イマジン〜私たちが共存するための100の方法〜

夜須 香夜(やす かや)

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第一章 四月の冒険

第17話 森の中での出会い

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 一晩明けて、私たちは出発した。みずほは見かけなかったが、まだ出発していなさそうだった。部屋から物音が聞こえていたからだ。
 ショウやオースティンたちとは、昨日のうちに別れを告げていたので、今日は誰にも声をかけずに出発することにした。まだ朝も早いことだしね。
 日の出と共に出発した私たちは、洞窟に向けて森の中を進むことになった。

「今日はモンスターと会わないと良いなあ」

 私がそう呟くと、前を歩くアキラはくすりと笑った。

「サーチャーはきちんと見ておくよ」

「姉さんは森を舐めすぎてるだろ」

「でも、オリエーンス村にいたときは、モンスターに出会ったことがないじゃない」

 私がそう言うと、アキラは立ち止まって振り返った。
 じっと私と皐月を見つめる。

「それがおかしいんだよな」

「何がおかしいんだよ」

「オリエーンス村にたどり着く前に俺はモンスターに出会ったよ」

 その言葉に、私は驚いた。
 もう五年くらい森で狩りをしていたが、モンスターに出会ったのは、アキラと初めて出会ったあの日以来だ。

「防衛魔法がない村に、近くの森……モンスターはいるのに出会ったことがない。普通はありえないよ」

 私と皐月は黙ってしまった。
 ふと、私は思いついた。

「誰かがモンスターを倒していたのかな?」

「誰だよ。オリエーンス村には戦える人もいないし、旅人や騎士を雇う金もないだろ」

 皐月にすぐに反論されてしまった。

「チィランおじさんかな?」

「戦えるなら、村を燃やしたモンスターを倒せるだろ。第一、おじさんは家で死んでたんだぞ。戦っていたなら、外で死んでるんじゃないか?」

 なるほど。皐月の言うことはあってそうだ。
 私が、うんうん唸っていると、アキラが質問をしてきた。

「チィランおじさんは魔族なのか?」

「え」

 私と皐月はお互いを見た後に、アキラを見た。

「たぶん、魔族、かな」

「そういえば、聞いたことはないな」

 アキラの真剣そうな顔はなくなり、柔らかく笑った。
 
「歩きながら話そう。チィランおじさんはどんな人だったんだ?」

「家を空けることが多かったわね。出稼ぎに行っていたの。そのお金で村の人たちから、食べ物を買ったりしていたわ。村の人たちも、お金が手に入るから喜んでいたの」

「姉さんや俺を頻繁にお馬鹿さん呼ばわりしてたけどな」

 皐月がいる後ろをチラリと見ると、口を尖らしていた。
 皐月と目が合い、前見て歩けと言われてしまった。

「私と皐月が五歳の時に、お父さんとお母さんは亡くなってしまって、お父さんの友だちのチィランおじさんが引き取ってくれたのよ。それから、九年間も私たちを育ててくれたのよね」

 でも、そんなチィランおじさんも亡くなってしまった。
 シェリーのために秘宝を探し終わったら、チィランおじさんや村の皆の亡骸を埋葬してあげたい。

「俺たちの話ばかり聞いてないで、自分の話もしろよな」

 皐月はアキラに向かって言った。

「昨日も結局、オースティンに旅の話をしなかっただろ」

「話す間がなくてね。それから、別に隠しているわけじゃないよ。本当に話す機会がないだけさ」

「じゃあ」

 皐月が次の言葉を発しようとした時、右隣の茂みからガサリと草が揺れる音がした。

「モンスターではないな」

 アキラはそう言いながら、私と皐月の隣に行き、剣を取り出した。

「山賊かもしれない」

 アキラは小声で言った。
 草むらは大きく揺れて、そこから人影が現れた。

「わ! 人か」

 草むらから現れた人は、そう言って驚いたように目を丸くした。茶髪に黒目でほっそりとした体型の人だ。低い声からすると、男性なのかな。きちっと着られている服はお金持ちそうだった。
 アキラは剣を仕舞い始めた。相手は武器を持っていないからかな。

