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サイコパスとスキルと冒険者
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薄桃色の花弁はどこにも見当たらない。
その代わりなのか、木々には小さな若葉が芽吹いている。
新しい命は暑さに身もだえながら懸命に息をする。
カインは今日という今日もきちんと学院に赴き「魔法理論」という授業を受けていた。この世界の魔法は多種多様であり、【固有魔法】までふくめると限りなく無限にあるとされている。また、固有魔法は持って生まれる先天的なものなので、遺伝する可能性も低い。固有魔法以外にも、実は【スキル】というものも存在している。スキルとは非常に厄介な代物で、「魔法」に含まれるのかそれとも全くの別物なのか、それは未だ明らかにされておらず、常に研究者たちのホットな話題の一つなのだ。帝国を守護するブラックナインや高ランクの冒険者にはスキルを身に付けているもちも多く、それは固有魔法とは逆で後天的に身につくとわかっている。しかし、カインは生まれながらにスキル【閃光斬】を所持しているが、それは前世の前世の前世で身に付けたもので、自分のポテンシャルをそのまま引き継ぐことが出来る固有魔法【転生魔法】のおかげなのだ。
カインは、途中まできちんと教師の話を聴いていたのだが、スキルの話題で退屈になり窓の外をぼうっと眺めていた。空は雲一つない晴天である。なぜ退屈なのかというと、カインはスキルが魔法の一種であることを知っているからだ。この世界の人々、もちろんエルフや獣人、ドワーフなども含まれるがすべての人に魔力が備わっている。無論、そこには魔力量といかに効率よく使用できるかの技術が大変重要である。高ランクの冒険者、歴戦の騎士は無自覚に自分の魔力を使用し、スキルを使用しているのだ。
授業を終えカインはさっさと学院を後にする。
そこにはいつも通り、王家の家紋があしらわれた豪華な馬車と護衛であるシルフィーがいた。彼女の美しく整った金髪と全身を覆う真っ黒な甲冑が絶妙にマッチしており、帰宅する生徒やその従者たちの視線を釘づけにする。
「シルフィー、今日は寄り道するぞ」
「殿下、どこにいくのでしょう?」
「冒険者ギルドだ」
「なりません。あのようなならず者たちが集う場所など。殿下に危険があったらどうするんですか?」
「それなら問題ない。僕にはこのネックレスがあるからな」
カインは、クリスから賄賂として受け取ったネックレスを早速使おうとしていた。
皇太子として冒険者ギルドにいくと大きな騒ぎになることは間違いない。
彼は皇帝になることは決定しているが、死ぬまで皇帝を続けなければいけないということはない。五十年、百年を務めてその間に子を産むことが出来れば、次代に託すことが可能だ。カインは皇帝をやめた残りの半生を冒険者として過ごす気満々なのだ。そのため、ネックレスをつけることで別人になりすまし、学生の今から冒険者活動を謳歌しようときめていた。
「着替えを持ってきたよな。急げ、馬車の中で着替えて途中下車するぞ」
「仕方ありませんねぇ。陛下にバレても私は知りませんからね!」
「父上にバレたらお前は解雇だ。うまくやるんだな」
「最低です、殿下!私をもっと気遣ってくださいよー!」
父親に冒険者になりたいとせがんでも却下されるのは目に見えている。
そのため、最初から裏でこそこそしようという落胆なのだが……。
馬車に乗り込み平民が着るような地味な服に着替え、カインは自分とシルフィーの首に赤いネックレスをかける。シルフィーによるとこのネックレスは「マジックアイテム」と呼ばれるもので、クリスの言った通り相当価値が高いようだ。
冒険者ギルドから少し離れた貴族街の出口でおりる。
カインは初めの平民区画を物珍しそうに眺めながら歩くが、自分たちが何も持っていないことに気づく。冒険者ギルドに入るのに武器の一つも持っていないのはいささか不自然であり、また不用心だ。こいうことを予想していなかったシルフィーはやはりどこか抜けていて、おっちょこちょいだ。
「シルフィー、武器屋にいって簡単な装備をそろえるぞ」
「殿下!王宮に取りに帰ればいいものがたくさんございます。一度帰りましょう」
「馬鹿か、最初からそんないいものを持ってたら怪しまれるだろう」
「ですが殿下……。」
「いいから行くぞ!」
冒険者ギルドの向かいに、剣の看板が立てられているいかにもという武器屋があった。中に入ると一人のばあさんが店番をしていた。店内はそこそこに広く、武具に限らずポーションから薬草、杖に至るまで様々なものを取り扱っているようだ。
「おや、いらっしゃい。見慣れない顔だねぇ。ここに来るのは始めてかい?」
「そうだよ。僕は魔法使い用のローブを彼女には剣と簡単な装備をもらおうかな。あと、ポーションふくめて諸々買うよ。」
「そうだねぇ、それなら少年にあったローブはこれで、そっちのお姉ちゃんのはこれがいいかねぇ。最後にこの初心者セットをサービスでつけておくよ」
カインのローブとシルフィーの装備はまとめて金貨五枚分になった。
日本円に換算すると五万円くらいである。
いい機会なのでこの世界で使われている硬貨とその価値をここに書き記す。
銅貨 百円
銀貨 千円
金貨 一万円
白金貨 十万円
光金貨 百万円
平民や貴族でも普段は金貨くらいまでしか使用せず、白金貨や光金貨は商人と貴族の取引や功績があった貴族に皇帝から下贈すときに用いられる程度である。
カインは先ほど買った黒のなんの変哲もないローブを着込む。
一方のシルフィーは薄い胸当てに鉄製のロングソードを腰に差しており、二人ともに目立たないヒューマンの顔に全身も肌色のため、二人のことを見破るのは至難の業だろう。
