無能と呼ばれた鍛冶師の神〜能力値向上のチート装備を村人たちに持たせて最強の国を築く!!

七色夏樹

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第46話 折の中から見た景色

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 そこはまさに、地獄と呼ぶに相応しい場所だった。

「なんだ、またこんなどうしようもない人間かよ」
「これじゃ剣闘士にもなれねぇよな」

 果てしなく続く鉱山帯、その一角に、巨大な鉄扉がはめ込まれている。
 そこを守るのは門番らしき二足歩行の巨大牛――ミノタウロス。
 彼らが鋭い眼つきで睨みを利かせる。

「こ、怖いよ……」

 鉄格子の隙間からこちらを覗き込んでくる怪物に、子供たちはガタガタと歯を鳴らす。

「いい加減少しはマシな奴隷を連れてこれねぇのかよ!」
「ほら、通行証見せろ人間」

 狐顔の男が懐から通行証を取り出し、ミノタウロスに提示すると、途端に顔色を変えた。

「げっ!? こりゃ特別運搬車じゃねぇかよ!」
「ってことは、これはミノタロウがボッコボコにされたっていう……ゴブリンの餌かッ!?」
「し、失礼しやしったぁあああ!!」

 死の商人にミノタウロスたちが恐れ慄いている。

「奇妙だ」

 怪物たちの反応に、分からないと眉を曲げるのはガウェイン。

「どうかしたの?」
「先程の魔物はミノタウロスで間違いないんだな?」
「間違いないわ。二メートル以上の牛だった」

 見たままを伝えると、ガウェインはさらに分からないと頭をひねる。

「ミノタウロスたちはなぜゴブリンを恐れている? 一般的にミノタウロスとゴブリンの実力差は天と地ほどある」

 当然ミノタウロスの方が格上なのだけど、先程のミノタウロスはあきらかにゴブリンを恐れていた。

「まさか……ゴブリンロード!?」

 わたしたちはゴブリンの王様に献上される餌なのではないかと、ガウェインは推測する。
 そんな、まさか……。
 そう思っていたのだけど、目の前に広がる光景に胃が締めつけられる。

「ひどい……」

 わたしたちを乗せた荷馬車が洞窟の中を進むと、やがて鉱山帯の中とは思えないほどの光景が――巨大な街が眼前に広がった。
 蒼鉱石によって蒼白く照らされた巨大都市。

 そこでは魔物や魔族が人間を奴隷として虐げており、幼い頃に神父様から聞いた地獄そのものだった。

「カイン殿!」

 死の商人に向かって親しげに手を振る魔族がいる。悪魔のような褐色の肌が特徴的な、とてもいやらしい恰好をしたダークエルフである。

「この子たちが、そうなの?」
「ええ、幸運にも神に選ばれた子供たちです」

 相変わらず死の商人は、ふざけたことを平然と口にする。

 わたしたちが死神に選ばれた、幸運な生贄だと笑っている。鬼畜の所業である。

 がんっ!

 二人の会話に我慢ならないと、ガウェインは鉄格子を殴りつけた。

「意外と活きがいいんだね。これならクレア様もお喜びになられるかもしれないね」
「だといいんですが」

 新鮮で活きがいい方が、美味しくて喜ばれる。ダークエルフはわたしたちの顔を見て、薄ら笑いを浮かべる。

「もう少しの辛抱なんだから、我慢なさいよ」

 お前たちの哀れな人生も直に終わりを迎えるという女の横面を、思いっきりひっぱたいてやろうと思ったけれど、わたしには腕がなかった。

 例えどんなに糞みたい人生だったとしても、わたしたちの人生を他人に判断してほしくない。どんなに辛く苦しくても、わたしたちは今日まで精いっぱい生きてきたのだ。
 懸命に生きようと呼吸を繰り返す女の子を前に、死んだ方がマシだなんて冗談でも言われたくない。

「ば、ばかにしないでよッ!」
「……」
「わたしたちは、これでも一生懸命生きてきたわ。生きようと努力したのよッ!」

 もう死んでしまおう。
 そう思った日が数え切れないほどあった。それでも、わたしたちは負けてたまるかコンチクショーって、運命に、神ってやつに中指突き立てて生きてきたんだ。

「あんたたちなんかに何がわかるの!」
「わかるよ、その気持ち」
「……わかる? くッ、バカにしてっ……」
「嘘じゃない。だってうちも、元は人間の奴隷だったから」
「………奴隷?」
「きっとね、虐げられてきた期間は君たちより長いと思う。夜の妖精王ティターニアに助けてもらうまでの80年間、本当に地獄だったから。でもね、うちも諦めなかったんだ。きっといつか、そう思ってた。だから、種族は違うけどさ、うちは似たような君たちが柵から開放されるのが少し、嬉しかったというか……ホッとしたんだ。ごめんね、余計なお世話だったよね」

 彼女は死とは開放だと、わたしに説いてみせた。
 当然、わたしはふざけるなって思ったけど、価値観が違いすぎて言い返すのもバカらしく思えた。

「……」

 俯き、言葉を噛み殺すように奥歯を噛みしめるわたしを、ガウェインがそっと抱き寄せる。

「オレたちの前から失せろ」
「……幸運を」

 ――ゴンッ!!

 たとえ死がすべての苦痛からの開放だったとしても、そこに幸運など有りはしないというように、ガウェインは女の顔を、鉄格子を蹴りつけた。

「商人、さっさと出せッ!」

 死の商人はダークエルフの女に愛想笑いを浮かべて、軽く会釈し、そそくさと御者台に戻った。
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