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レクス・サセックス
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それは、遡ること、今から三年前――。
イリスは、玉座のある荘厳な大広間に居た。
鎧を着た衛兵達と侍女たちが壁際に幾人も立ち。
彼女の前には頭に宝石の埋め込まれたサークレットを着け、優美な服を身に付けている男が玉座に腰掛けている。
その男が纏う雰囲気は、凡夫のそれではない。
生まれ落ちた時から、人の上に立つことを運命づけられ、その為の教育を施された、気品を醸し出していた。
その男の顔には疲労の色が見えるが、とても精悍な顔つきをしていた。
その体躯は服の上からでも分かる様に盛り上がり良く鍛えられているのが窺えた。
そして、白髪こそ交じってはいるが、その髪は燃えるような赤い色をしていた。
そう、その男こそ、エルロード王国に置ける現国王、ラムセス・エルロードその人である。
「イリス……。今度レクスがお前に会いに来るぞ……」
ラムセスはイリスにこう言った。
「レクス?」
「ああ、お前の婚約者だ」
「私の婚約者……」
「ああ、サセックス家のハロルドの子だ」
「ハロルドおじさまの」
「ああ、今度お前の誕生日に呼ぶことにした。一応顔合わせをしておけ……」
「分かりました」
イリスは礼をすると、玉座の間を去る。
(私の婚約者ってどんな人なのかしら)
王宮の廊下を歩きながらイリスは考える。
イリスも以前から自分に婚約者がいる事は知っていた。
その婚約はまれる前から決まっていたと聞かさていた。
しかし、相手の情報は何も持っていなかった。
「ねぇ、ちょっと聞きたいんだけど……」
イリスは、廊下を歩くメイドを呼び止めると、問いかけた。
「これは、これは、イリス様……なんでしょうか?」
恭しく礼をするメイド。
「あなた、レクス・サセックスって言う人知っているかしら?」
「……え、ええ……」
少し引き攣った表情のメイド。
「どんな人よ……?」
「た……大変、大変見目麗しい人だと……」
「へぇ……そうなの……あの、じゃあ……」
「すいません、イリス様。私、お仕事がありまして……」
「……え? ああ、そうね……。ごめんなさい……」
「い、いえ……」
そそくさとさるメイド。
イリスは廊下をすれ違う、使用人たちに問いかけるが、曖昧な誉め言葉で濁すだけ。
並べ立てる美辞麗句は、その少年の話題について具体的な言及を避けようとしているようにも思えた。
しかし、幼いイリスにその言葉の裏にある真意を理解する事が出来なかった。
「ねぇ、カレン。私の婚約者の人って知ってる?」
「レクス様ですね」
何やら、憂いを受かべて返す眼鏡を掛けた、黒髪のショートカットの女性。
彼女はイリスが最も慕うメイド。
彼女は、もう随分と長い間イリスの面倒を見ていた。
単なる職務上の関係というだけでなく、身内のような情を抱き。
まるで、妹を見守る姉のように、彼女の幸せを願っていた。
「どんな人なのか知っている?」
「はい」
「皆に聞いたけどなんかちゃんと教えてくれないのよ……」
「そうですね——」
考え込んだ様子のカレン。
「お願い……教えて……」
「——非常に多才な方だと聞いています」
慎重に言葉を選んだ発言するカレン。
「なんでもできるって事?」
「ええ、剣術にも魔術にも秀でると聞いています」
「へぇ、すごいじゃない? 私は魔術はあんまり得意じゃないわ」
「ええ……、その上、麗しい容姿をしていて、勉学にも秀でると……」
「そうなの……なんか凄い人じゃない? レオンハートみたいだわ」
少し身を乗り出すイリス。
「……ですが、あまり期待されずに、ご自分の目で確かめられた方がよろしいかと……」
「なんでよ?」
「これ以上は私の口からは……」
カレンも曖昧に言葉を濁すと、それ以降イリスの質問に答える事は無かった。
(どんな人なのかしら、会うのが楽しみね)
その日からレクス・サセックスという少年と会うのをイリスは心待ちにするようになった。
色恋沙汰に興味を持つよりは、剣を振り回している方が楽しいというお転婆な少女ではあった。
しかし、一応は自身の婚約者。
将来を共にする伴侶である。
聞けば前評判はとても良い。
親同士が決めた政略結婚。
だが、自身の婚約者の少年が自分の理想に近い男性であって欲しいという願望位はあった。
「レオンハートみたいな人だったら……」
碌に恋などした事は無い。
だが、あの憧れた物語の英雄のような存在と恋をしてみたい。
そんな恋に恋するような願望がイリスの心にも顕れ始めていた。
しかし――求める理想に対して、現実というものは得てして、残酷なものである。
イリスも、例に漏れず、彼女の期待は大きく裏切られる事になった。
「面倒だな…なんでわざわざ、俺が王都まで……」
「もう少し楽しそうにしろレクス。お前の婚約者の女の子に会えるんだぞ?」
「興味ないな。もう、帰りたい」
「まぁ……そういうな、俺は少し向こうで話してくる、お前も楽しんで来い」
その少年は父親である、ハロルド公爵に連れられてやってきた。
さらさらと流れる金髪に透き通るような碧眼。
すらりとした体躯は幼さの中にも少しだけ逞しさも感じる。
まごう事なき美少年という容姿の少年だった。
多くの女性の目を惹きつけてしまう美男子、
(あの人?)