準備を整えた二人は今まさに冒険者ギルドへ乗り込もうとするのだった。
その代わりなのか、木々には小さな若葉が芽吹いている。
新しい命は暑さに身もだえながら懸命に息をする。
カインは今日という今日もきちんと学院に赴き「魔法理論」という授業を受けていた。この世界の魔法は多種多様であり、【固有魔法】までふくめると限りなく無限にあるとされている。また、固有魔法は持って生まれる先天的なものなので、遺伝する可能性も低い。固有魔法以外にも、実は【スキル】というものも存在している。スキルとは非常に厄介な代物で、「魔法」に含まれるのかそれとも全くの別物なのか、それは未だ明らかにされておらず、常に研究者たちのホットな話題の一つなのだ。帝国を守護するブラックナインや高ランクの冒険者にはスキルを身に付けているもちも多く、それは固有魔法とは逆で後天的に身につくとわかっている。しかし、カインは生まれながらにスキル【閃光斬】を所持しているが、それは前世の前世の前世で身に付けたもので、自分のポテンシャルをそのまま引き継ぐことが出来る固有魔法【転生魔法】のおかげなのだ。
カインは、途中まできちんと教師の話を聴いていたのだが、スキルの話題で退屈になり窓の外をぼうっと眺めていた。空は雲一つない晴天である。なぜ退屈なのかというと、カインはスキルが魔法の一種であることを知っているからだ。この世界の人々、もちろんエルフや獣人、ドワーフなども含まれるがすべての人に魔力が備わっている。無論、そこには魔力量といかに効率よく使用できるかの技術が大変重要である。高ランクの冒険者、歴戦の騎士は無自覚に自分の魔力を使用し、スキルを使用しているのだ。
授業を終えカインはさっさと学院を後にする。
そこにはいつも通り、王家の家紋があしらわれた豪華な馬車と護衛であるシルフィーがいた。彼女の美しく整った金髪と全身を覆う真っ黒な甲冑が絶妙にマッチしており、帰宅する生徒やその従者たちの視線を釘づけにする。
「シルフィー、今日は寄り道するぞ」
「殿下、どこにいくのでしょう?」
「冒険者ギルドだ」
「なりません。あのようなならず者たちが集う場所など。殿下に危険があったらどうするんですか?」
「それなら問題ない。僕にはこのネックレスがあるからな」
カインは、クリスから賄賂として受け取ったネックレスを早速使おうとしていた。
皇太子として冒険者ギルドにいくと大きな騒ぎになることは間違いない。
彼は皇帝になることは決定しているが、死ぬまで皇帝を続けなければいけないということはない。五十年、百年を務めてその間に子を産むことが出来れば、次代に託すことが可能だ。カインは皇帝をやめた残りの半生を冒険者として過ごす気満々なのだ。そのため、ネックレスをつけることで別人になりすまし、学生の今から冒険者活動を謳歌しようときめていた。
「着替えを持ってきたよな。急げ、馬車の中で着替えて途中下車するぞ」
「仕方ありませんねぇ。陛下にバレても私は知りませんからね!」
「父上にバレたらお前は解雇だ。うまくやるんだな」
「最低です、殿下!私をもっと気遣ってくださいよー!」
父親に冒険者になりたいとせがんでも却下されるのは目に見えている。
そのため、最初から裏でこそこそしようという落胆なのだが……。
馬車に乗り込み平民が着るような地味な服に着替え、カインは自分とシルフィーの首に赤いネックレスをかける。シルフィーによるとこのネックレスは「マジックアイテム」と呼ばれるもので、クリスの言った通り相当価値が高いようだ。
冒険者ギルドから少し離れた貴族街の出口でおりる。
カインは初めの平民区画を物珍しそうに眺めながら歩くが、自分たちが何も持っていないことに気づく。冒険者ギルドに入るのに武器の一つも持っていないのはいささか不自然であり、また不用心だ。こいうことを予想していなかったシルフィーはやはりどこか抜けていて、おっちょこちょいだ。
「シルフィー、武器屋にいって簡単な装備をそろえるぞ」
「殿下!王宮に取りに帰ればいいものがたくさんございます。一度帰りましょう」
「馬鹿か、最初からそんないいものを持ってたら怪しまれるだろう」
「ですが殿下……。」
「いいから行くぞ!」
冒険者ギルドの向かいに、剣の看板が立てられているいかにもという武器屋があった。中に入ると一人のばあさんが店番をしていた。店内はそこそこに広く、武具に限らずポーションから薬草、杖に至るまで様々なものを取り扱っているようだ。
「おや、いらっしゃい。見慣れない顔だねぇ。ここに来るのは始めてかい?」
「そうだよ。僕は魔法使い用のローブを彼女には剣と簡単な装備をもらおうかな。あと、ポーションふくめて諸々買うよ。」
「そうだねぇ、それなら少年にあったローブはこれで、そっちのお姉ちゃんのはこれがいいかねぇ。最後にこの初心者セットをサービスでつけておくよ」
カインのローブとシルフィーの装備はまとめて金貨五枚分になった。
日本円に換算すると五万円くらいである。
いい機会なのでこの世界で使われている硬貨とその価値をここに書き記す。
銅貨 百円
銀貨 千円
金貨 一万円
白金貨 十万円
光金貨 百万円
平民や貴族でも普段は金貨くらいまでしか使用せず、白金貨や光金貨は商人と貴族の取引や功績があった貴族に皇帝から下贈すときに用いられる程度である。
カインは先ほど買った黒のなんの変哲もないローブを着込む。
一方のシルフィーは薄い胸当てに鉄製のロングソードを腰に差しており、二人ともに目立たないヒューマンの顔に全身も肌色のため、二人のことを見破るのは至難の業だろう。
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