないから、気にしなくて良いよ。伊吹以外にも異世界人がいるしさ」
「なるほどな。街の人から見れば、俺は魔族に見えるかもしれないのか」
「そういうこと。まあ、下界ではそこまでまだ考えられていないけど」
 天界と地球などでは考え方が違うようだ。
「伊吹の世界では種族差別はあったのか?」
「まあ、ちょっと」
「どこもそうだよなあ」
 俺たちは会話しながら、セランヌタワーへと向かった。
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