初めてその顔を見た時、イリスの視線も思わずその少年の顔に見惚れてしまった。
「そこのメイド……ッ! 何か俺に飲み物を持ってこい、俺は喉が渇いたぞ」
「は、はい……。かしこまりました」
「全く気がきかんな」
少し怒鳴るように命じられたメイドは少し怯えながら、飲み物を取りに行く。
(何よ……あいつ……)
そんな、レクスの態度にイリスは嫌悪感を覚える。
「なんだこれは。これは何か嫌だ。別のを持ってこい」
「あ……、はい」
「……使えないメイドだ……」
彼は自分の良く見知ったメイド達に対して、横暴に振る舞い始めた。それだけではなく、
「あ、あのサセックス家のレクス様ですよね。私は、サマーズ家の……」
「サマーズ? あの男爵家の?」
「あ、はい……レクス様に……」
「男爵家の娘が俺に何の用なのだ? 下賤な者が俺に話しかけるな」
「あ、あの……す、すいません……」
彼に挨拶をしにいった、イリスの友人達にも無礼な態度を取り始めた。
イリスはそんなレクスの態度に思わず彼に歩み寄ると、
「ねぇ……そこのあんた……ッ!」
と言って、その肩を摑まえる。
「……俺か?」
「そうよ……ッ!」
「何なのだ。全く、今度は」
肩を掴まれ振り返るレクス。
「何なのだじゃないわ。さっきから見てたらあんた……、ずいぶんと偉そうね」
「偉そうも何も……お前、この俺をサセックス家の嫡男と知って狼藉を働いているのか?」
「ええ、あんたレクス・サセックスよね」
「知っていて、呼び捨てにするなどと……貴様……俺が、公爵家の……」
イリスを明らかに見下したような表情のレクス。
「公爵家がどうしたっていうのよ。私は、この国の王女よ……ッ!」
胸を張るイリス。
「なんだと?」
「私は、イリス・エルロード」
「……ッ!」
イリスの名乗りに少し動揺した様子のレクス。
「ええ、そうよ。あんたの婚約者よ」
「……ッチ エルロード……お前がか……」
舌打ちをすると、吐き捨てるように言うレクス。
「あんたの態度で周りの子達をどんな気持ちにさせている考えた事あるの?」
「無いな。俺より身分の低い者たちに俺がどう接しようと俺の勝手ではないか……」
やれやれと言った様子のレクスは飲み物を口にする。
(こいつ……ッ!)
