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その頃、ヤツらは。3
やらかした自覚をの無い子供先生ことイサドラ・スウィーニー。
またため息が口から出てきた学園長エリスフィード・シルフィは、片手で額を押さえている。…頭が痛い、らしい。
「じゃあ、あなたがやった事、客観的に言ってみましょうか?他人の目にどう写っていたか…。まず、初対面のギルド員…うちの生徒くらいの年頃だったそうね?そんな子供に名乗りもせずに、いきなり魅了魔法を仕掛けて自分の意のままにしようとしたわね?しかも失敗した事に気付きもせず、その子供達に魔法が掛かっているものと決めつけて、大声で随分と図々しい事をペラペラとしゃべりながら、ガランの街中を歩きまわったそうじゃない。…宿に着くまでその子供達が付いて来ていないって事に気付かないとか…。慌ててギルドに戻ってみれば、学園の教師ともあろう者が、賭け事の対象にされて…。」
何事か言おうとする子供先生をそのままに、学園長は続ける。
「翌日性懲りもなく同じことをしたそうじゃない。しかもまた魔法は失敗したとか…あなた、魔法の腕が落ちているんじゃなくて?」
思い当たる節があった──と、いうか、すべて事実である──子供先生は、微妙に顔をひきつらせている。
「…次は大丈夫じゃ。次こそは、わらわの魅了魔法であやつらを…」
「馬鹿な事言わないでちょうだい」
学園長はキッ、と子供先生を見据えて言った。
「あなたが2度も魔法を仕掛けて失敗した子達は、西の虹蛇様のお気に入りなのよ?あなた…次にガランのギルドに一歩でも立ち入ったら竜鱗族・水鱗族に何をされるか分からないわよ?あなたの嫌いなウロコがいっぱい…」
「いーやーっ!何故じゃーっ!わらわウロコの人たちには一歩も近寄っておらんのに、何故敵認定されるのじゃーっ!」
「…だから、ね…」
本当に、ため息ばかりの学園長。
胃に穴の一つも開いてそうだ。
「あなたは竜鱗・水鱗族の崇拝対象たる西の地にいらっしゃる、虹蛇様のお気に入り、になってる子供達に、初対面でいきなり魅了魔法を仕掛けて自分の好きにしようとしたのよ?しかも2回も。失敗したから良いだろう。知らなかったからしょうがない、では済まされないわ。もう一度仕掛けるなんて、冗談じゃないわよ」
学園長は、更に深ぁ~くため息をついて。
「…あなたはこの先50年、学園の敷地から外に出ることを学園長の権限で禁じます。魔人族の王にも話は通してあるから、誰かに泣きついても無駄よ」
子供先生は、愕然としながら。
「そんなバカな話があるかーっ!なんで王族にまで話が伝わるのじゃ!そんな大層な話じゃなかろう!」
「…あなた1人の為に、竜鱗族・水鱗族の人たちと戦争になるような事は避けたいのよ。…と、言うよりも、あなた如きの為にそんな馬鹿げた事、起こす訳にはいかないの。あなたがこれ以上、彼らに近づかなければ良いだけの話よ。簡単でしょう?…なぶり殺しにされたくなければ、大人しく学園内に居なさい」
子供先生は、固まった。
言葉も出ないようだった。
そしてもう一つ。
水面下でコソコソと動いているヤカラが…。
見るからにアヤシげな地下実験室。
金属やガラスで作られた様々な器具。
異様な雰囲気を放つ薬品や薬草類。
魔素を大量に含んだ鉱石や金属が、そこら中にゴロゴロと転がっている。
天井で煌々と光っている灯りの魔法具は、細長い棒が2本一組になって等間隔で並んでいる。
…蛍光灯のように見える。
よく見れば、ガラスの器具…ビーカー・フラスコ・試験管など…この世界では見かけないモノであるのに、そこでは当然のように様々な試薬を満たして並べられている。
そしてその中を、白衣を着た男が1人、楽しそうに動いている。
ブツブツと、何やら余人には理解不能な事を呟きながら。
地下実験室の扉を開けて、小さな男の子が入ってきた。猫耳と猫の尻尾が付いている。
そして誰かの面影があった。
人ネコの子供は、子供らしい声で言った。
「ごしゅじんさま、虎の人がもどってきました」
白衣の男は我に返り、人ネコの子供の頭を軽く撫でると、子供を従えて上の階へと向かった。
人ネコの子供と共に白衣の男が向かったのは、とある部屋。
