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37話
王宮の地下にある『王立魔力研究所』。
ここは、国中の特異な魔力を持つ者や、古代魔導具の研究を行う最高機関だ。
その白く冷たい検査室で、僕はガチガチに緊張していた。
「ではレオ様、こちらの『測定水晶』に両手を触れてみてください」
白衣を着た初老の主任研究員が、恭しく僕に水晶玉を差し出した。
ダンジョンから帰還後、僕の「魔力欠乏症」が実は「聖女級魔力の過剰放出」だったという報告が王宮に上がり、正式な再検査を受けることになったのだ。
もちろん、僕の背後には「完全武装(ただし私服で筋肉のラインがバッチリ出るシャツ)」のガドリエルが、腕を組んで仁王立ちしている。
彼が放つ『俺の妻に指一本でも触れたら施設ごと粉砕する』という無言の圧に、研究員たちは冷や汗を流していた。
「あ、はい……触れますね」
僕が恐る恐る水晶に手を触れた、その瞬間だった。
ピカーーーッ!!
「うわっ!?」
「目がぁっ!」
水晶玉が、太陽の如き爆光を放ったのだ。
あまりの光量に検査室が真っ白に染まり、ピキ、ピキピキッ……と、絶対に割れないはずの特級魔力水晶にヒビが走る。
パァンッ!!
乾いた音と共に、水晶は粉々に砕け散った。
「な、なんという事だ……!」
主任研究員が腰を抜かして床にへたり込んだ。
「測定限界突破……! 歴代の聖女様でも、この水晶を光らせるのがやっとだったというのに、破壊するほどの出力とは! レオ様、あなたはまさに奇跡です!」
「ええっ、そんなにですか!?」
僕は自分の手のひらを見つめた。
確かに、最近はガドリエルという「最高の受け皿」がいるおかげで、魔力の生産量も上がっている気がしていたが、まさか水晶を割るほどとは。
「……当然だ」
背後で、ガドリエルがフッと誇らしげに鼻を鳴らした。
彼の大胸筋が「うちの妻はすごいだろう」とばかりにドヤ顔で隆起しているようにみえる。
「しかし……解せません」
主任研究員が、立ち上がりながら眼鏡を押し上げた。
「これほどの魔力が常時体内で生成され、溢れ出しているのだとすれば、レオ様の肉体はとうの昔に破綻しているはず。……通常、膨大な魔力を安全に逃がすには、高度な術式による『魔力譲渡』が必要です。レオ様、一体どのようにして排熱(魔力放出)を行っているのですか?」
ピタリ。
僕の心臓が止まりかけた。
(や、やばい……!)
どうやって放出しているか。
そんなの、口移しとか、毎晩のようにベッドをぶっ壊しながら行っている濃厚すぎる性行為に決まっている。
それを、この真面目な研究員たちの前で言えるわけがない。
「えっと……そ、それは……自然に、空気中に溶け込んでいるというか……」
僕がしどろもどろになっていると、背後のガドリエルが一歩前に出た。
ズシン、と床が揺れる。
「俺が受け取っている」
「だ、団長!?」
ガドリエルは堂々と胸を張り、研究員たちを見下ろした。
「彼の魔力は、すべて俺の体内に直接注ぎ込まれている。だから俺の筋肉は『魔力強化』状態を維持できているのだ」
「おおっ! ガドリエル様のあの異常な強さの秘密はそこにあったのですね!」
研究員たちがメモを取り始める。
「して、その『直接注ぎ込む』という術式は、どのようなプロセスで……? 陣を描くのですか? 詠唱は?」
「陣などいらん」
ガドリエルが、ニヤリと笑った。
その顔を見た瞬間、僕は「あっ、これ絶対言う気だ」と絶望した。
「粘膜接触だ」
「ねっ」
研究員たちの手が止まった。
