悪役転生〜主人公に全てを奪われて追放される踏み台悪役貴族に転生した〜

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紫電

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「俺がアリシアを盗賊を使って攫わせただと?」

 濡れ衣を着せられた俺は戸惑う。

「ああ、お前とアリシアをさらった盗賊の二人は始めっからグルなんだろ?」
「……なんでそうなるんだ?」
「お前の話は最初から、おかしいと僕は思ってた。お前は偶々偶然、アリシアの攫われたところに出くわし、完璧なタイミングで助けに入ったと言っていたな?」
「確かに、そう言ったな」
「話ができすぎだ。お前はアリシアが襲われる場に最高のタイミングで出会して、着せる服までお前は用意していた……」
「いや、服は用意していたわけではないな。あの場で俺が作ったと言ったではないか」
「……あんな服お前に作れるわけがないだろ……ッ!」
「ふふ……ああ、出来が良すぎたか……確かに、俄かに信じがたい話だ。だが、俺にはできたのさ……」

 俺は軽くいう。

「なぁ、悪党。全てはお前が謀った事だろう? お前は、アリシアを盗賊に襲わせ、それを自分で助け出してアリシアの心を惑わせようとしたんだッ!」
「……そんな事をして俺になんの得がある」
「お前はアリシアを狙っていた」
「俺は、そんな小賢しい真似をしてまで女を手に入れようとする男ではない……いいか? 俺はだな……」
「しらばっくれるなよ……ッ!」
「アリシアに聞いてみろ、あの服は俺が作ったというだろうさ……俺は嘘なんかついちゃいない」

 まるで刑事からの取り調べを受けているみたいだ。

「アリシアは騙せても、この僕を騙せると思うなよ? 僕にはお前の狙いは、全てお見通しだ」
「いいや、お前は勘違いしているだけだ。そもそも……最初からあの路地裏でお前に会った時からお前は俺の事を誤解している」

 呆れたように、俺は前髪をかきあげる。

「誤解だと?」
「ああ、そもそも、先に手を出してきたのはサーシャの方だ。……あいつのなりを見たろ? あいつは、ずっとあの小汚い路地裏で盗人まがいの事をして生きてきたのさ。そして、あの日、あの場所でこの俺を狙って襲った……そして、俺は、逆にあいつを捕まえた。それだけの話さ」
「そんな話、僕が信じると思うのか?」
「どうだかな。だが、それが真実だ」

 片手をポケットを突っ込んで、もう片方の指先をローランに向ける。

「……でも、お前は、あの子を無理やりに連れて行ったじゃないか……ッ!」
「ああ……確かにな。だがそれにも理由があった」
「……理由だと?」
「そうさ、だって、あいつは、あの汚い路地裏で仲間達と盗人をやってのその日暮らし。そもそも、まともに生活なんてできちゃいなかったのさ」
「だからって、お前が好き勝手に、攫っていっていい理由にはならないだろ」

 唸るようにいうローラン。
 それは紛れもなく、目の前の男の罪。

「……かもな、だが、いつ野垂れ死んでもおかしくない連中をこの俺が救ってやったとも言えるだろ?」

 ふぅと、軽く息を吐きながら俺は言う。

「……あの子はお前に連れていかれた先で、言いなりにさせられているんじゃないのか?」
「あいつは自分と仲間達の為に俺の手を取った。それだけの話さ。あの汚い路地裏で生きるより俺の元に来るのを選んだけだ」
「そんなの……ッ!」
「あいつが自分で選んだことだ。あいつが自分でな? もし、あいつが俺の申し出を断るなら俺に働いた狼藉のつけをちょっと返させる程度で放してやるつもりだったさ。だが、あいつは俺の手を取った。あいつにとっても悪い話じゃ無かったんだろ? 今じゃ進んで俺の望むことをやってくれているさ」

 嘲笑うような声。

「あの子は……仲間の為に……嫌々、お前に従ってるだけだろ……ッ! お前はあの子の心に弱みに付け込んだ、だけだ……ッ!」
「確かに、あいつの心の弱みに付け込んだのは否定しない。だが、俺は金持ちだ。俺にとっちゃはした金みたいな金であいつは、仲間たちにいい暮らしさせてやれるってんだから悪くない話じゃないか。アリシアの事だってそうさ、事実はこうだ。お前が必死こいて一晩中、探し回っても見つけられなかったアリシアを俺が代わりに華麗に救ってやった……それだけの話だろ?」

 やれやれと、両手をあげる。

「それだって、そもそもお前のせいでアリシアが攫われたんじゃないかッ!」
「……もし仮にそうだったとしても、俺が助け出してやったのだ。問題はないだろう? 刺激があるから人生は楽しいのさ。アリシアにもいい思い出になっただろうさ、ちょっとした冒険アドベンチャーそう、俺という存在と出会うための冒険アドベンチャー

(——こいつ——)
 
 悪びれた様子のない男の発言は、ローランの悪を憎む正義の心に火をつける。

「なぁ、ローラン。俺の言っていることは、そんなにおかしいか? そんなに俺は悪党か?」
「……ああ、お前は屁理屈をこね回して自分を正当化しているだけの唯の悪党だ……!」
「ふん……随分な言われようだが、俺には俺の考えがあってやっているに過ぎん」
(——こいつを野放しにしておいたら……一体、これから先どれ程の——)
「……俺達の間にあるのはちょっとした行き違い。そもそも、俺達の間に戦う理由なんて本当は無いんじゃないか? ……なんなら……今からでも……」
「……いいや、あるさ……戦う理由なら……ある。僕は、お前を絶対に許さない……ッ! お前のような悪を絶対に許してはならない……ッ!」

 拳を握りしめるローラン。
 一呼吸のもとに魔力を練り上げる。
 溢れ出す濃密な力は、悪を憎む正義の証。

 目の前から聞こえる、舌打ちを気にも留めず、強い意志と共に、何かを蒔くように、掌を開き、天へと翳す。

「雷よ……ッ! 我が敵を穿つ槍となれ……ッ!」

 叫ぶ詠唱。
 空気が震えた。
 音を吸い込むように静まり返る。
 そして、続く迸る閃光。

雷槍ライトニング・ランスッ!」

 バチバチという音と共に、ローランの頭上には鋭い雷の槍が空間に浮かび上がり、稲妻のように不規則に光を放ちながら揺らめいていた。
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