イリスは苛立った。
その他人を見下し、自分を特別な存在だと思い込んでいる傲慢な態度。
期待が大きかったからこその落胆も大きくなった。
「自分の方が立場が上だからって偉そうに振る舞っていいわけじゃないのよ。あんた、少しは態度を改めなさいよ……ッ!」
「なら、お前こそ王女だからと言って、俺に命令していいわけではないな……自分のほうが家柄が上だからって俺に命令するなよ……ふふ……ははは」
「……なによッ! 命令じゃないわ、忠告よこれは」
嘲笑うようにレクスに切り返されたイリスは苛立つ。
「俺がどうしようとお前には関係ないではないか」
「関係あるわ……ッ! あんたが無礼な態度を取ったのは、私の友達や大事な人達なのッ!」
「友達だと? ……お前こそ、王女なら自分の振る舞いに気を付ける事だな。下賤な者達と友達などとは」
呆れたような顔のレクス。
「下賤な者?」
「ああ、身分が低く卑しいもの達だ」
「あんたねぇッ!」
「ふん、どうやら下賤な者たちと付き合うと、言葉遣いまで下賤になるようなのだな」
「謝りなさいッ! 私の友人達を侮辱したこと、失礼な態度を取ったことをッ!」
「断る」
「……どうしても謝る気はないのね……」
「無いな。全くなんで俺が、こんな女と」
「もう良いわ……ッ!」
「何だ?」
「——決闘よッ!」
「一体何を言っている……?」
困惑した様子のレクス。
「私が勝ったら、私の友人達に謝って、あんたも態度を改めると誓いなさい」
「なんで、俺が……」
「あら……逃げるのかしら?」
煽るように笑みを浮かべるイリス。
「なんだと……ッ!?」
「別に良いわよ? サセックス家の神童とやらは、どうやら虚仮威しだったようね?」
「お前……この俺が誰なのか知っていて言っているのだな……?」
「ええ……あんたこそ私が誰だか知っているの?」
「は……ッ! では、分かった受けようではないか、その決闘。噂に名高い、|剣姫とやらの鼻をこの俺がへし折ってやろう」
「やれるもんならね……あんまり私をなめない方が良いわよ」
気づけば辺りには人だかりできて事の成り行きを見守っていた。
心配そうに見守る周りの目を余所に二人はヒートアップしていく。
「あ、あのイリス様。私は大丈夫ですので、せっかくのお誕生日を」
「いいのよ。これは私がやりたいからやるの、今更ひっこみなんてつかないわ……」
周りがイリスを止めようとするが、彼女は取り合わない。
「王族だからって調子に乗るなよ、イリス・エルロード——」
「調子に乗ってるのはあんたでしょ、レクス・サセックスッ!」
周りの人間たちは、二人の諍いを止めるのを諦め、騒ぎを聞きつけた国王ラムセスのはからいで、余興という体で剣術のみに、限定した模擬戦が行われる事となった。
「それで……、どこでやるのだ?」
「外に広場があるわ……」
二人は外へと向かった。
イリスは、玉座のある荘厳な大広間に居た。
鎧を着た衛兵達と侍女たちが壁際に幾人も立ち。
彼女の前には頭に宝石の埋め込まれたサークレットを着け、優美な服を身に付けている男が玉座に腰掛けている。
その男が纏う雰囲気は、凡夫のそれではない。
生まれ落ちた時から、人の上に立つことを運命づけられ、その為の教育を施された、気品を醸し出していた。
その男の顔には疲労の色が見えるが、とても精悍な顔つきをしていた。
その体躯は服の上からでも分かる様に盛り上がり良く鍛えられているのが窺えた。
そして、白髪こそ交じってはいるが、その髪は燃えるような赤い色をしていた。
そう、その男こそ、エルロード王国に置ける現国王、ラムセス・エルロードその人である。
「イリス……。今度レクスがお前に会いに来るぞ……」
ラムセスはイリスにこう言った。
「レクス?」
「ああ、お前の婚約者だ」
「私の婚約者……」
「ああ、サセックス家のハロルドの子だ」
「ハロルドおじさまの」
「ああ、今度お前の誕生日に呼ぶことにした。一応顔合わせをしておけ……」
「分かりました」
