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お頭、ずりぃ。
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ミヤ様が、主様に言われた。
『銀竜のこと、心配なら心配って言えばいいのに。国という後ろ盾を失った暗部の人間、しかも一つの組織を纏め上げてた人物なんて、周囲がほっとかないでしょ?どうしても殺したい奴らと、何としても手に入れたいって奴らと、この先幾らでも湧いてくるよ。マクリールの連中が僕らに仕掛けたように、魔法でもって服従させて隷属させて…まあアイツらは見事に失敗したけど…似たような事考える奴って、掃いて捨てるほどいるでしょ?その魔法具が役に立つんなら、使うべきだよ。そう思ったから、君も自分の魔法具の複製なんか作ったんでしょ?』
主様は、
『…うっさいですよ』
そう言って、顔を背けられた。
耳朶が、赤く染まっていらした。
なんとも愛らしい表情を浮かべていた主様を思い出して、胸の奥に暖かいモノを感じていると、覚えのある気配が近寄って来るのを感じた。
己の気配を消す。
唐突に消えた目標に、微かに慌てる気配。
ソイツの背後に立ち、首筋にナイフを当てた。
……っ!
息を呑む気配。
目的を聞き出さなければ。
主様に危害を加えるつもりならば…。
「お頭!」
…元部下の1人か。何の用だ?
またあの色ボケ姫に命じられて来たのか。
「色ボケ姫って…あ、なんかしっくり来るっスね、それ」
両の手を広げ、敵対の意志は無い、と示しながら、元部下は変なところに納得していた。
では何の為に来たのか?おれを始末する為か。
「やー、それはムリっしょ。集団で仕掛けてもムリなのに、今、オレ1人っきりっスよ?返り討ちなんてかわいいモンじゃ済みませんって」
上のヤツらは分かっちゃいないっスけどね~。
そう言うと、元部下はちょっと失礼、と身体の向きを変えようと身じろぎした。
妙なことを仕掛けようとも、主様より賜った魔法具が、全て反射するだろう。
…主様はこのような事態を見越して…。
元部下を自由にした。
ただし、何時でもその命は刈り取れるようにして。
「じゃあ改めて。お久し振りっス、お頭。お頭が姿消した後、どーなってるかお知らせしときます」
あの勇者様方と話し合うって名目で、実際のところ自分らの思うように動かないのならば、武力での脅迫からの魅了・服従・隷属化ってロクでもない魔法使って、自分らの好きにしよーと目論んでたワケで。
あの背の高い、一番大人っポいリーダー格の勇者様は色ボケ姫が、その他の勇者様方にはいろんな連中が目ぇ付けて、モノにしよーとしてたらしいっスよ。
おとなしくさせて、1人1人バラバラにすりゃあカンタンに好きに出来る、と思ってたみたいで。
あの連中、オレらとか魔法師団とか近衛とか…貴族の連中も、私兵なんか連れ込んで、謁見の間の、ありとあらゆる所から勇者様方を狙ってたんスよ。魔法はもちろん、それ系の魔法具やら薬やら使って…。
まあ、見事に失敗したワケで。
その場にいたオレら全員、王を含めてみ~んな勇者様方に魅了されて服従されて隷属化しちゃったんスよ。
状態異常無効、とかの魔法具持ってたハズのヤツらも、そりゃー見事に。
勇者様方のお言葉は絶対っス。
今でもそうっス。
その場に居なかった王太子とか、色ボケ姫とかはそんな状態異常にゃなってねぇスけどね。
…王がね。
勇者様方を追うことは、まかりならん。
…って。
王太子は目的の聖女様手に入れたし、王の言葉だし素直に聞いてましたけどね~…。
色ボケ姫はそうじゃなかった。
あのリーダー格の勇者様が、どうしても欲しい、って…。
いつもなら、言いなりになってたアンタは呼んでも来ないし。
イライラが溜まってたんスかね~。
オレらに勇者討伐(リーダー格は連行)って命じやがった。
…王の言葉を無視したんだ。
これって立派な不敬罪…や、反逆罪になんのかな?
そこまで考えたりしちゃいなさそーだけど。
正直、勇者様方に隷属したオレらみたいなモンは、その崇拝対象の勇者様方が国を出てっちゃったモンだから、軽い無気力状態になってて使いモンにならんってことで。まっさらな連中が勇者様方の追跡に入ったんスよ。
で、頃合いを見て襲撃。
ものの見事に返り討ち、と。
死体一つも残さない、って、あれどーやったんスかね…。
…はい。遠見専門の魔法使いが見てたんスよ。
ただ見ることしか出来ない魔法っスけど、こーゆー時は使えるっスね。
…まあ、その魔法使い、魔素使い果たして今寝込んでますけどね。
遠見の魔法って、使い勝手悪いスからねー。
半年くらい使いモンにならないっスよ、アイツ。
ちなみにですけど、これこれこーゆー状況でした、って王に報告した時の第一声が、
『なにそれうらやま…』
でしたよ。
お頭が勇者様方と一緒に居る、ってのがものすごーく羨ましい、と。
正直オレも羨ましいです。
お頭ずりぃっスよ。
何であの方々と一緒にいられるんですか?
…あの方々、パシりはいらないスかね?
