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既に番外編じゃあない。3
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王国は、王城の──庭園。
人の手が入り、華美に、豪華に作り込まれた庭木が様々な形で並ぶ、中心寄りの一角。
ずるずるローブにムダにデカい杖を持った魔術師どもが、巨大な魔法陣を取り巻いて何やら仕掛けている。
二重の同心円に、幾何学的な模様と意味不明な文字の羅列。
大量の魔力を溜め込んだ魔道具を取り出し──魔力を溜め込む為に、何人の、何百、何千何万の人の命を散らしたことか──魔法陣の一角に据えた。
魔法陣を発動させた後、しばらくして魔法陣が輝き始め──何十人かの少年少女と、5人の大人が魔法陣の中心に現れた。
──成功だ。
──成功したぞ。
──今度は、ちゃんと人の形をしているな?
──意思の疎通はどうだ? 問題無いか?
──潜在魔力量、基準値を通過しました。
──よろしい……それでは。
さわさわと、ローブ姿の魔術師どもが話し合い、一際ずるずるしたローブを着た、白髪頭に白ひげのじーさんが出てきて。
戸惑いと怯えを隠せていない少年少女と大人達の前に立ち、言い放った。
「よくぞ参られた、異世界の勇者様方よ。この王国を、魔物の手からお救い下されぃ」
じーさんは、微妙に上から目線だった。
じーさんは、問答無用で転移者達を王の御前へと連れて行った。
……こちらの意のままになる子供達だけではなかったのは正直予定外だったが、まぁ、良しとしよう。
そのあたりは、王が采配するだろう……。
白ひげじーさん──魔術師長は、転移者達に利用価値があるか否か、しか考えていなかった。
「これまでに、何千何万という犠牲を払い、今回ようやく完璧に成功したのだ。
役に立ってもらわなければ……」
近衛兵の1人は思った。
王の御前だというのに、ぼーっとつっ立っている、異世界からの転移者達。
揃いの服を着ている子供達はともかく、大人どもは何なんだ?
礼儀というモノを知らんのか。
どこか値踏みする目で転移者達を見ている、多数の貴族ども。
王や宰相も、使えるかどうかを見ている。
萎縮したり反発したり、といった反応をする転移者達の中に、逆に貴族どもや王族を観察する目があった。
あくまでも冷静。
と、いうよりも冷徹。
そんな視線を向けられているとは思ってもいない王は。
「よくぞ参られた、勇者達よ」
王の威厳を最大限押し出して、言った。
視線だけ交わす大人達の1人──1人だけ、どこか異質な雰囲気の、おっさんが大声で問う。
「ここは、どこなんだ? お前達は、一体誰だ? おれを──おれ達を、どうするつもりだ?」
王に対する言葉ではない、と、近衛兵が動こうとするのを、王自らが止めた。
「大事ない。不安に思うのも当然の事。
……勇者達よ。異世界より参られた、勇者達よ」
王は、転移者達を1人ひとり見極めるように視線を動かしながら、言った。
「今現在、我が王国は、魔物どもの国に攻められておる。そなた達は、辛い状況の我が王国に助力する為に、この地に召喚されて来たのだ。当然、助力してくれるのであろう? ……王国が勝利した暁には、報酬は思いのままだ。金でも地位でも名誉でも……な」
王は、ニヤリ、と笑った後、傍らに居た中年と少年少女、白ひげじーさんを示し。
「詳しくは、我が王子王女と宰相、そなた達を召喚した魔術師長に聞くが良い。では、な」
王は、自分が言いたい事だけ自分に都合の良いように話すと、さっさと退出した。
えええええーー………。
大事なところは丸投げして、とっとと退出して行く王に、転移者の何人かはドン引きしている。
が。
どこにでも、自分に都合良く判断するヤカラは居るモノで。
「……オレ達は勇者、だって? ……なんでも願いを叶えてくれるって?」
30代後半の担任教師と、50代のバス運転手が欲望のままに、妙な方向へとつっ走って行こうとしていた。
副担任の、教師2年目の若いというより幼い感じの女性教師とバスガイドのお姉さんは、2人して、ただただ涙ぐんでいる。
……ぶっちゃけ、使えない。
最初に声を上げたおっさん──どう見ても、40過ぎのおっさんですが何か?って感じだが。
なんとか情報を取ろうと白ひげじーさんな魔術師長と話そうとしてる。
……大人の中で、当てにできそうなのが、見ず知らずのおっさんだけって……。
どう受け止めればいいんだろうな……。
自分達の担任と副担任を眺めた後。
とりあえず、生徒は生徒で一塊になってみた。
この場に居る生徒は23人。
とにかくクラス委員と、どこのクラスにも1人は居る人気者のグループが中心になって、さわさわ……と話し合い。
が。
ちょっとだけ、話し合いの輪から外れた紅林真言と進藤和樹は。
「……なぁ、真言よ~。……オレら、どーなるのかなぁ……」
「あ~……。とりあえず、詳しく情報把握してからにしないか? そこでなんとなくヒマを持てあまし気味な王族と宰相? が、何か話したそうにこっちを見てるぞ。……なぁ、委員長よ?」
真言は、委員長の意識を地元民へと向けさせた。
人の手が入り、華美に、豪華に作り込まれた庭木が様々な形で並ぶ、中心寄りの一角。
ずるずるローブにムダにデカい杖を持った魔術師どもが、巨大な魔法陣を取り巻いて何やら仕掛けている。
二重の同心円に、幾何学的な模様と意味不明な文字の羅列。
大量の魔力を溜め込んだ魔道具を取り出し──魔力を溜め込む為に、何人の、何百、何千何万の人の命を散らしたことか──魔法陣の一角に据えた。
魔法陣を発動させた後、しばらくして魔法陣が輝き始め──何十人かの少年少女と、5人の大人が魔法陣の中心に現れた。
──成功だ。
──成功したぞ。
──今度は、ちゃんと人の形をしているな?
