目標:撤収

庭にハニワ

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既に番外編じゃあない。49

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恋バナで貫徹した。

勇者達は、さすがにその日は使いモノにならなかった。
高校3年。
受験生と言っても、異世界転移させられたのは5月下旬だ。
とにかく徹夜で受験勉強……なんて、まだまだ先の話だ。
つまり。
めっちゃ眠いんだな、コレが。
特に何ともなく、普通に行動していたのは、極一部の逸般人──真言と冬至くらいのモノだ。

ムダに元気な2人は。
鍛え方が違う騎士達と共に、冬至は周辺の見回りに。
真言は、何度も狩りに行っては確実に獲物を持って、夜営地に戻ってきた。
小型のモノでは鳥やウサギ。
大型になると、鹿やらイノシシやら……。
そして、獲物を本日の調理担当の騎士達が、サクサクと料理していく。

……給食当番だな。



結局のところ。
勇者達は、その日1日何もしないで、ボンヤリと過ごした。
何か、張りつめていたモノがプツン、と切れたかのようだ。

翌日、一行は王城へと再出発。
勇者達は、なんとなく大人しいままだ。
厨二教師清水も、大人しく先頭に立っている。

やらかし4人衆のうち、王女狙いだった清水と真言狙いで夜這い仕掛けた女騎士は。
思うところがあったのか、自ら率先して隊列の最前列に出るようになっていた。
そして、2人は妙に仲良しになっていたりする。
あとの2人。
王子狙いだった2人の女子勇者はダウンした。
日中の、デカマキリ襲撃からのホラーハウス、そして恋バナ&貫徹は、かなり……結構精神的にキたようだ。
やらかし故の罰則、という意味での隊列の最前列=最前線は、たかが女子高生にはよっぽど辛かったようだ。

自業自得だけどな。



で。
行きと違って、帰りはノロノロと、意気消沈した感じでようやく王城に戻ってきた勇者達は。
ほぼ全員がダウンした。
肉体的にも精神的にもクタクタだった。

騎士達は、2・3日の休日の後、日常業務に戻る事に。
そして団長は。

「……以上が、『嘆きの森』に現れた首無し騎士について、過去見の勇者がそのメダルより読み取った事です」

王への報告を行っていた。

「むぅ……つまり」

王は、眉間にくっきりとシワを刻み込みながら言った。

「王族が不用意に『嘆きの森』に近づき、更に一夜を明かす……などという我が儘を実行したが故に、首無し騎士が復活。勇者達を襲撃。それも、未だまつろわぬ者どもを引き連れて……。そういう事か?」
「はっ。……閣下が仰るには、王城等には最低1人は語り部のような者が居る筈だ、と。表沙汰には出来ない、王家の醜聞も全て熟知してる者が。確認してみれば良い、とも……」
「……書庫の管理者かの」

魔術師長が、ヒゲを撫でつけながら言った。

「あの者の一族は確か……代々書庫に棲みついて、建国以来の王国及び王家に起こった様々な出来事を記憶しておる筈じゃ。五百年前の王家の醜聞も、詳細に把握しておる筈じゃろうて」

報告を受けた王、傍らに控えていた宰相に近衛騎士団団長、魔術師長に、報告した第二騎士団団長は。
5人揃って深く、深ぁ~くため息をついた。



「……つまり、色ボケた王子と王女のせいで、大人しくなっていた首無し騎士が復活! 王家憎しや、殺すべし! ってなって、そこに居た俺らが襲われた、と。……よーするに、俺らはとばっちり食らった、と」

王城の大書庫。
真言と和樹、冬至、尚人に悟の5人は、大書庫の管理者──っつか、番人の婆さまと話し込んでいた。
真言が持ち込んだ、茶と菓子は、とってもお役立ちだった……。
婆さまでも女だな。
美味い茶と菓子、それと若い──婆さまから見れば、冬至も若者だ。おっさんだけどな──男達と仲良くお茶会、なんて、楽しい以外のナニモノでもない。
しかも、稀に見る美少年からのお誘いだ。
断る理由が見つからないよな。

婆さまは、寿命が伸びる気持ちで、自分の話を熱心に聞く若者達(おっさん含む)を、嬉しげに眺めていた。











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