目標:撤収

庭にハニワ

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メイド(英国風)とたらしと腐女子。

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玉座の間から移動して。
客間?的な所にいます。
1人一部屋あてがわれたけど、なんとなく一室に集まってる俺ら4人。
これからのこと、考えなきゃな。

お茶の用意をしているメイドさんがいるので、まだ皆黙っている。
んじゃ、部屋の物色でもーー。

ホテルのスイートルームって、こんな感じかな?行ったことないけどスイートルーム。
ムダに広いリビング?ムダに広いベッドルーム。おお、ベッドも広い。
ん?バスルームは無いのか?
分からないことは聞こう。

「すみません、ちょっと質問が」
「はい、何でございましょう?」

テキパキと4人分の茶をサーブしているメイドさん。萌え系じゃなく、古き良きイギリス風である。

「お風呂って、ないんですか?」

其処にいた全員がメイドさんを見た。
思いのほか強い視線に一瞬たじろぐメイドさん。
が、すぐに立て直す。
おお、さすがプロ。

「主に生活魔法の《清潔》で済ませます。手間要らずですし。あとお手洗いはーー」

トイレは公衆トイレ的なカンジの…いわゆるボットンだった。
この時点でこの世界には居られない、と本気で思った。

「和樹…これも異世界テンプレか?」
「そっち方面何とかしよーと思わなかったんかね、今までの勇者達は…」
和樹はげんなりしている。…今までの勇者が何処から来たか、分かんないだろーが。
副会長も嫌そうだ。顔が歪んでる。

会長がメイドさんに言った。

「その生活魔法というの、僕達に教えてくれませんか?」
「え?」

戸惑うメイドさんに、にっこりと笑いかけた。

「あなたに、教えて欲しいんです」

メイドさん、一瞬で顔が真っ赤になった。

「…ね?」

会長、ダメ押し。

メイドさんに近づいて、そっと手を取り、至近距離で微笑んだ。
メイドさん、耳まで赤くしてちょっとどもりながら、

「わ…わたしでよろしければ…」
「ありがとう」

会長、メイドさんの手をきゅ、と握った。
…メイドさん、そのまま昇天しそーなんですケド…。

「たらしか」
「たらしだな」
「さずが会長だわ」



とりあえず、メイドさんが落ち着くのを待って、生活魔法のレクチャー。

「皆様…習得が早いですね…」

メイドさんもびっくり、の早さだったらしい。
…召喚時に何かされてたか?いきなりの意思疎通可、だったしな。試してないけど文字も読めんじゃないか?

そしてこのあと全員、覚えたての生活魔法《清潔》で全身綺麗にした。
…でもやっぱり風呂に入りたい。

メイドさんは会長のお礼のハグで卒倒しそうな所、何とか気力で持ち直し、フラフラになりながら部屋を出ていった。
何だかんだであのメイドさんが覚えてた魔法、有りったけ全部教わってしまった。結構な時間掛かったから、上司に怒られなきゃいいけどな、あのメイドさん。
…後ろ姿幸せそうだったからいいか。もれなく花が飛んでいる、てヤツだ。



さて。
一休みして落ち着いた所で、さっきのメイドさんとは違うメイドさんがやってきた。
さっきのメイドさんは茶髪だったけど、今度の人は金髪だ。

「お食事のご用意が出来ました。皆様、こちらでお召し上がりになられますか?」

はーい。運んで下さーい。

全員頷いた。
いらん所でいらん奴らに絡まれたくないからな。
…隔離されている。のかも知れないが、その方が気楽っちゃ気楽だな。

金髪のメイドさんが、メイド3人引き連れてワゴンを押しながらやってきた。
リビング的なところにテーブルセッティングされていく。
…風呂は無いのにワゴンはあるんだ…。
それは置いといて。
サーブされたのは、オードブル。
ひょっとして、1人に1人ずつメイドさんが付いて、コース料理を進めていくカンジ?
…まとめてドーン、じゃダメですかね…?

略式コースでした。
オードブルにメイン、デザートにコーヒー。
コーヒーあるんだ風呂無いのに。
…我ながらシツコイか…。
正直物足んないんだが。何度もパンのおかわりしちゃったぜ。
副会長、メイドさん達びっくり。

「紅林君ーー見たカンジと違ってものすごーく食べるのね…」

会長、半笑いしている。

「コイツすっげー燃費悪いんスよ。めっちゃ食うんです。見た目に騙されないで下さい。パッと見からは想像出来ないくらい食いますよ」

もぐ。
和樹の言うコトは事実ですよ~副会長。そのパン食わないんなら、くれませんか?

副会長、食べきれずに残していたパンをくれた。ラッキー♪

「細いのに…。こんなに華奢なのに…」
「脱いだらスゴいのはさっき見たでしょ?会長がこいつ剥いた時」

あ、バカ。
思い出させるんじゃない。

「…くふふふふふ…」

ほらー。

「…立花君のスイッチ、入っちゃったねぇ…」

会長、1人優雅に食後のコーヒーを嗜んでいらっしゃる。
副会長がこーなった原因、つか遠因の何割かはアンタですからね。
そしてメイドさんの視線がイタい。
これは俺の食い意地に対するモノなのか、脱げ!と言ってるのか…。
…心の平穏の為に、食い意地の方だと思っておこう。
もぐ。







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