イリスは礼をすると、玉座の間を去る。
(私の婚約者ってどんな人なのかしら)
王宮の廊下を歩きながらイリスは考える。
イリスも以前から自分に婚約者がいる事は知っていた。
その婚約はまれる前から決まっていたと聞かさていた。
しかし、相手の情報は何も持っていなかった。
「ねぇ、ちょっと聞きたいんだけど……」
イリスは、廊下を歩くメイドを呼び止めると、問いかけた。
「これは、これは、イリス様……なんでしょうか?」
恭しく礼をするメイド。
「あなた、レクス・サセックスって言う人知っているかしら?」
「……え、ええ……」
少し引き攣った表情のメイド。
「どんな人よ……?」
「た……大変、大変見目麗しい人だと……」
「へぇ……そうなの……あの、じゃあ……」
「すいません、イリス様。私、お仕事がありまして……」
「……え? ああ、そうね……。ごめんなさい……」
「い、いえ……」
そそくさとさるメイド。
イリスは廊下をすれ違う、使用人たちに問いかけるが、曖昧な誉め言葉で濁すだけ。
並べ立てる美辞麗句は、その少年の話題について具体的な言及を避けようとしているようにも思えた。
しかし、幼いイリスにその言葉の裏にある真意を理解する事が出来なかった。
「ねぇ、カレン。私の婚約者の人って知ってる?」
「レクス様ですね」
何やら、憂いを受かべて返す眼鏡を掛けた、黒髪のショートカットの女性。
彼女はイリスが最も慕うメイド。
彼女は、もう随分と長い間イリスの面倒を見ていた。
単なる職務上の関係というだけでなく、身内のような情を抱き。
まるで、妹を見守る姉のように、彼女の幸せを願っていた。
「どんな人なのか知っている?」
「はい」
「皆に聞いたけどなんかちゃんと教えてくれないのよ……」
「そうですね——」
考え込んだ様子のカレン。
「お願い……教えて……」
「——非常に多才な方だと聞いています」
慎重に言葉を選んだ発言するカレン。
「なんでもできるって事?」
「ええ、剣術にも魔術にも秀でると聞いています」
「へぇ、すごいじゃない? 私は魔術はあんまり得意じゃないわ」
「ええ……、その上、麗しい容姿をしていて、勉学にも秀でると……」
「そうなの……なんか凄い人じゃない? レオンハートみたいだわ」
少し身を乗り出すイリス。
「……ですが、あまり期待されずに、ご自分の目で確かめられた方がよろしいかと……」
「なんでよ?」
「これ以上は私の口からは……」
カレンも曖昧に言葉を濁すと、それ以降イリスの質問に答える事は無かった。
(どんな人なのかしら、会うのが楽しみね)
その日からレクス・サセックスという少年と会うのをイリスは心待ちにするようになった。
色恋沙汰に興味を持つよりは、剣を振り回している方が楽しいというお転婆な少女ではあった。
しかし、一応は自身の婚約者。
将来を共にする伴侶である。
聞けば前評判はとても良い。
親同士が決めた政略結婚。
だが、自身の婚約者の少年が自分の理想に近い男性であって欲しいという願望位はあった。
「レオンハートみたいな人だったら……」
碌に恋などした事は無い。
だが、あの憧れた物語の英雄のような存在と恋をしてみたい。
そんな恋に恋するような願望がイリスの心にも顕れ始めていた。
しかし――求める理想に対して、現実というものは得てして、残酷なものである。
イリスも、例に漏れず、彼女の期待は大きく裏切られる事になった。
「面倒だな…なんでわざわざ、俺が王都まで……」
「もう少し楽しそうにしろレクス。お前の婚約者の女の子に会えるんだぞ?」
「興味ないな。もう、帰りたい」
「まぁ……そういうな、俺は少し向こうで話してくる、お前も楽しんで来い」
その少年は父親である、ハロルド公爵に連れられてやってきた。
さらさらと流れる金髪に透き通るような碧眼。
すらりとした体躯は幼さの中にも少しだけ逞しさも感じる。
まごう事なき美少年という容姿の少年だった。
多くの女性の目を惹きつけてしまう美男子、
(あの人?)