──意思の疎通はどうだ? 問題無いか?
──潜在魔力量、基準値を通過しました。
──よろしい……それでは。
さわさわと、ローブ姿の魔術師どもが話し合い、一際ずるずるしたローブを着た、白髪頭に白ひげのじーさんが出てきて。
戸惑いと怯えを隠せていない少年少女と大人達の前に立ち、言い放った。
「よくぞ参られた、異世界の勇者様方よ。この王国を、魔物の手からお救い下されぃ」
じーさんは、微妙に上から目線だった。
じーさんは、問答無用で転移者達を王の御前へと連れて行った。
……こちらの意のままになる子供達だけではなかったのは正直予定外だったが、まぁ、良しとしよう。
そのあたりは、王が采配するだろう……。
白ひげじーさん──魔術師長は、転移者達に利用価値があるか否か、しか考えていなかった。
「これまでに、何千何万という犠牲を払い、今回ようやく完璧に成功したのだ。
役に立ってもらわなければ……」
近衛兵の1人は思った。
王の御前だというのに、ぼーっとつっ立っている、異世界からの転移者達。
揃いの服を着ている子供達はともかく、大人どもは何なんだ?
礼儀というモノを知らんのか。
どこか値踏みする目で転移者達を見ている、多数の貴族ども。
王や宰相も、使えるかどうかを見ている。
萎縮したり反発したり、といった反応をする転移者達の中に、逆に貴族どもや王族を観察する目があった。
あくまでも冷静。
と、いうよりも冷徹。
そんな視線を向けられているとは思ってもいない王は。
「よくぞ参られた、勇者達よ」
王の威厳を最大限押し出して、言った。
視線だけ交わす大人達の1人──1人だけ、どこか異質な雰囲気の、おっさんが大声で問う。
「ここは、どこなんだ? お前達は、一体誰だ? おれを──おれ達を、どうするつもりだ?」
王に対する言葉ではない、と、近衛兵が動こうとするのを、王自らが止めた。
「大事ない。不安に思うのも当然の事。
……勇者達よ。異世界より参られた、勇者達よ」
王は、転移者達を1人ひとり見極めるように視線を動かしながら、言った。
「今現在、我が王国は、魔物どもの国に攻められておる。そなた達は、辛い状況の我が王国に助力する為に、この地に召喚されて来たのだ。当然、助力してくれるのであろう? ……王国が勝利した暁には、報酬は思いのままだ。金でも地位でも名誉でも……な」
王は、ニヤリ、と笑った後、傍らに居た中年と少年少女、白ひげじーさんを示し。
「詳しくは、我が王子王女と宰相、そなた達を召喚した魔術師長に聞くが良い。では、な」
王は、自分が言いたい事だけ自分に都合の良いように話すと、さっさと退出した。
えええええーー………。
大事なところは丸投げして、とっとと退出して行く王に、転移者の何人かはドン引きしている。
が。
どこにでも、自分に都合良く判断するヤカラは居るモノで。
「……オレ達は勇者、だって? ……なんでも願いを叶えてくれるって?」
30代後半の担任教師と、50代のバス運転手が欲望のままに、妙な方向へとつっ走って行こうとしていた。
副担任の、教師2年目の若いというより幼い感じの女性教師とバスガイドのお姉さんは、2人して、ただただ涙ぐんでいる。
……ぶっちゃけ、使えない。
最初に声を上げたおっさん──どう見ても、40過ぎのおっさんですが何か?って感じだが。
なんとか情報を取ろうと白ひげじーさんな魔術師長と話そうとしてる。
……大人の中で、当てにできそうなのが、見ず知らずのおっさんだけって……。
どう受け止めればいいんだろうな……。
自分達の担任と副担任を眺めた後。
とりあえず、生徒は生徒で一塊になってみた。
この場に居る生徒は23人。
とにかくクラス委員と、どこのクラスにも1人は居る人気者のグループが中心になって、さわさわ……と話し合い。
が。
ちょっとだけ、話し合いの輪から外れた紅林真言と進藤和樹は。
「……なぁ、真言よ~。……オレら、どーなるのかなぁ……」
「あ~……。とりあえず、詳しく情報把握してからにしないか? そこでなんとなくヒマを持てあまし気味な王族と宰相? が、何か話したそうにこっちを見てるぞ。……なぁ、委員長よ?」
真言は、委員長の意識を地元民へと向けさせた。
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