オレなんでもするんスけど…。
『銀竜のこと、心配なら心配って言えばいいのに。国という後ろ盾を失った暗部の人間、しかも一つの組織を纏め上げてた人物なんて、周囲がほっとかないでしょ?どうしても殺したい奴らと、何としても手に入れたいって奴らと、この先幾らでも湧いてくるよ。マクリールの連中が僕らに仕掛けたように、魔法でもって服従させて隷属させて…まあアイツらは見事に失敗したけど…似たような事考える奴って、掃いて捨てるほどいるでしょ?その魔法具が役に立つんなら、使うべきだよ。そう思ったから、君も自分の魔法具の複製なんか作ったんでしょ?』
主様は、
『…うっさいですよ』
そう言って、顔を背けられた。
耳朶が、赤く染まっていらした。
なんとも愛らしい表情を浮かべていた主様を思い出して、胸の奥に暖かいモノを感じていると、覚えのある気配が近寄って来るのを感じた。
己の気配を消す。
唐突に消えた目標に、微かに慌てる気配。
ソイツの背後に立ち、首筋にナイフを当てた。
……っ!
息を呑む気配。
目的を聞き出さなければ。
主様に危害を加えるつもりならば…。
「お頭!」
…元部下の1人か。何の用だ?
またあの色ボケ姫に命じられて来たのか。
「色ボケ姫って…あ、なんかしっくり来るっスね、それ」
両の手を広げ、敵対の意志は無い、と示しながら、元部下は変なところに納得していた。
では何の為に来たのか?おれを始末する為か。
「やー、それはムリっしょ。集団で仕掛けてもムリなのに、今、オレ1人っきりっスよ?返り討ちなんてかわいいモンじゃ済みませんって」
上のヤツらは分かっちゃいないっスけどね~。
そう言うと、元部下はちょっと失礼、と身体の向きを変えようと身じろぎした。
妙なことを仕掛けようとも、主様より賜った魔法具が、全て反射するだろう。
…主様はこのような事態を見越して…。
元部下を自由にした。
ただし、何時でもその命は刈り取れるようにして。
「じゃあ改めて。お久し振りっス、お頭。お頭が姿消した後、どーなってるかお知らせしときます」
あの勇者様方と話し合うって名目で、実際のところ自分らの思うように動かないのならば、武力での脅迫からの魅了・服従・隷属化ってロクでもない魔法使って、自分らの好きにしよーと目論んでたワケで。
あの背の高い、一番大人っポいリーダー格の勇者様は色ボケ姫が、その他の勇者様方にはいろんな連中が目ぇ付けて、モノにしよーとしてたらしいっスよ。
おとなしくさせて、1人1人バラバラにすりゃあカンタンに好きに出来る、と思ってたみたいで。
あの連中、オレらとか魔法師団とか近衛とか…貴族の連中も、私兵なんか連れ込んで、謁見の間の、ありとあらゆる所から勇者様方を狙ってたんスよ。魔法はもちろん、それ系の魔法具やら薬やら使って…。
まあ、見事に失敗したワケで。
その場にいたオレら全員、王を含めてみ~んな勇者様方に魅了されて服従されて隷属化しちゃったんスよ。
状態異常無効、とかの魔法具持ってたハズのヤツらも、そりゃー見事に。
勇者様方のお言葉は絶対っス。
今でもそうっス。
その場に居なかった王太子とか、色ボケ姫とかはそんな状態異常にゃなってねぇスけどね。
…王がね。
勇者様方を追うことは、まかりならん。
…って。
王太子は目的の聖女様手に入れたし、王の言葉だし素直に聞いてましたけどね~…。
色ボケ姫はそうじゃなかった。
あのリーダー格の勇者様が、どうしても欲しい、って…。
いつもなら、言いなりになってたアンタは呼んでも来ないし。
イライラが溜まってたんスかね~。
オレらに勇者討伐(リーダー格は連行)って命じやがった。
…王の言葉を無視したんだ。
これって立派な不敬罪…や、反逆罪になんのかな?
そこまで考えたりしちゃいなさそーだけど。
正直、勇者様方に隷属したオレらみたいなモンは、その崇拝対象の勇者様方が国を出てっちゃったモンだから、軽い無気力状態になってて使いモンにならんってことで。まっさらな連中が勇者様方の追跡に入ったんスよ。
で、頃合いを見て襲撃。
ものの見事に返り討ち、と。
死体一つも残さない、って、あれどーやったんスかね…。
…はい。遠見専門の魔法使いが見てたんスよ。
ただ見ることしか出来ない魔法っスけど、こーゆー時は使えるっスね。
…まあ、その魔法使い、魔素使い果たして今寝込んでますけどね。
遠見の魔法って、使い勝手悪いスからねー。
半年くらい使いモンにならないっスよ、アイツ。
ちなみにですけど、これこれこーゆー状況でした、って王に報告した時の第一声が、
『なにそれうらやま…』
でしたよ。
お頭が勇者様方と一緒に居る、ってのがものすごーく羨ましい、と。
正直オレも羨ましいです。
お頭ずりぃっスよ。
何であの方々と一緒にいられるんですか?
…あの方々、パシりはいらないスかね?
オレなんでもするんスけど…。
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