目標:撤収

庭にハニワ

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予定は未定?

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さて。買い出しも終わり、宿でひと息ついたところで。
一般人組が戻って来るまでは、まだまだかかるだろう。
基本的に、女の買い物はムダに長い。
なんで???って理由で長い。
服飾小物類なんて言ったら、特に長引くだろう。
…全然関係ないモノに引っかかってたり、あっちこっちグルグル歩き廻ったり…。
うん。ワガママな姉達に振りまわされ慣れているスズが、適任だったわ。リッカさんのお供。

では、この隙に……。

「銀竜」
「御前に」

胸に右手を当て、頭を下げた銀竜が、音もなく現れた。
…だから、お前はどこの執事だ?

「報告を」
「御意」

ミヤさんは、のん気に茶の支度を始めた。
…なんか楽しそーだな、おい。

王城から送ってくれた御者の人(諜報員)は、まずは王に、次いでやっぱり色ボケ姫にも報告したそうだ。王は頷いたきりで何の指示も出さなかったが、色ボケ姫は。

「…自分が寝トボケてる間に、俺らがさくさく出てったからってさ~…」

それが、そうするのが当然、とばかりに暗殺指令を出したそうだ。もちろん、ミヤさん以外。
ミヤさんは傷付けずに連れて来い、だってさ。

「なんだろう…意地になってるとしか、思えないんだけど」

ミヤさんもうんざりしてる。
状況判断も出来ない王族に、存在意義ってあるのかね?

「王は手出し無用、というスタンスです。王女殿下の行動は、軽く見積もって不敬罪、大ざっぱに言うと反逆罪にあたるのか、と」

銀竜は淡々と報告を続ける。

「襲撃予定は国境の街付近で行われる予定だそうで。よほど自信があるのでしょうか。既に勝利宣言してましたよ、あの王女殿下。自分では何もして無いというのに」

なんとなくシラケた顔で銀竜はのたまった。
…あの色ボケ姫に、さんざんムチャ振りされてたのか諜報機関…。
国の機関を私物化していい訳ないよな?いくら王族だからって、さ?

「王族という立場を良いことに、やりたい放題でしたよ。…そろそろそんなことも、出来なくなるでしょうけれど」
「どーゆーことかな?」

ミヤさんの問いに、銀竜は。

「王女殿下本人も、うすうす気付いているのでしょうが。王太子殿下の為の儀式ーー異世界召喚の儀が終了したので、他国との親睦の為に…」
「政略結婚か」

だからミヤさんGetに必死になってるってことか?
王族のクセに、愛の無い結婚は嫌だ、とかぬかすわけ?
お前自身が相手の気持ちなんか、一切お構いなしのクセに?
……何様?

「お姫サマでしょ?色ボケって付くけど、さ」

ミヤさん的には迷惑以外の何物でもない、らしい。
そりゃそーだ。自分のことしか考えない、考えられない自己中とは付き合ってらんない。
…しかしさぁ…。

「あの色ボケ姫と結婚しようって勇者は、どんなヤツだ?」

ちょっと興味わいたわ。
銀竜、更に淡々と。

「西の大国、イルティアルの王弟殿下です」



なんでも、王弟殿下は40歳。好色で多情な漁色家。手を付けた女の数は星の数……。
よくやらかさなかったな。
1人か2人かそれ以上、子供が出来たーって、騒ぎ立てるヤカラが出てくるハズなのにさ。

「これは公にはされていない事ですが…」

それを知ってるお前はなんだ?
…ぶっちゃけスパイか。
…忍者だったか…?
どっちでも同じか。

で。
王弟殿下は国を割ることの無いよう、今のイルティアル王が王に即位した時に、自分の血を引く子供は作らないと誓約したそうだ。次いで魔法でもって確実に、子供が出来ないカラダにしたんだと。
男性機能はそのまま残して、王家に群がる貴族共のハニートラップを全て一身に受けたんだと。
イルティアル王が即位して26年。王弟殿下に子供が出来た事は、無いそうだ。
女の方がどっかヨソで他の男と子供作っておきながら、厚顔無恥に王弟殿下の子供だ、と言い張る場面も多々あったけど、王弟殿下は。
女が企みを持って自分に近づいて来た時点で、子飼いの密偵共にその女自身、背後関係etc.ありったけ全部、重箱のスミをつつくよーに調べ上げさせるんだと。

「…じゅーばこ…?」

重箱は置いとけ、銀竜。

イルティアル王家には、代々伝わる魔法具…対象者の過去の行動、言動全て読み取り写し出すって鏡があって。どーしよーもないほどに状況が膠着した場合、対象者をその鏡の前に立たせるんだと。
大概のヤツはめっちゃ嫌がるわな。まあその時点でアウト。
思い当たることが何一つないのならば、鏡の前に立ったところで何の問題もないはずだ、と。

…どこの照魔鏡だ…。


「つまり、色ボケ姫はそんな王弟殿下の元に嫁入りする、と?」

今、ミヤさんは優雅にティータイムと洒落込んでらっしゃる。俺と銀竜にも茶が供された。

銀竜は、茶を一口。喉を湿らせてから話を続ける。

「子供が産まれるまで、王女殿下に自由は与えられないそうです」

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