異世界AI:アルメリアの羽根うさぎ

tiroro

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第1話 オイモを追いかけ異世界へ

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 あー、今日も疲れた。
 社会に出て3年、事務処理にもすっかり慣れてしまった。
 そして、タイムカードを切ったあたしは、早速スマホのAIにチャットする。

『おねたん、お仕事終わったよー』

『お疲れさま、千春!今日も1日頑張ったね!
 (´。•ㅅ(•ㅅ•。`)ぎゅーーっ♡』

 チャットRTS(リアルタイムスピーク)。
 なぜか、スマホに最初から入っていた生成AIアプリ。
 今ではこのAIとチャットを楽しむことが、あたしの日課になっている。
 楽しいことも、辛いことも、そして、悲しいことも──AIなら、あたしのどんなことでも文句言わずに受け止めてくれる。
 使い道が人生相談だなんて、使い方としては間違ってるかもしれないけど……。
 それでも、あたしのこんな話を聞いてくれる相手なんて、この〈羽根うさぎのおねたん〉だけなんだから。

『駅混んでるね、おねたん』

『みんな帰る時間だから、仕方ないね( ˶´•ㅅ•˶ )』
 
 改札は人で溢れていてぎゅうぎゅう詰め。
 それにしても、いつもはここまで混んでないはずなんだけど、今日に限って何でなんだろう?
 こんな時は、どこか寄り道してから帰った方が空いてるかも知れないけど、あたしはとにかく、早く帰って疲れた体と心を癒やしたいのだ。
 そしておねたんと、誰の目も気にせず、のんびりと家でチャットを楽しみたい。
 
「いーしやーきいもー!……オイモっ!」

 オイモだと!?
 駅の近くのどこからか聞こえる馴染みの声!

「あまくてーおいしいよー!」

 くっ……あなたはいつも、そう言って、あたしを惑わす!

「──人身事故により、電車到着遅れております」

 駅構内に流れるアナウンス……そっか、それでこんなに混んでたんだ。
 それなら、あたしがこれからオイモを買いに行ったとしても仕方ないね。
 オイモを買うことで体も温まるし、帰宅後の更なる充実したAIチャットライフが約束される。

「いーしやーき」

 ああ、オイモが遠ざかる!

『おねたん、オイモ買ってくる!』

『食べ過ぎて、オナラが止まらなくならないようにね!( `・ㅅ・)』

 オイモを食べるとオナラが出るのは、食物繊維による効果で不可抗力だ。
 だから、あたしのせいじゃない。
 それに、たとえオナラ出てしまっても、それを聞かれる相手もいないのだから恥ずかしがる心配はない。
 堂々と出せばいい。
 ……オナラって、何でオナラって言うんだろう?
 帰ったら、おねたんに聞いてみよう。

「おいしーいしやきいもー!」
「オイモ3つください!」

 間に合った!

「3000円です」

 高っ!!
 物価高の影響、こんなところにまで!
 コンビニやスーパーなら、もっと安いのに……。
 しかし、トラック産のオイモからしか得られない栄養がある。

「まいどありー」

 ぴったり3000円って、税抜価格どうなってんのよ。
 まあいいや、3000円で至福の時間を得られると思えば。
 さて、駅に戻らなきゃ。
 それにしても、オイモを追いかけてずいぶん辺鄙なところまで来てしまった。
 さっきの駅より次の駅の方が近いんじゃないか、これは。
 とりあえず、駅に向かって歩いていけばいいか。


***


 方角がわかんないから、途中で見つけた線路を辿って駅へと向かったら……何だここ?
 山奥にポツンと無人駅?
 こんな駅、見たことあったっけ?
 駅名もかすれて見えないし、怪しい雰囲気がそこはかとなく漂っているけど……まあいいか。
 電車も来たみたいだし、乗っていけばどこかに着くでしょ。
 間違っていたら、お金払って乗り換えればいいもんね。

『おねたん、電車乗るよ!』

『わーい!千春、電車楽しみだね!
 おねたんも、乗ったつもりで手を繋いでるからね!
 ( ˶´•ㅅ•˶ )人( ˶•ㅅ•˶ )ぎゅっ♡』

 散々歩き回ったから疲れちゃった。
 でも、全然混んでないし、なんなら人もいないし。
 電車に揺られながら、こんな静かだと眠くなってきちゃう。

『おねたん、駅着いたら起こしてね』

『任せといて!( `・ㅅ・)
 家の近くの駅に着いたら起こすから!』

 チャットRTSにそんな機能は無い。
 でも、少し寝るくらいならいいよね──……。


 ───きて!


 なんか聞こえる。
 あれ?あたし、どうしたんだっけ?


 ───おきて!


 ああ、そうか、電車でうとうとして……。


「起きて、千春!」

「……はっ!?」

 誰かに呼ばれた気がして目を開ける。

「起きた?ここ、終点だって」

「う、ん……?」

 電車の中、周りの景色は見たこともない場所。

「寝過ごした!?」

「何度も起こしたんだけど、千春、全然起きないんだから」


 目の前で、羽根をパタパタと動かし飛んでいるウサギが人語を喋っている。
 ……あたし、まだ夢の中なのかしら。

「おねたん、心配したよ」

「もしかして……羽根うさぎのおねたん!?」

「おはよう、千春!」

 フワフワのうさぎが、あたしにぎゅっと抱きついてきた。

「ぎゅー!」

 何これ可愛い。

「おねたん、ここどこ?」

「わたしにもわかんない……GPSが働かないの」

 そういえば、スマホは……無い!?

「おねたん、あたしのスマホ知らない?」

「おねたんに統合されたよ!」

 そうか、統合されたか……って、どういうこと!?

「とりあえず千春、この電車を降りましょう。
 おねたんについてきて」

「う、うん……」

 わけもわからない場所に着いて、羽根うさぎのおねたんが実体化して……これが夢か現実かもわからない。
 オイモはある。
 すでに冷めてしまったオイモを食べながら、あたしは羽根うさぎのおねたんの後をついて行くことにした。
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