セリアンの巫女 ~美少女動物軍団で異世界制覇~

白水秋一

文字の大きさ
17 / 54
第2章

10

しおりを挟む
 チカさんはその他にも、この地域の事情を話してくれた。山田村はこのあたりには珍しく広い水田を持っていて、米の収穫量が多い。盗賊は人の多い里で盗みを働き、深い山で身を隠す生き方をしているので、山の中の村を襲ったりはせず、村の方も盗賊の動きを領主に知らせたりはしない。互いに無干渉である事によって、一種の共存関係を築いていたので、今回の襲撃は異例な出来事だそうだ。
 その他にもこの地域について細かく色々教えてくれた。
 アリシアさんが感心した様子で言った。
「どうやら私は使命に傾注しすぎて、自分の活動している土地に無関心すぎたようです。反省しなければ」
「いいえ、私も生活に関わる事ばかり熱心で、任された種をたまに見に行くだけですましていました。巫女としてのつとめを怠り、アリシアさんが話してくれた帝国との戦いの構想もいつしか心から外れてしまい、恥ずかしいです」
 チカさんは俺たちへ協力し、義勇団へ参加する意志を表明する。
 新しい仲間が加わって、俺はうれしくなった。ただ、ひとつ気になる事があった。チカさんはたまに自分の捧命種を見に行くと言ったが、遠く離れた大陸に簡単に行きかえりできるものなのだろうか。それについて聞こうとした時、アポさんが戻ってきた。
 さっそく、見てきた情報をもとに地面に地図を描いて、要所要所でチカさんの説明を聞きながら検討に入った。方針はすぐに決まった。
「盗賊より先に山田村に行くために、ここから最短距離で急ぎます。今夜はここに」
 と、アリシアさんは地図の一点を指し、
「野営して、山田村には明日到着の予定です。急ぐのでかなり無理をします」
 というわけで、アリシアさんは紐を取り出し、俺を背中に背負うと、アドラドさんに手伝ってもらい、俺が振り落とされないように強く、くくり付けた。
 アポさんは空を飛び、アドラドさんは先頭で、その後に四郎、五郎、六郎、アリシアさんと俺、続いて太郎、次郎、三郎と続き、一番後ろはチカさんの順で、移動が始まった。
 それはこれまでとは違う、疾走と感じられるぐらいの速さで木々の間を通り抜け、岩を跳び、谷を渡って、山を駆け上がっていく。俺はまるで小さな子供の様に背負われている事を恥ずかしく思った。だが、それ以上にうれしさを感じてもいた。今のアリシアさんは第四階梯に昇り、人間の大きさで人間の様に走れるオオアリクイの姿をしている。オオアリクイや他のアリクイはみな子供が母親の背中にしがみついた状態で移動するという習性を持っている。それは実にほほえましい光景で、何度もその映像を見ていやされたものだが、今の俺はまるでそのアリクイの子のように背負われている。現実には不可能な事が、この異世界では体験できる。望外の至福に包まれ、俺はしばらく時を忘れた。

 まだ明るいうちに野営地について俺は背中から降りた。ただ運ばれていただけなのに結構疲れていて、少し足元がふらついた。
「ここで早めに野営して明日に備え、夜が明けたら移動を開始して昼頃には村の近くまで移動する予定です」
 アリシアさんはそう言ってから、俺に休んでいるように告げた。
 俺と犬、チカさんをそこに残して、他の巫女さんたちは明日の移動のために事前の下調べに行った。チカさんはかいがいしく食事の準備をしている。
 俺は手伝いたかったのだが、手持ちの物資も道具もなく、野外炊爨すいさんの経験もわずかしかないので特に手伝えることはなかった。
「さっきはびっくりしました。いきなり階梯が上昇してしまって」
 チカさんが声をかけてきた。
「本当に驚かせてしまってすみません」
 俺はわびてから、自分が無意識のうちに階梯高揚かいていこうようを発動させてしまった事を説明した。
 チカさんは笑う。
「あやまらなくてもいいんですよ。すごい神術がつかえるんですね。感心してしまいました」
「いや、自分の意志でやっているのではないから、神術が使えるというわけではないですよ」
「でも、召喚されたばかりで、そこまでできるんですから、きっとすぐに使いこなせるようになりますよ」
 チカさんにそう言われて、俺は目が覚めたような気持になった。
 今まで自分は巫女さんたちに負担をかける場合が多く、申し訳なさでいっぱいの気持ちになり、何とか自分も何かの役に立ちたいと少し思い詰めていた。
 だが、俺はすでに階梯高揚と、名前のある神術なのか知らないが、動物や世界の孔を感知できる能力を発動させている。それらを早く自分の意志で使えるようになるのが、一番の貢献ではないのか。
 そこで、少し離れたところにすわり、まずは動物を感知する能力について、自分の意志でどこまで操作できるのか試してみる事にした。
 俺はゆっくりと深く息をして、精神を集中させる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

処理中です...