初めてその顔を見た時、イリスの視線も思わずその少年の顔に見惚れてしまった。
「そこのメイド……ッ! 何か俺に飲み物を持ってこい、俺は喉が渇いたぞ」
「は、はい……。かしこまりました」
「全く気がきかんな」
少し怒鳴るように命じられたメイドは少し怯えながら、飲み物を取りに行く。
(何よ……あいつ……)
そんな、レクスの態度にイリスは嫌悪感を覚える。
「なんだこれは。これは何か嫌だ。別のを持ってこい」
「あ……、はい」
「……使えないメイドだ……」
彼は自分の良く見知ったメイド達に対して、横暴に振る舞い始めた。それだけではなく、
「あ、あのサセックス家のレクス様ですよね。私は、サマーズ家の……」
「サマーズ? あの男爵家の?」
「あ、はい……レクス様に……」
「男爵家の娘が俺に何の用なのだ? 下賤な者が俺に話しかけるな」
「あ、あの……す、すいません……」
彼に挨拶をしにいった、イリスの友人達にも無礼な態度を取り始めた。
イリスはそんなレクスの態度に思わず彼に歩み寄ると、
「ねぇ……そこのあんた……ッ!」
と言って、その肩を摑まえる。
「……俺か?」
「そうよ……ッ!」
「何なのだ。全く、今度は」
肩を掴まれ振り返るレクス。
「何なのだじゃないわ。さっきから見てたらあんた……、ずいぶんと偉そうね」
「偉そうも何も……お前、この俺をサセックス家の嫡男と知って狼藉を働いているのか?」
「ええ、あんたレクス・サセックスよね」
「知っていて、呼び捨てにするなどと……貴様……俺が、公爵家の……」
イリスを明らかに見下したような表情のレクス。
「公爵家がどうしたっていうのよ。私は、この国の王女よ……ッ!」
胸を張るイリス。
「なんだと?」
「私は、イリス・エルロード」
「……ッ!」
イリスの名乗りに少し動揺した様子のレクス。
「ええ、そうよ。あんたの婚約者よ」
「……ッチ エルロード……お前がか……」
舌打ちをすると、吐き捨てるように言うレクス。
「あんたの態度で周りの子達をどんな気持ちにさせている考えた事あるの?」
「無いな。俺より身分の低い者たちに俺がどう接しようと俺の勝手ではないか……」
やれやれと言った様子のレクスは飲み物を口にする。
(こいつ……ッ!)
イリスは苛立った。
その他人を見下し、自分を特別な存在だと思い込んでいる傲慢な態度。
期待が大きかったからこその落胆も大きくなった。
「自分の方が立場が上だからって偉そうに振る舞っていいわけじゃないのよ。あんた、少しは態度を改めなさいよ……ッ!」
「なら、お前こそ王女だからと言って、俺に命令していいわけではないな……自分のほうが家柄が上だからって俺に命令するなよ……ふふ……ははは」
「……なによッ! 命令じゃないわ、忠告よこれは」
嘲笑うようにレクスに切り返されたイリスは苛立つ。
「俺がどうしようとお前には関係ないではないか」
「関係あるわ……ッ! あんたが無礼な態度を取ったのは、私の友達や大事な人達なのッ!」
「友達だと? ……お前こそ、王女なら自分の振る舞いに気を付ける事だな。下賤な者達と友達などとは」
呆れたような顔のレクス。
「下賤な者?」
「ああ、身分が低く卑しいもの達だ」
「あんたねぇッ!」
「ふん、どうやら下賤な者たちと付き合うと、言葉遣いまで下賤になるようなのだな」
「謝りなさいッ! 私の友人達を侮辱したこと、失礼な態度を取ったことをッ!」
「断る」
「……どうしても謝る気はないのね……」
「無いな。全くなんで俺が、こんな女と」
「もう良いわ……ッ!」
「何だ?」
「——決闘よッ!」
「一体何を言っている……?」
困惑した様子のレクス。
「私が勝ったら、私の友人達に謝って、あんたも態度を改めると誓いなさい」
「なんで、俺が……」
「あら……逃げるのかしら?」
煽るように笑みを浮かべるイリス。
「なんだと……ッ!?」
「別に良いわよ? サセックス家の神童とやらは、どうやら虚仮威しだったようね?」
「お前……この俺が誰なのか知っていて言っているのだな……?」
「ええ……あんたこそ私が誰だか知っているの?」
「は……ッ! では、分かった受けようではないか、その決闘。噂に名高い、|剣姫とやらの鼻をこの俺がへし折ってやろう」
「やれるもんならね……あんまり私をなめない方が良いわよ」
気づけば辺りには人だかりできて事の成り行きを見守っていた。
心配そうに見守る周りの目を余所に二人はヒートアップしていく。
「あ、あのイリス様。私は大丈夫ですので、せっかくのお誕生日を」
「いいのよ。これは私がやりたいからやるの、今更ひっこみなんてつかないわ……」
周りがイリスを止めようとするが、彼女は取り合わない。
「王族だからって調子に乗るなよ、イリス・エルロード——」
「調子に乗ってるのはあんたでしょ、レクス・サセックスッ!」
周りの人間たちは、二人の諍いを止めるのを諦め、騒ぎを聞きつけた国王ラムセスのはからいで、余興という体で剣術のみに、限定した模擬戦が行われる事となった。
「それで……、どこでやるのだ?」
「外に広場があるわ……」
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