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第67話 再び、未来界へ
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誰がノジャの世界に行くかという話になっている。
俺は会話に混ぜてもらえないので、オーディン様からもらった説明書を読んでいた。
表題には仲間召喚と書いてある。
「何これ」
ちょっと嫌な予感がした。
オーディン様はさっさと消えてしまったので、文句が言えない。
仲間召喚――今まで出会ってきた友人の幻影を作り出すことができる。幻影は自分が見聞きしてきた技しか使わないので、どれだけ多くの戦闘を見てきたかで、威力が変わる。
「自分で戦うわけじゃないのかよ」
俺はどこまで行っても人任せらしい。
「どうかしたか?」
隣に座っていたブリュアさんがニヤリと笑いながら声をかけてきた。
「これ、見てくださいよ」
俺は説明書を見せた。
「これは……」
ブリュアさんは説明書を少し見ただけで、こちらを見て、ニヤニヤと笑った。
「随分、強い力をもらったな。注意事項に、本人の技の威力の半分と書いてあるが、色々な技を使えるのは強いぞ」
「強いかもしれないけれど、人任せすぎません?」
「伊吹は戦ったことがないだろ。いきなり、生身で戦ったら死ぬだろうな。それなら、幻影に戦わせた方が良いだろう」
「……それはそうかも」
ブリュアさんに説得された俺は、再び説明書を読み込むことにした。
ツトムから、オーディン様が変な遊び要素を入れている可能性があると言われていたからだ。
「私も行きたかった」
杏奈はむくれていた。
ノジャの世界に行くメンバーに選ばれなかったのだ。
「杏奈を危険な目には合わせられないからな」
アキラはそう言って、杏奈の頭をぽんと撫でた。
杏奈の猫耳はへにゃりと垂れた。
「リンとブリュアさんか」
俺は目の前に立っている二人を見た。その二人の隣には包帯まみれのトーマがいた。トーマは後で役に立ってくれるらしい。
「よろしくお願いします」
「よろしくね~」
何だかんだ言って、二人とは他の人よりは長く旅をしたから、安心感がある。
「足手纏いにならないか、心配になってきた」
俺は心臓がドキドキしてきていた。戦うのは初めてだからだ。
「大丈夫ですよ。基本的には僕とブリュアさんが戦いますから」
「伊吹は自分の身を守れば良いよ」
そうは言われても、緊張するし、不安にもなる。
「が、頑張る」
俺は少し震えながら、答えた。
ノジャの世界は、どこにあるか俺たちはわからないので、トーマ経由でアイズ様にノジャの世界の場所を聞くことにしたのだ。
神界に行こうとすると、アイズ様に怒られるので、未来界でアイズ様に聞くという判断になった。トーマの話だと、当分は仕事に追われているからアイズ様は未来界にいるらしい。
未来界に行くと、前と同じように卵型のカプセルの中に転移してきた。異世界転移も慣れてきたな。
「アイズ様~」
「トーマ。どうやって、磔から解放されたんだ……」
カプセルが大量にある部屋の中心にアイズ様はいた。呆れたと言いながらも、要件を聞いてくれるようだった。
「あの神の世界か」
アイズ様はノジャの事を覚えていたみたいだ。
「わかるぞ」
「やった!」
俺は喜んで、ちょっと大きな声が出たので、少し恥ずかしかった。
ノジャの世界に行くための卵型のカプセルの前に着いた。
「特別に、その神のいる所に転移できるように調整してやる」
アイズ様はそう言って、カプセルの前にあるタブレットのような端末を操作した。
「トーマが迷惑をかけたからな」
淡々と言う。
「リンは特にそうだよな」
俺はリンの方を見ると、至って冷静な顔をしたリンがいた。
「そうですね」
リンはそれだけ答えた。
「なんか、アイズ様もリンも冷たくない?」
トーマが心外だと言う。