「……ね、粘膜……接触、とは……具体的に……?」
「口づけは当然として。あとは夜な夜な、彼の最も深い場所に俺の楔を打ち込み、そこで内側から直接……むぐぅッ!?」
「わあああああっ!! ストップ! ストップです団長!!」
僕は顔を真っ赤にして、ガドリエルの口を両手で塞いだ。
しかし、彼の吐息と筋肉の熱で、僕の手のひらの方が火傷しそうになる。
検査室は、しーんと静まり返った。
初老の主任研究員は顔をリンゴのように赤くし、若い研究員たちは「ヒェッ」「あの氷の団長が……」「毎晩……」と小声でざわついている。
公開処刑だ。
国家の最高機関で、自分たちの夜の性生活を暴露されるなんて。
「だ、団長! 何考えてるんですか! 恥ずかしすぎます!」
「……む。なぜだ。事実を述べたまでだ。お前の魔力は、俺の筋肉を育てるためだけにあると、この国の記録に刻ませておくべきだろう」
ガドリエルは僕の手をそっと外し、僕の腰を引き寄せた。
相変わらずの、重すぎる独占欲。
周囲の目など一切気にしていない。
「……それに、お前、水晶を割ったせいで魔力が少し滞っているだろう。体が熱くなっているぞ」
「え?」
言われてみれば、水晶が壊れた瞬間に魔力の放出先が失われ、僕の体内に熱がこもり始めていた。
顔が赤いのは羞恥のせいだけじゃない。魔力過多による軽い発熱状態だ。
「このままではレオの体が危険だ。……至急、『排熱作業』を行う。今日の検査はこれまでだ!」
ガドリエルは僕をヒョイッとお姫様抱っこし、研究員たちが止める間もなく検査室を後にした。
背後から、「お、お幸せに……!」という研究員たちの震える声が聞こえた気がした。
◇
王宮の廊下を、ガドリエルはものすごいスピードで歩いていく。
彼の胸に抱かれた僕は、自分の体がどんどん熱くなっていくのを感じていた。
「だ、団長……これ、ちょっとマズいかも……お腹の奥が、ウズウズして……」
「我慢しろ。……いや、我慢しなくていい。俺の腕の中で、好きなだけ鳴いていいぞ」
ガドリエルの瞳が、すでに「夜の獣」の色に変わっていた。
彼の大きな手が、僕の太ももをガッチリとホールドし、その硬い大腿四頭筋の感触が僕の体をさらに火照らせる。
「家まで……もちません……」
「ならば、ここだ」
ガドリエルが蹴り開けたのは、王宮内にある彼専用の「騎士団長執務室」だった。
ガチャリ、と重厚な鍵が閉められる。
「執務室のソファは、頑丈に作らせてある。多少暴れても壊れん」
彼は僕を革張りのソファに降ろすと、自分のシャツを引き裂くように脱ぎ捨てた。
露わになる、黄金に発光する完璧な大胸筋と、シックスパック。
魔力過多の僕の体は、その筋肉を見ただけで磁石のように引き寄せられそうになる。
「さあ、レオ。お前の溢れる魔力を、俺の中に全部注ぎ込んでみろ」
「ガ、ガドリエル……っ!」
僕は自分から彼に飛びつき、その厚い胸板にしがみついた。
唇が重なり、ドクン! と僕の中から彼の中へ、凄まじい魔力の奔流が流れ込む。
「ぐぅッ……! あぁ、たまらん……っ! お前の中は、今日も極上だ……!」
「あ、あっ……! ほしぃ、……っ! 早くぅ……っ!」
真っ昼間の王宮。
厳粛な執務室の中で、僕たちは理性をかなぐり捨て、互いの熱を貪り合った。
ガドリエルの「魔力強化筋肉」は、僕の魔力を受け取るたびにさらなるパンプアップを引き起こし、結局『頑丈に作らせた』はずの最高級ソファは、一時間後には無惨な残骸と化すことになった。
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