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二章
騎士のプライド、道化のプライド2
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数十分後、買い出しと使いから帰ってきたルイドバードは、何やら蒼い顔をしていた。「人々が劇場の事を噂していた」
「まあ、そうでしょうねえ。あれだけ大騒ぎしたら」
今までの疲れで眠いのに、傷の痛みとうつぶせになりっぱなしの姿勢で眠れないラティラスは張りのない口調で言った。
「そうではない! カディルが殺されていたらしい」
「へ?」
さすがに驚いて、枕に埋めていた顔をあげる。
「確かに針は刺しましたが、あれはハッタリの大嘘ですよ。毒なんて塗ってません!」
「だから、毒で死んではいない! 斬られて死んでいたそうだ。おそらくはどさくさに紛れて口を封じられたのだろう。観客に紛れていたケラス・オルニスに」
「あるいは裏切り者の治安部隊の誰かに」
起き上がったラティラスに、ルイドバードは買ってきた服と取ってきたラティラスの荷物を放り投げた。
「それから、ラドレイの家が燃えたようだ」
「え……」
「家族全員、それから使用人も焼け死んだ」
ラティラスの脳裏にレーネウスの無邪気な笑みが浮かんだ。
「お前はラドレイの家に忍び込んだと言ったな。おそらく、それがケラス・オルニスの耳に入ったんだ。これは推測だが、ラドレイは拷問でもされてお前に出納帳を取られたことを言ってしまったのではないか? 賊の名前と、メンバーであるカディルの名が書かれていたことを」
「あ、ああ……」
手足が情けなく震えだす。
ラドレイの家に忍び込んだ事を後悔してはいない。姫様の居場所を知るためだったのだから。過去に戻り、同じ状況に立たされたら、また同じことをするだろう。それを後悔とは言わないはずだ。
けれど。レーネウスも、メイドも、あの使用人も殺された。自分の行動が原因で。
ルイドバードはラティラスの動揺に気づかずに続ける。
「どうりでカディルが殺されるのが早いと思った。おそらくお前が来ると思って奴を見張っていたのだろう。むしろ、治安維持隊が来なければお前もどうなっていたか。呼んでくれたカディルに感謝だな」
ラティラスは吐き気を抑えるように口元を押さえた。
その行動で、ラティラスが何を考えているのか読み取ったのだろう。ルイドバードは顔をしかめた。
「まさか、罪悪感を感じているわけじゃあるまいな? ラドレイの事は自業自得だぞ。あんな怪しげな組織に金を出して違法行為をしている時点で、自分が危険に陥る覚悟をしているべきだ」
「……でも、娘や使用人に罪はなかったはずです」
「姫を取り戻すためなら何でもするつもりではなかったのか? お前こそ、手を汚す覚悟がないのなら、城に戻って王の判断を待つべきだ」
「……ハハ、手厳しいですね。ですがお説ごもっとも」
そして、ラドレイとカディルの口が封じられた以上、情報源はこれで完全に絶えたことになる。
ルイドバードは険しい顔を窓にむけた。
「今すぐこの街から離れた方がいい。もう治安部隊がそこまで来ている。この辺りの宿を検(あらた)めるらしい」
もう背中の血はかなり止まってきている。手当をして服を着ると、ラティラスはルイドバードと共に階下へ降りていった。
「まあ、そうでしょうねえ。あれだけ大騒ぎしたら」
今までの疲れで眠いのに、傷の痛みとうつぶせになりっぱなしの姿勢で眠れないラティラスは張りのない口調で言った。
「そうではない! カディルが殺されていたらしい」
「へ?」
さすがに驚いて、枕に埋めていた顔をあげる。
「確かに針は刺しましたが、あれはハッタリの大嘘ですよ。毒なんて塗ってません!」
「だから、毒で死んではいない! 斬られて死んでいたそうだ。おそらくはどさくさに紛れて口を封じられたのだろう。観客に紛れていたケラス・オルニスに」
「あるいは裏切り者の治安部隊の誰かに」
起き上がったラティラスに、ルイドバードは買ってきた服と取ってきたラティラスの荷物を放り投げた。
「それから、ラドレイの家が燃えたようだ」
「え……」
「家族全員、それから使用人も焼け死んだ」
ラティラスの脳裏にレーネウスの無邪気な笑みが浮かんだ。
「お前はラドレイの家に忍び込んだと言ったな。おそらく、それがケラス・オルニスの耳に入ったんだ。これは推測だが、ラドレイは拷問でもされてお前に出納帳を取られたことを言ってしまったのではないか? 賊の名前と、メンバーであるカディルの名が書かれていたことを」
「あ、ああ……」
手足が情けなく震えだす。
ラドレイの家に忍び込んだ事を後悔してはいない。姫様の居場所を知るためだったのだから。過去に戻り、同じ状況に立たされたら、また同じことをするだろう。それを後悔とは言わないはずだ。
けれど。レーネウスも、メイドも、あの使用人も殺された。自分の行動が原因で。
ルイドバードはラティラスの動揺に気づかずに続ける。
「どうりでカディルが殺されるのが早いと思った。おそらくお前が来ると思って奴を見張っていたのだろう。むしろ、治安維持隊が来なければお前もどうなっていたか。呼んでくれたカディルに感謝だな」
ラティラスは吐き気を抑えるように口元を押さえた。
その行動で、ラティラスが何を考えているのか読み取ったのだろう。ルイドバードは顔をしかめた。
「まさか、罪悪感を感じているわけじゃあるまいな? ラドレイの事は自業自得だぞ。あんな怪しげな組織に金を出して違法行為をしている時点で、自分が危険に陥る覚悟をしているべきだ」
「……でも、娘や使用人に罪はなかったはずです」
「姫を取り戻すためなら何でもするつもりではなかったのか? お前こそ、手を汚す覚悟がないのなら、城に戻って王の判断を待つべきだ」
「……ハハ、手厳しいですね。ですがお説ごもっとも」
そして、ラドレイとカディルの口が封じられた以上、情報源はこれで完全に絶えたことになる。
ルイドバードは険しい顔を窓にむけた。
「今すぐこの街から離れた方がいい。もう治安部隊がそこまで来ている。この辺りの宿を検(あらた)めるらしい」
もう背中の血はかなり止まってきている。手当をして服を着ると、ラティラスはルイドバードと共に階下へ降りていった。
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