「旅人さんかな?」

 男性がそう聞いていきたので、私は頷いた。

「あなたは? 一人で旅をしているの?」

「ああ、俺かい。俺には相方がいるんだ。今は、相方は食材探し中だよ」

 男性は私たちの横を通り過ぎて、私たちの後ろにあった木にもたれかかった。
 よく見ると、汗をかいていて、肌が青白く見えた。

「俺はコディ。ちょっと体調が悪くて……気晴らしに少しだけ話していかないか?」

「私は杏奈よ。こっちは弟の皐月、こっちはアキラ」

「少しの間だけ、よろしくな」

 コディは立っているのが辛くなってきたのか、座り込んだ。

「体調が悪いっていうのは、風邪?」

「いや、ちょっとした病気でさ。でも、たまに発作が出るだけだから、大丈夫だ」

 コディは長袖の袖で、汗をぬぐう。

「杏奈たちは何で旅をしているんだい? 若そうに見えるけど」

「友だちのために秘宝を探しに旅しているの」

「……へえ。素晴らしいことだ。友だち想いなんだな」

 コディは少し辛そうに笑った。

「もう少ししたら、相方が戻るだろう。付き合ってくれて、ありがとう」

 コディはそう言って、私たちにもう行ってもらって大丈夫だよとうながした。

「相方さんが戻ってくるまで、一緒にいなくて大丈夫?」

 モンスターが来たら、どうするのだろうと思って聞いたのだが、大丈夫だと言われてしまった。

「モンスターが出たら、相方はすっ飛んでくるから」

「そう……。それなら、私たちは先に行くわね」





 コディと別れてから、一時間ほど経ち、私たちは休憩していた。
 アキラはいつでも戦えるようにと、木にもたれかかって立っている。皐月も同じ木にもたれていた。
 私は地面に座っている。土や草で汚れるかもしれないが、次の行動までに少しは休んでいた方がいいと考えたからだ。
 水筒に入れた水を飲みながら、一息つく。

「コディは大丈夫かなあ」

「大丈夫って言ってただろ。誰にでも良い顔してると、後で困るぞ」

「何が困るのよ」

 私は皐月を睨む。皐月は一度こちらを見たが、すぐに正面に向き直った。

「まあまあ。皐月が心配するのもわかってあげたら?」

「心配してるわけじゃない」

 アキラは皐月の言葉に少し困ったように眉を下げた。

「ショウやマサムネみたいに、良い人ばかりではないってことだからな」

 皐月はそう言って、飲んでいた水筒のふたを閉めた。
 それをアキラに返す。アキラは受け取って、ポーチに仕舞った。

「そろそろ……え!」

 アキラは慌てたように、ポケットからサーチャーを取り出した。
 青く光っている。

「これは」

 アキラが言葉を発する前に、ドンという地鳴りが聞こえた。
 後方からだ。
 ドン! ドン!

「何の音?」

「まずい。もう、すぐそばだ!」

 アキラが、なぜ気づかなかったんだと叫ぶ。
 その時、木と草むらをかき分けて、大きな図体の生き物が現れた。
 灰色の固そうな皮膚に、体の割に小さな顔。頭は禿げていて、耳はとんがっていた。
 腰には獣の皮を巻いている。

「モンスター!」

 皐月が足のホルダーから杖を取り出す。アキラも剣を構えた。

「トロールだ。俺たちだと敵わない! 隙を見て、逃げるぞ!」

 トロールは右手に持っていた石の棍棒を振った。
 周りの木が薙ぎ倒されていく。私たちは後ろに飛び跳ねて避ける。
 トロールはすぐに右足を前に出し、棍棒を先ほどと反対側に振った。

「杏奈!」

 その声が聞こえた後、私は地面に仰向けに転がっていた。
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