目標:撤収

庭にハニワ

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…クモ?

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リッカさんの部屋に出たデカいらしいクモ。
扉の所で内部の気配を探る。
…うん、何かがカサカサ動いてる。
…クモって移動中に音たてたっけか?

カサカサカサ…キシャアっ…。

キシャアって…何!
クモって鳴かないよな!
この中にいるの何!
絶対クモじゃないよな!

うわー…貧乏くじ引いたー。

ま、しょうがない。
さっくりと、行くかー。

とりあえず、《索敵》。
…あー。
何だろう…。
どっかで見たことあるようなシルエット。
…映画の中に居なかったか?こんなヤツ。

異次元倉庫からナイフを出した。ちょっと長めで凶悪なヤツ。
それを手に扉の前に立つ。
思いっきり良くバタンと開けた。
飛びかかってくる黒い影。
ナイフを投擲。
真っ正面から向かって来たので、影のど真ん中に命中した。
勢いそのまま向かいの壁に突き刺さった。
壁に貼り付けになりながらも、カサカサとうごめく脚と…尻尾?

うん。
シルエットでそうじゃないか…って気はしたんだけどさ…。
これ…。
エ○リアンの幼生態じゃね?

断末魔的にヒクヒクしてるそれをくっつけたままで、ナイフを回収。

「うっわー…何それ…」

スズがやってきた。
背後の見物人も、顔をひきつらせている。
グッサリと串刺しになっているそれは、どう見ても、何度見てもエ○リアンの幼生態にしか見えない。エ○リアンと違うのは、コイツの体液。酸とかじゃ、無いらしい。
…うん。とりあえず、キモい。

で、コイツ何?

見物人の1人が、半ば茫然としながら言った。

「…なんでこんな街中に、森妖虫が出るんだよ…」

しんようちゅう?

何それ?
んで、どゆこと?
何か知ってるッポい見物人が続ける。

「コイツは森妖虫って言って、深い森の最深部とかで熊とか猪とかの大型動物に寄生して増えるってヤツでな。卵の状態でだいたい30年ぐらいいるから、滅多に出くわさないんだ。ついでに意外と脆いから、成体になるまで生き残らないし、万が一成体になっても番になる相手の虫がいないって…。要するに、滅多にお目にかからない稀少生物だな。…こんな街中にいるわきゃ無いのによー…」

あー。本来森にいる生物で、モロいから、他の生物に寄生する、と。
要はでっかい寄生虫、と。
…あんた詳しいね?

「おう。兄貴がギルドの職員だ」

あ、な~るほど。
その場にいた全員が納得した。
じゃあ、これギルドに持ってきゃいいのかね?
いまだにビクビクしてるエ○リアン。
…じゃなくて、森妖虫。
ムダに生命力強いな。
まず食えそうに無いけど、何かの薬の元になるとか?

「ギルドに持ってってやれ。生産部が大喜びで買ってくれるぞ。魔法部と取り合いになるかもな~。研究材料として」

よーするに、謎生物なのであちこちバラして調べたい、と。
OK、ギルドに売っぱらおう。
ってことで。

「スズよー。ちょっとギルド行ってくるわ~。リッカさん頼むな」
「おお…ってお前、ソレそのままで行く気かよ?」

えー。
直で触りたくねーけど。
なんかキモいし。
まだ動いてるし。
異次元倉庫にゃ生きてるモンは入らないし、入ったとしても入れたくない。
ヤだよ。こんな謎生物。
つかエ○リアン。

「さすがにむき出しじゃマズいでしょ…」

ミヤさんが何かの布持ってやってきた。
…つかこれシーツじゃね?

「一枚売ってもらったよ。あと僕も行くからね。スズ君、リッカ君任せたよ」

…串刺しエ○リアンで持ってった方が、面白くね?

「そーゆーのは求められてないから」

…ちっ。

仕方ないのでナイフは抜かずに、そのままシーツでぐるぐる巻きにした。
…なんか、いまだにビクついてるのがちょっとヤな感じがしてな~…。
ナイフ抜いたら飛びかかってきたりして…。
まさか、な?



結局、串刺しのまま持ってったのは正解だった。
ギルド職員の弟って人が一緒に来て、話を通したらば速攻でギルド奥の作業場に連れて行かれた。
森妖虫ってムダに生命力が強いから、真っ二つにするとか、賽の目切りにするとかしないと死なないそーだ。
それか脚と尻尾を切り離してウゴウゴさせておくとか。
…キモい。
この寄生虫、寄生前の状態だと身体がそんなに硬くないので処理しやすい、と。
蟹の脱皮直後か。ソフトシェルクラブか。
丸ごと揚げて食うらしいけど、ソフトシェルクラブ。
食ったことないけどソフトシェルクラブ。
…あー、蟹食いて~…。






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