目標:撤収

庭にハニワ

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とは、限らない。

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村長の所でなにやら話し込んでいた、ミヤさんと銀竜が戻ってきた。
どうした?2人とも。…なんか、妙に疲れてないか?
まあとりあえず、メシを食え。
…って、ミヤさん?
ミヤさんは、俺の背後に廻ると、ベターっとのしかかってきた。
そして、がっしりと抱え込まれた。
…何がどうした?
何があった?…銀竜?

「…村長には、19歳になる娘が居まして…」

あー。
目ぇ付けられたか。

「かなり強引な様子で…」

肉食系女子か。

「色ボケ姫よりも、ぐいぐい迫ってきまして…」

そりゃあ、すげーな…。
3人でぐったりしていると、スズとリッカさんが俺らの様子を見て、萌え上がったり生温かい目で見てきたり…。
美味いウマいと串焼きをがっついている村人や行商の人達との対比がすごかった。

今のミヤさんの状態の訳を聞いたリッカさんは。

「ね~ね~銀さん?顔で目を付けられたんなら、銀さんにも迫ってきたんじゃないの?」

話を広げやがった。
銀竜はしれっと一言。

「妻を愛している、と言いました。…妻などいた事もありませんが」

あー。
普通、親が一緒に居たんなら、娘の暴走は絶対に親が止めるわな。相手が所帯持ちなら尚更。

「で、今ここにいる村人以外の男の中で、一番顔が良いミヤさんにロックオンしたのか…」

スズよ…あんまり言ってやるなよ…。
顔が良いのも大変だな。

「…お前…他人事じゃあないからな?」

…スズよ…他人事にしておきたいんだから、そこらへんに触れるな。

「…ミヤさんは、なんて言って逃げてきたの?」

…掘り下げるね~、リッカさん。

「…僕にも好みってモンがある…って」

そりゃあまた。
なかなかにキツいお言葉で。
ムダに自分に自信のある女には、信じられないー!ってモンだろうよ。

…だからあそこからスッゴい顔で見てる女がいるのか…。

いったいどーゆーつもりなのか。
広場と村を繋ぐ道のあたりで、カゴを抱えて立っている女が1人。
子供が寄ってっては怯えた顔でUターンしてくる…って時点で…。
あの顔は、ちょっとしたホラーだ…。



まあ、とりあえず、さー…。

「ミヤさん、銀竜も、メシ食って下さい」

だからとにかく離れろ。

「…嫌だ」

子供か。
もうため息すら出てこない。
リッカさんは萌えたぎっているし、スズはこっちを生温かい目で見ながら、ひたすらメシを食っている。

「主様…あの女はミヤ様に、村に残って自分と夫婦になれ。または自分を連れていけ。どちらも嫌だと言うのならば、一晩だけでもいいから、自分を抱け、と…」

…親は何をしてたんだ…?
銀竜は続ける。

「なんと言いますか…。村長は、もはや何も言うまい、といったような感じでして…」

ここ、街道沿いの村だよな…。
頑張って歩けば3~4日でガランの街に着く距離だよな?
村人以外に男が居ないってワケでも、山奥の孤立した村で、他人との交流など無い…ってワケでもない。

…何、一夜妻希望してんの?

「…正直、血迷った者の思考回路は理解出来ません…」

うん。俺にも分かんねー。
そしてあの女──村長の娘?──の視線が怖い。
夜這いとか仕掛けて来るんじゃね?

「多分」

銀竜…そんなにきっぱり言わんでくれ…。

しゃーない。

「スズよ──」
「んがふっ?」

がっつき過ぎだ。
そして口に詰め込み過ぎだ。

「地属性魔法と錬金術の練習だ。片手で持てるサイズの植木鉢、作ってみ?」

メシの後でいいから。

「おー。分かった」

そしてまた食べる。

…串焼き、もっと焼くか。



その後、なんとかミヤさんを引っ剥がして、串焼きの追加分を作ったり、ミヤさんと銀竜にメシを食わせたり、村人や行商隊に絡まれたり…。
主にカレー粉(多分?)を使った串焼きのせいだな。
俺らからしたら、カレー粉としちゃまだまだなんだけどさ。こっちの世界じゃ今まで無かった風味だったようでさ。
どこで仕入れた?まだ持っているならぜひ買い取らせてくれ…、とまあ…。

「今夜で使い切ったので、もうありません!」

と言い切ったら、ものすごくがっかりしてた。
…カレー粉はあるっちゃあるけど、もれなくオカシな表示されてるのばっかりだぜ?
(失敗)だの(微妙)だのはまだ良い方で、中にはカレー粉(だったらいいな)、カレー粉(とは言わせない!)とか…。
ホントにこの文章書いてるヤツ…一回出てこい。
話し合おーぜ。
なんなら物理的に。

まあ、他人様にそんなオカシなモンは出せないだろ。
今夜串焼きに使ったのは、(多分?)だから、まだマシな評価だったヤツだ。
…マジで、もう無いけどな。






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