「自分の所業を考えろ」
「えー。戦いたいだけなのにー」
それがダメなんだろ、とは言わなかった。
俺は会話に混ぜてもらえないので、オーディン様からもらった説明書を読んでいた。
表題には仲間召喚と書いてある。
「何これ」
ちょっと嫌な予感がした。
オーディン様はさっさと消えてしまったので、文句が言えない。
仲間召喚――今まで出会ってきた友人の幻影を作り出すことができる。幻影は自分が見聞きしてきた技しか使わないので、どれだけ多くの戦闘を見てきたかで、威力が変わる。
「自分で戦うわけじゃないのかよ」
俺はどこまで行っても人任せらしい。
「どうかしたか?」
隣に座っていたブリュアさんがニヤリと笑いながら声をかけてきた。
「これ、見てくださいよ」
俺は説明書を見せた。
「これは……」
ブリュアさんは説明書を少し見ただけで、こちらを見て、ニヤニヤと笑った。
「随分、強い力をもらったな。注意事項に、本人の技の威力の半分と書いてあるが、色々な技を使えるのは強いぞ」
「強いかもしれないけれど、人任せすぎません?」
「伊吹は戦ったことがないだろ。いきなり、生身で戦ったら死ぬだろうな。それなら、幻影に戦わせた方が良いだろう」
「……それはそうかも」
ブリュアさんに説得された俺は、再び説明書を読み込むことにした。
ツトムから、オーディン様が変な遊び要素を入れている可能性があると言われていたからだ。
「私も行きたかった」
杏奈はむくれていた。
ノジャの世界に行くメンバーに選ばれなかったのだ。
「杏奈を危険な目には合わせられないからな」
アキラはそう言って、杏奈の頭をぽんと撫でた。
杏奈の猫耳はへにゃりと垂れた。
「リンとブリュアさんか」
俺は目の前に立っている二人を見た。その二人の隣には包帯まみれのトーマがいた。トーマは後で役に立ってくれるらしい。
「よろしくお願いします」
「よろしくね~」
何だかんだ言って、二人とは他の人よりは長く旅をしたから、安心感がある。
「足手纏いにならないか、心配になってきた」
俺は心臓がドキドキしてきていた。戦うのは初めてだからだ。
「大丈夫ですよ。基本的には僕とブリュアさんが戦いますから」
「伊吹は自分の身を守れば良いよ」
そうは言われても、緊張するし、不安にもなる。
「が、頑張る」
俺は少し震えながら、答えた。
ノジャの世界は、どこにあるか俺たちはわからないので、トーマ経由でアイズ様にノジャの世界の場所を聞くことにしたのだ。
神界に行こうとすると、アイズ様に怒られるので、未来界でアイズ様に聞くという判断になった。トーマの話だと、当分は仕事に追われているからアイズ様は未来界にいるらしい。
未来界に行くと、前と同じように卵型のカプセルの中に転移してきた。異世界転移も慣れてきたな。
「アイズ様~」
「トーマ。どうやって、磔から解放されたんだ……」
カプセルが大量にある部屋の中心にアイズ様はいた。呆れたと言いながらも、要件を聞いてくれるようだった。
「あの神の世界か」
アイズ様はノジャの事を覚えていたみたいだ。
「わかるぞ」
「やった!」
俺は喜んで、ちょっと大きな声が出たので、少し恥ずかしかった。
ノジャの世界に行くための卵型のカプセルの前に着いた。
「特別に、その神のいる所に転移できるように調整してやる」
アイズ様はそう言って、カプセルの前にあるタブレットのような端末を操作した。
「トーマが迷惑をかけたからな」
淡々と言う。
「リンは特にそうだよな」
俺はリンの方を見ると、至って冷静な顔をしたリンがいた。
「そうですね」
リンはそれだけ答えた。
「なんか、アイズ様もリンも冷たくない?」
トーマが心外だと言う。
「自分の所業を考えろ」
「えー。戦いたいだけなのにー」
それがダメなんだろ、とは言わなかった。
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