無能と呼ばれた鍛冶師の神〜能力値向上のチート装備を村人たちに持たせて最強の国を築く!!

七色夏樹

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第57話 恐るべき出産率

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「すっ、すごい!?」

 神道具ゴッドアイテム神の輪っかには、治癒効果のある特殊なスキルも組み込まれている。

 ピカッと輪っかを光らせてやれると、ハーピィの頭上を一筋の光が照らし出す。暖かな光は傷ついたハーピィの身体をあっという間に癒やしていく。

 蒼白い顔で今にも死にそうになっていたハーピィの頬に赤みが差す。

「相変わらず、神ウゥルカーヌスの力は凄まじいな」

 似たような力でアーサーに傷を癒してもらったガウェインも、これには舌を巻いて唸っていた。

「危ないところを助けて頂きありがとうございます。そのうえ治療まで」
「この程度大したことじゃない」
「ウゥルカーヌスの言う通りよ。それより、あの人間の冒険者たちは一体何だったの?」
「それが……」

 悲しげにうつむくハーピィは、ここに至るまでの経緯を話しはじめる。

 ハーピィの話によると数日前、突然大勢の冒険者が東の地からやって来たという。戦闘が不得意なハーピィたちは、争いを避けようとした。

 しかし、冒険者たちはしばらく大森林を捜索するため、ハーピィの里を拠点地にすると言い張った。はじめは無駄な争いを避けるためだと、冒険者たちの滞在を認めたハーピィたちだったが、次第に冒険者たちの態度が一変したという。

「一変……何があった?」

 真剣な表情で尋ねるガウェインに、ハーピィは少し言いにくそうに口にする。

「その、エッ、エッチな要求をしてきたんですっ!!」
「―――!? エエェェッ、エッチなよよ要求とはどどどどんな要求だァッ!!」

 その手の免疫がまるでないガウェインは、鼻息荒く前のめりの姿勢となって、ハーピィに詳しく教えるよう迫っていた。

「あんたキモイのよ!」
「――痛ッ!? 何をする、ダークエルフの姫よ!」
「キモいから興奮するなって言ってんのよ!」
「キ、キキキモくなどないッ! オレはキモくなどないッ!」

 ガウェインに学生服を着せたら、まるで異世界の陽キャにイジメられている陰キャ童貞のようだな思ってしまう。それはそれで意外と面白い組み合わせだな、なんて思ったことは内緒だ。

「それで、あんたは人間に弄ばれそうになって逃げてきたってわけ?」
「ちょっと違います」
「違うって……どの辺が?」
「里の男衆がいい加減にしろと冒険者たちに噛みついたんです」
「そりゃそうなるわよ」
「けれど、冒険者たちはかなりの手練でして、戦闘に不慣れなハーピィでは太刀打ちできず……。多くの同胞が殺されてしまいました」
「無理もない。大森林ここに足を踏み込むことを赦されているのはBランク以上の冒険者のみだからな」

 ガウェインいわく、先程の二人も恐らくBランク冒険者だという。

「一般的にBランク冒険者ってのは強いのか?」

 俺はそのへんの知識に疎い。

「ピンきりだな。強いのもいれば先程の連中のように弱いのもいる」

 そこは手合わせしてみないと分からないという。

「だが、それなら魔族街ワンダーランドに助けを求めれば良かったんじゃないのか?」

 どうしてわざわざ戦闘が不慣れな自分たちだけで挑んだのだろう。最悪ワンダーランドに逃げ込むという手もあったはずだ。

 そう思ったのだが、

「それは無理よ」

 ワンダーランドの姫君は難しい顔で言った。

「なぜだ?」
「魔族街ワンダーランドは人間と国交を結んでるのは知ってるでしょ?」
「ああ」
「あたしたちワンダーランドは、人間たちにとっては中立の立場ってことになっているの。冒険者たちが大森林にやって来たのだって、元はと言えばワンダーランドが通行を認めたから。そんなところにハーピィが逃げ込むことはしないわよ」

 魔族街ワンダーランドは《約束の大森林》において、勢力図の一つであることは間違いない。けれど、それは言ってしまえば人間を味方につけているところが大きいのだとクレアはいう。逆に、人間にへりくだっているように映ってしまうワンダーランドを毛嫌いする魔物や魔族は多いらしい。

