目標:撤収

庭にハニワ

文字の大きさ
38 / 374

どーしてもハズしてくる。

しおりを挟む
ギルドイコール役所ってことで。

登録だってアッサリしたもんだった。
名前と年齢と希望の部署ーー狩猟部、傭兵部、魔法・生産部ーーを申告するだけだった。ランク分けだって見習い・下級・中級・上級・特級って、ざっくりしてたし。
受付の人もすっげー事務的だったしさ。
…まあ実際あんなモンだろ。

アッサリと全員ーー銀竜除くーー登録が済んだ。そこそこ狩りが出来るってことで下級から、になった。首から下げる形の銅色のドックタグみたいなヤツを貰って終~了~、だった。
俺としちゃあ時間ムダにしないで済んで、良かったけどな?

狩猟部の所で今まで貯め込んでたウサギの皮とかキレイな鳥の羽根とか、思いっきりよく売っぱらった。
皮の状態が良かったので、予想以上に高く売れた、らしい。ギルド専属でやらないか?って勧誘されたし。
…断ったけどな。



そんなこんなで今はのんびり移動中。
…どっかそこそこの大きさで、そこそこ他人に無関心な町あたりを拠点にして、魔素集め…っつーか魔物狩り開始といきたいんだが、どーだろ?

などと考えながら、ガタゴトと揺られていたらば、不意に馬車が止まった。

「主様」

どーした、銀竜?

「この先で、馬車が野犬に襲われています」

あー。

「周囲に盗賊などの姿はありません。が、少々手こずっているようです」

どーする?

「どーする?って…助ける一択だろ?」

スズの言葉にリッカさんも頷いた。
ミヤさんは渋い顔だ。

「できれば関わり合いになりたくないんだけどね…」
「なんでーっ!良いコトあるかも知んないじゃないですか。美少女がいるとか、猫の人がいるとか!」

お前ね…。
さり気なく自分の願望を混ぜ込んだ発言するんじゃない。
美少女はともかく、猫の人って…。
そりゃ獣人の猫族の人か。
それともこんな所にいるワケがないヒトネコ…一般人にネコ耳ネコ尻尾が付いた、ぶっちゃけ高級娼館にしか居ない…のことか?

「モフモフの方に決まってんだろ!」

ソコはブレないんだ。
この猫好きめ。
てぇか銀竜よ。

「はい」

その野犬襲撃は、どのくらい先の話だ?

「え?」

スズとリッカさんがキョトンとした。
元諜報機関の視力ナメんなよ。
銀竜、結構遠くまで見渡せるぞ。
昼間なら尚のこと、な。

「この先しばらく行くと、林を突っ切る形で街道が通っています。その入り口付近ですね」

馬車から顔を出して、道の先を見るが…うん、分からん。
かなり、結構先だよな?

「…この距離だと僕らが現場に着く頃には、もう終わってるんじゃないかな?」
「…ミヤさん、狭いです」

反対側の窓から外見りゃいいのに、なんでわざわざ俺ん所来るかな。
リッカさんが、

「くふふ…」

あぁ、萌えている。
そんな俺らをスズが生温かい目で見ていた。



銀竜に、ゆっくりと馬車を進めてもらう。
距離的に、急いだところでムダ、な事が判明したからな。
それに、どうやら上手いこと逃げ出したようだし。
馬車が襲撃現場に近づくと、野犬共がひっくり返ってケイレンを起こしていた。目から耳から血を流して。
何かの薬物を使ったらしい。
そのまま放置…ってのもナンなんで、さっくりと処理して終わらせた。

「ここでもテンプレじゃない…」

スズががっかりしてた。
知らんがな。



街に到着。
門番やってる兵隊さんに、道端に野犬が流血しながらケイレンしていたので処理しておいた。
なんか薄気味悪いから、死骸は穴掘って埋めといた、的なことを報告しておいた。
後から難癖付けられたら嫌だからな。

ギルドの方にもミヤさんが報告した。
門番の兵隊さんにしたのと同じことを、ざっくりと。
ガキの説明よりも信用できるはず。
あの人保護者枠だからな。

銀竜は盗賊ギルドの方へ。情報を流す、と言って消えた。

…ちなみに馬車は俺の異次元倉庫の中で、馬はギルドに世話を頼んだ。こんなこともやってくれるギルドに感謝。総合ギルドってのはダテじゃなさそうだ。



やっぱり街の近くでオカシな薬を撒いたヤツがいたらしくて。今までにも妙なカンジで野垂れ死んでる動物が多数いたそうだ。
で、その野垂れ死んだヤツを食べて、獣が死亡するって…。
何その連鎖。怖いじゃん。
なんか、家庭内害虫Gの駆除用の毒餌みたいだな。1度で2度効くいなくなるってヤツ。
…そんな薬、禁止図書室にもレシピが無いそうだが…。

「どっかのイカれた錬金術師が実験しとるんだろうな」

グチっぽい口調でぶつくさ言ってるギルド生産部の部長。
その隣りで眉間にシワ寄せている魔法部長と、苦虫を噛み締めたような顔の狩猟部長。
ミヤさんの話を聞いた途端、即行出ていった傭兵部長は街の警護の兵隊さん達と、俺らが埋めた死骸の掘り出しに行っている。
ちなみにここのギルド長は、兵隊さん達の詰め所で部隊長と話し合いの真っ最中、だそうだ。

なかなかの大事になってしまった。

…やれやれ…。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

貴方のために

豆狸
ファンタジー
悔やんでいても仕方がありません。新米商人に失敗はつきものです。 後はどれだけ損をせずに、不良債権を切り捨てられるかなのです。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

【完結】ゲーム開始は自由の時! 乙女ゲーム? いいえ。ここは農業系ゲームの世界ですよ?

キーノ
ファンタジー
 私はゲームの世界に転生したようです。主人公なのですが、前世の記憶が戻ったら、なんという不遇な状況。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか。  ある日、我が家に勝手に住み着いた平民の少女が私に罵声を浴びせて来ました。乙女ゲーム? ヒロイン? 訳が解りません。ここはファーミングゲームの世界ですよ?  自称妹の事は無視していたら、今度は食事に毒を盛られる始末。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか?  私はどんな辛いことも頑張って乗り越えて、ゲーム開始を楽しみにいたしますわ! ※紹介文と本編は微妙に違います。 完結いたしました。 感想うけつけています。 4月4日、誤字修正しました。

処理中です...