最強の暗殺者は、平凡な12歳だった

結愛

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第三章

第八話〜夏終わり、秋始まる〜

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   「さっむ」

   思わず声に出したレナは、余計に寒さを感じた。口に出すと、脳が受け入れてしまうのだろうか。さらに寒くなったように思う。

   この時期寒い廊下は、思った以上に冷えており、部屋からキッチンまでの道のりも、靴下が必須アイテムとなった。

   キッチンに着いてすぐさま食器棚からコップを取り出す。蜂蜜レモンをコップに入れ、お湯を注いだものは湯気を立ち上らせている。それを口にしながら、これからやるべき事を整理した。

   今日は久しぶりの任務だ。起きたのは丁度さっき。これまた久しぶりにいい目覚めをしたので、ちゃんと睡眠をとれていたようだ。リクとリミによる毎回の奇襲攻撃は、今日にて途切れた。だが、少し寂しい気もするのは慣れてしまったからだろう。

   任務というのも、久しぶりにしては割とハード。暗殺者二人にターゲット一人。あらかじめ情報は手に入っているので、殺りやすい。こういう下準備も、なかなか久しぶりだった。

   久しぶりの連続に、ちょっとハラハラする気もある。だが、それ以上に、ほどよい緊張感が心地いい。珍しく、心躍るものだ。

   コップの中身をぐいっと飲み干し、洗う。時間は迫っている。あまり遅れると、帰ってきた時に、二人に怒られてしまうだろう。

   廊下に出れば、まだ床はひんやりと冷たい。体温が徐々に下がりそうだ。足早に、それでいて無音で部屋に入り、寝間着から着替える。

   だが、そのときのベッドの誘惑は並のものでもない。自分で温められた場所は触ればまだ温もりがある。潜りたい気持ちをぐっとこらえ、そそくさと着替えた。

   襟と袖に青の刺繍が入ったシャツ。そのうえには裏起毛のパーカーを羽織り、下はジーンズ系の半パンだ。さすがに寒いので、ゴシックなニーハイソックスを履くことにする。いつもどおりのマフラーを首に巻き付け、施設を出た。

   案の定、外は室内よりも寒い。呼吸すれば、吐いた息はすでに白かった。テレビのアナウンサー曰く、秋にしては、早々に寒波が襲ってきているらしい。鼻と口をマフラーに埋め、パーカーのポケットに手を突っ込み、目的地に向かう。

   スーパーを通り過ぎ、さらに山奥へと移動する。やはり、日も出ない時間とあってか、人の気配はいっさいない。もう少しあとなのだろう。

   一言も発さない。ただ無言で歩き続ける。レナの顔には、すでに感情というものがなかった。瞳からは光が消え、虚無だけを捉える。一種の放心状態でもあるが、これがレナの生き抜く業だ。

   迷いなく、道を進むと、いよいよ森らしくなってくる。周りは木々で覆われ、街の風景はすでになかった。霧がかっているのも加わってか、前は数寸先しか見えない。

   鋭くさせた五感で察知し、道無き道を歩く。

   しばらくすると、かなりの山奥に建物が見える。それは工場だ。昔のものらしく、看板からは文字が読み取れず、建物自体が、錆びやらでかなり汚れている。まさに廃工場。隠れるにはもってこいの場所だろう。

   中に入れば、工場独特の匂いが鼻をついた。鉄と油の混じったような異臭がちょっとした隙間風に運ばれて外へと出ていく。

   異臭に顔を顰めながら、中を見渡した。

   ボロボロとなった工具やらが散乱している。だが、穴があったらしき壁には、とってつけたような板が貼り付けてあった。

   修理されているのだから、人がいたのだろう。室内は真っ暗で、灯りらしきものもない。

   とりあえず、奥の扉に向かうことにした。
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