「お前らもワンダーランドが嫌いなのか?」

 俺は単刀直入にハーピィに尋ねてみることにした。

「正直、あまり良くは思っていません。里を抜けた者の中にはワンダーランドに移り住むものもいますが、やはり冒険者を大森林に招き入れる彼らは、その……好きではありません」

 ハーピィはダークエルフのクレアに気を遣いながらも、はっきりと好きじゃないと口にする。

「だからって闇雲に逃げて来たのか?」
「もちろん闇雲ではありません。里を抜けたハーピィの一人と、実はたまに会っていたんです。その子が言っていたんです。中央の村にはすっごく強いゴブリンがいるって。なんでも、ミノタウロスやサイクロプスを倒してしまうほどのゴブリンらしいのです。わたしはそのゴブリンと交渉しにきたんです」

 ゴブゾウのことか。
 となると、こいつの知り合いのハーピィとは、ゴブヘイが『オナホル』でよく遊んでいたあの娘のことかもな。

「で、交渉とは……?」
「はい! わたしは里をめちゃくちゃにした人間たちに復讐がしたいのです。あの人間たちを皆殺しにしてくれるなら、ゴブリンにこの身体を差し出す覚悟です」

 大きな胸を突き出し何ということを口走るのだ。

「し、師匠に女体をっ!?」
「おいっ、ガウェイン鼻血ッ!?」
「あんたいい加減にしなさいよね、この変態ッ!」
「オ、オレは変態ではない!」
「その顔で言われても説得力ないのよ」
「とにかく、なんか詰物でも突っ込んでおくのだ。ほらっ」
「うぅッ―――!?」
「ウゥルカーヌスはその変態に甘すぎるのよ」

 そんなこと言ったって、一応信者だからな。

 にしても、ゴブリンの性質を知っているこのハーピィは、自分の身体と引き換えにゴブゾウに復讐を依頼するため、アーサー村を目指していたということか。
 そこに追っての彼らが来たと……。

 胸元に手を置き、覚悟を決めた眼差しを向けてくるハーピィに、俺は仕方ないなと嘆息した。

「ゴブリンの子は一月足らずで生まれてくると知っているか?」
「え……?」
「ゴブリンは弱い。なのに長い歴史上、ゴブリンが絶滅の危機に直面したことは未だかつて一度もない。なぜだか分かるか?」
「……あ、いえ、わかりません」
「それはゴブリンの出産までの期間が恐ろしく早いためだ。メスに子を宿し、一月程で数匹生む。それを延々と繰り返している。ゴブリンのメスは一年の大半を妊婦の状態で過ごすことになる」

 現に、ここ三ヶ月でアーサー村のゴブリンの数は異常なまでに増えている。最初は30匹足らずだったにも関わらず、現在は五倍の150匹。このままだと更に三ヶ月後には750匹にまで膨れ上がる。更に三ヶ月後には3750匹。この恐ろしさをハーピィ娘は理解しているのだろうか。

 俺はゴブリンのあまりの繁殖率の恐ろしさに、本気で去勢を考えるほどだ。

「ゴブリンでもないお前が、ゴブリンのメスのように生み続けることは不可能だ。そんなことをすれば、生み死にするぞッ!」
「ヒィッ!?」

 実際に多種交配を繰り返すゴブリンの性奴隷に堕ちてしまった人間は、あまりの出産スピードに耐えきれず、疲弊して死んでいく。人間よりも強い身体を持つハーピィでも、一年耐えられたらいい方だろう。

「う、生み死にッ!?」

 現実を知り、膝から崩れ落ちるハーピィ娘。

「もう陽が昇る。とりあえず一旦村に戻るぞ。お前も来い。そこで改めて話を聞いてやる。ちなみに俺はそのゴブリンより強い上に、出産死にさせることもない」
「ホントですかっ!」

 歓喜に声を震わせるハーピィとは異なり、斜め後ろ後頭部辺りに鋭い視線が突き刺さる。

 ボキボキッ――

 振り返らなくとも容易に想像できてしまう。ビッチ風の黒ギャルが指を鳴らしブチギレている姿が。

 今振り返れば殺される。
 そう判断した俺は頑として振り返らなかったのだが、

「うぎゃあああああああああああああああああああッ!!!!」

 こっちを見ろと言わんばかりに、刃物のような指先が、背中に爪を立てた。
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