目標:撤収

庭にハニワ

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自己中の結果と夜中のお散歩。

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や~…辻のおじさんが最後に全部ぶちまけていったそうです。
元々会社の方でイギリス転勤の話があったけど、おばさんと恵美ちゃんがめっちゃ嫌がったって。
理由がまたしょーもなくて。
おばさんは英語がダメだから。恵美ちゃんは…お前だよ、マコト。お前と離れたくないだって。
…そう露骨に嫌な顔すんなよ。今恵美ちゃん居ないだろ?
それで、まあ最初からギスギスした家庭だったけど、色々揉めてた所に恵美ちゃんの障害未遂事件だ。20年近く溜まりに溜まってたモノが、爆発したんだろーな。
弁護士さんに紹介してもらった離婚弁護士に相談して、サクッと離婚してイギリス行ったってさ。慰謝料でも養育費でも何でも払うから、別れてくれって。これ以上、おれの人生に寄生するな、だってさ。
普段おとなしい人がキレると怖いってヤツだよ、うん。
で、おばさんの親は、それまで娘の言うこと鵜呑みにしてたけど、どうやら違うらしい、とようやく気付いておじさんの方の味方に付いて、離婚。おばさんは実家行き。恵美ちゃんは…山奥の全寮制の共学に転校ーー共学ってあたりに作為を感じるよな。
この騒ぎでウチにもちょっとだけ恩恵があってさ。一番下の姉ちゃんの肉食度合いが下がった。自分の事だけ考えてガツガツ行ったら、将来こーなるぞ…って見本になった、と。…上の2人はダメダメだけどな。



話をする方も聞く方もぐったりとする話が終わり、もう今日は更なる話し合いはムリ、と言うことで。
会長が言った。
「…今日はもう寝ようか…」
「そうですね…どうします?各部屋に戻ります?」
「…あの色ボケ姫が、何仕掛けてくるか分からないんだよねー…。僕としては、みんな一部屋に纏まっている方が安全だと思うよ。ホラ、この部屋ムダに広いし」
和樹も、副会長にも依存はない、と言うことで。

「あ、俺床でいいですよー」
「んじゃオレもー」
「ベッドは立花君が使えば良いよ」
「えー…」
「会長、ソファ使って下さい」

で、さっさと寝た。



と、見せかけてーー。

和樹と副会長が寝入ったことを確認して。

『会長、会長』

ソファに横になってる会長の肩に触れて、テレパス。

『…ん?』
『ちょっと散歩してきます。いろいろモロモロ探ってきます』
『…ついでに面白そうな本とか道具とか探してきてよ。さっき教わった魔法は、もうモノにしてるでしょ?』
『…あのおかげで未だ未発動だった術式が、いくつか解放されましたからOKです』

…俺、大泥棒になれるカモ。

『和樹と副会長のこと、お願いしますね』
『僕、基本的に物理特化だけど、結界くらいは扱えるから大丈夫。君も油断しないようにね』
『はーい』

んじゃ行ってきまーす。



この世界、元の世界よりも魔力の元になるーー魔素が強いらしい。おかげで動きやすいったらありゃしない。
あれだよ。
死海ってあるよな。
塩分濃度が尋常じゃなくて、中に入ると浮き輪も無いのにプカプカ浮かぶって…。
あんな感じに魔素の濃度が高いっポい。
この世界のヤツらがたいした才能無くても、簡単に魔法使えるのはその為らしい。風呂無くて、みーんな《清潔》で済ませるなんて当たり前。些細な事にも魔法を使う。
ぶっちゃけ科学の代わりに魔法があって、でも文明レベルはさほど高くない。15~18世紀の間を行ったり来たりしてる感じだ。



さて。
俺は今、この城の中でも魔力濃度の高い所を重点的に探っている。濃度の一番高い所に侵入してみようかと。
何か良いモノあるかなー♪
…って、完全にドロボウの発想だな。
…慰謝料先払いで貰うってことにしとこう。俺ら犯罪被害者。

などと考えつつさまよっていると、何の変哲もない廊下の壁に妙な所を見つけた。
パッと見分からないように、何度も何度も隠ぺいの魔法かけてある。
…ここまで厳重だと、何かあるぜーって言ってるよーなモンだよな…。意味もなくでっかい絵とか掛けてあるし。

行くしかないよな?

とりあえず、自分込みで絵の周囲に結界。
俺からしたら、本当に些細な量の魔素を絵…つか、壁に注ぐと、銀色の光が同心円と幾何学模様を描き出しーー転移法陣が現れた。
俺らがあの暗闇から跳ばされたのとは、また違った術式らしいな。色も形も違うし。
さて。
同じ所に戻れるように《しるし》を付けて、手を伸ばした。
とぷり、と水に手を入れるような感覚で、壁に手が入る。
そのまま中へ突入ーー。



ムダに広い、一般的な体育館くらいの広さの部屋に、本棚がズラーッと並んでいる。見た感じ、奥に行けば行くほどヤバめな気配が放つ本が…。魔書ってヤツかな。
ってことは、ここは秘密の図書室か。
ゆっくりと奥へ進みながら考える。
うーん…出来ることならここの本、全部持っていきたいな~。嫌がらせに。物理的にムリだけど。
インベントリとかアイテムボックスとか無限倉庫とか使えりゃいいけど、さすがにそんな魔法は知らないな~。

『何じゃ知らんのか。ならばこのじじいがなんとかしてやろうかの』

あ、すっげー助かるなそれ。
ありがたい、ありがたい。

『ほっほっほっ。なんとかする前に礼を言われるとは思わなんだぞ』

あー、そこら辺日本人だからしょーがないよなー。

『日本、とな?聞いたことのない国の名前じゃのー』

あ、そーなの?日本ってのはーー。
…って、俺さっきから誰と話してんの?
我に返ってあたりをよーく見渡すと、白い蛇がいた。
その蛇は、楽しそーに尻尾を振り、舌をペロペロと出し入れしてた。

『わしじゃよわし。お前さんの目の前の白蛇じゃよ』

えー。
マジかー。

『マジじゃ』






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