目標:撤収

庭にハニワ

文字の大きさ
373 / 374

既に番外編じゃあない。80

しおりを挟む
絶賛入院中の15人は、順調に回復中。
ちょっと医者の予想以上にさくさくと回復していったのは、異世界で基礎生命力的なモノが向上していた為かも知れない。
伊達に勇者じゃなかったね。
まぁ、悪いコトでは無い……かな?

首をひねる医療関係者達だったが、そんな些末なコトはとりあえずスルーして。
真言達は、退院後のコトを考えて行動を始めた。

「……俺ら、受験生じゃん!?」

空白の3ヶ月。
体感的には、半年のハンデはなかなか大きい。
とにかく、家族に教科書やら参考書やら持ってきてもらって、集団勉強会なんか始めてみたりして。
友人知人を講師役にお招きして、あーだこーだと脳ミソフル回転させる日々……。



さすがに。
俺達異世界に拉致られてましたー、なんて、脳の精密検査されそーなコトは誰1人として口に出すコトは無く。
気が付けば、夏真っ盛り。
一学期丸々学校行って無いじゃん、出席日数とかどーなってんだよ、と。
なんだか考えると怖いコトになってる学生組13人。
1人、また1人と退院していく。
外傷的なモノは、空白の3ヶ月の内に無事? 完治してて、覚醒後は主にリハビリなんかやってたワケだが。
まぁ、若いし。
元勇者(笑)だし。
普通に身体が回復したんなら、とっとと退院させられるのは、当然だよな。



家庭内でなかなかの修羅場が繰り広げられてる、バス運転手加藤さんは、ちゃんと嫁と話し合うそーだよ。
……他人様の家庭の事情までは知らん、と、当たり障りのない上っ面の話だけ聞きかじって、頑張れよ~(何を)と、退院して行くのを見送った真言達。
ひょっとしたら必要になるかも……と、弁護士(真言のバイト先。紅林父の友人)の名刺をもらって、ナニかの覚悟を完了したよーな顔で退院していった加藤だった。

冬至のところは、覚醒前から毎日家族が面会にやって来ていたそーな。

──これが、15の純情貫いた夫婦か~。
どー見ても、奥さん良いトコのお嬢様ってカンジじゃね?
不良とお嬢様のカップルか。
すげーな、初めて見た~。
ドラマみたいだな?
どーやって出会ったんだか。
……つか、今もラブラブかよ……。

と、いい年してイチャっとしてる佐伯夫妻を、生温かく見守る学生組だ。

「ぼく達も、あんな風に仲良しでいようね」
「そうね~」

異世界でカップル成立したヤツらが、さりげなくイチャイチャしていた。

そんな、ある意味吊り橋効果で出来たっポいカップルを、ものすごい目で見ている男子生徒が1人──。

リア充め……爆発四散しろ……!

異世界から戻ってきてみたら、彼女は自分とのお付き合いをさっくりと解消して、新たな恋に突き進んでいる……。
え?
この半年……じゃないか、3ヶ月のうちに、ナニがあったし?
と、茫然自失な帰還組の1人を、野郎どもみんなで慰めてみたり。

……事故って入院した被害者をあっさり切り捨てた女なんか止めとけー。

って、な。



さて。
異世界から戻って、さすがに職能は使えなくなっていたが、基礎生命力的なモノの向上、みたいに微妙に勇者(笑)の名残的なモノが、ね。
悟のように、必要以上に感が良くなっていたり。
尚人のように、記憶力が爆上がりしていたり。
地味に恩恵は残っているらしい。
まぁ、ね。
異世界に残った17人が、こっちじゃ全員お亡くなりになってるコトを考えると。

「生きてるだけでもありがたいのに、ちょっとオマケが付いたカモ?」

…うん。
そーだね?



そして。
千里は、地味に落ち込んでいた。

「……進藤君の彼女って、立花先輩だった。……ナニをどーしても、どーにもならないじゃないの……!」

ナニかする気だったのか?
少なくとも、しばらくは様子を見るつもりだったよーだが。

春香には、千里を慰める言葉もなかった。
春香は春香で。

「紅林君のトコにお見舞いに来てた、美形集団って、ナニ? その中にスッゴい美少女が居て、紅林君と名前で呼びあってたよ。……何なの、あんな顔面偏差値の高い集団に、割り込みとか出来ないわよ」

ずーん、と、落ち込んだ2人だった。




真言と和樹も退院が決定して。
それぞれの家族が迎えに来た。

真言は和樹に、じゃ、また後でな~……と言葉を掛けて。
迎えに来た父と共に、とりあえず家に戻──る前に。

ちょっと今回の召喚について、具体的かつ詳細に話してもらおうか?

紅林親子は、天堂の事務所に呼び出された。
さすがに精密機械が山ほどある病棟内で、気楽に術式をポンポン行使するのもどーか? と、組織関係者が自粛した結果。
詳しくは、当事者の真言の退院後に……と、天堂以下、組織の連中がワキワキして待ち受けている。

……まぁ、どーやら心配かけたみたいだし。

と、諦めて連行されて行く真言。
ちょっと虚ろな目で、どこか遠くを眺めている。
父に、ちょっと乱暴に、頭をわしわしと撫で回されて天堂の事務所に向かいつつ、真言は。

「撤収したい……」

おウチに帰りつくまでが、遠足──外出です。
真言が家に帰り着くまでには、まだまだ時間がかかりそうだ。

なんか、ガンバれ。
いろんな意味で、な。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

貴方のために

豆狸
ファンタジー
悔やんでいても仕方がありません。新米商人に失敗はつきものです。 後はどれだけ損をせずに、不良債権を切り捨てられるかなのです。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

【完結】ゲーム開始は自由の時! 乙女ゲーム? いいえ。ここは農業系ゲームの世界ですよ?

キーノ
ファンタジー
 私はゲームの世界に転生したようです。主人公なのですが、前世の記憶が戻ったら、なんという不遇な状況。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか。  ある日、我が家に勝手に住み着いた平民の少女が私に罵声を浴びせて来ました。乙女ゲーム? ヒロイン? 訳が解りません。ここはファーミングゲームの世界ですよ?  自称妹の事は無視していたら、今度は食事に毒を盛られる始末。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか?  私はどんな辛いことも頑張って乗り越えて、ゲーム開始を楽しみにいたしますわ! ※紹介文と本編は微妙に違います。 完結いたしました。 感想うけつけています。 4月4日、誤字修正しました。

処理中です...