窓を背にして机と椅子が一組。
それ以外何も無い、素っ気ない部屋だった。
そこに、金茶の短い髪に浅黒い肌の男が1人待っていた。
白衣の男はどっかりと椅子に座り、口を開いた。
「今度は良い報告が聞けるんだろうね?」
「そう…だな。ある意味良い事なんだろうな…」
金茶の男は感情を押し殺した声で淡々と、自分が見てきた事を話した。
ガラン支部で起きた事すべてを。
少年達は、思いもよらぬモノの庇護下にあるらしい事を。
「…絡め手であの子1人にするのはムリかー…。さすがに鱗の種族全部を敵にまわすのは、な~…。めんどくさい。…んじゃ、君がなんとかしてよ」
白衣の男は、あっさりと言った。
「…はあ?」
「君があの子を連れてきてよ。他の連中はいらないから、ほっといてもいいや。欲しいのは真言君だけだからね」
そばに立たせていた人ネコの子供を膝に乗せて頬ずりしている白衣の男。
「この子も頑張って真言君に似せて作ったけど、やっぱり本物が欲しいんだよね~。あ、今は赤髪赤目のコウ、だっけ…。ん~…本物が手に入るまで、赤い子でも作って遊んでよーかな~…2Pカラーか…。あ、君に拒否権は無いからね。ボクの言うとおりにしなけりゃ、君の大事なあの子がどうなるかな?」
ニヤニヤと、イヤらしい顔で笑う白衣の男。
抱え込まれている人ネコの子供の無表情との差がすごい。
「大事な子に何かされたくなければボクの言うコト聞いてよ、ね?」
白衣の男はくつくつと笑いながら。
「いや~、希少な虎のライカンを自由に使えるって、気分良いね~。これで真言君がボクのモノになれば、言うコトなしだね。じゃあ、待ってるよ?ジェイ・フーガ」
ジェイ・フーガと呼ばれた金茶の男は、忌々しげに白衣の男を睨むと、部屋を出ていった。
またため息が口から出てきた学園長エリスフィード・シルフィは、片手で額を押さえている。…頭が痛い、らしい。
「じゃあ、あなたがやった事、客観的に言ってみましょうか?他人の目にどう写っていたか…。まず、初対面のギルド員…うちの生徒くらいの年頃だったそうね?そんな子供に名乗りもせずに、いきなり魅了魔法を仕掛けて自分の意のままにしようとしたわね?しかも失敗した事に気付きもせず、その子供達に魔法が掛かっているものと決めつけて、大声で随分と図々しい事をペラペラとしゃべりながら、ガランの街中を歩きまわったそうじゃない。…宿に着くまでその子供達が付いて来ていないって事に気付かないとか…。慌ててギルドに戻ってみれば、学園の教師ともあろう者が、賭け事の対象にされて…。」
何事か言おうとする子供先生をそのままに、学園長は続ける。
「翌日性懲りもなく同じことをしたそうじゃない。しかもまた魔法は失敗したとか…あなた、魔法の腕が落ちているんじゃなくて?」
思い当たる節があった──と、いうか、すべて事実である──子供先生は、微妙に顔をひきつらせている。
「…次は大丈夫じゃ。次こそは、わらわの魅了魔法であやつらを…」
「馬鹿な事言わないでちょうだい」
学園長はキッ、と子供先生を見据えて言った。
「あなたが2度も魔法を仕掛けて失敗した子達は、西の虹蛇様のお気に入りなのよ?あなた…次にガランのギルドに一歩でも立ち入ったら竜鱗族・水鱗族に何をされるか分からないわよ?あなたの嫌いなウロコがいっぱい…」
「いーやーっ!何故じゃーっ!わらわウロコの人たちには一歩も近寄っておらんのに、何故敵認定されるのじゃーっ!」
「…だから、ね…」
本当に、ため息ばかりの学園長。
胃に穴の一つも開いてそうだ。
「あなたは竜鱗・水鱗族の崇拝対象たる西の地にいらっしゃる、虹蛇様のお気に入り、になってる子供達に、初対面でいきなり魅了魔法を仕掛けて自分の好きにしようとしたのよ?しかも2回も。失敗したから良いだろう。知らなかったからしょうがない、では済まされないわ。もう一度仕掛けるなんて、冗談じゃないわよ」
学園長は、更に深ぁ~くため息をついて。
「…あなたはこの先50年、学園の敷地から外に出ることを学園長の権限で禁じます。魔人族の王にも話は通してあるから、誰かに泣きついても無駄よ」
子供先生は、愕然としながら。
「そんなバカな話があるかーっ!なんで王族にまで話が伝わるのじゃ!そんな大層な話じゃなかろう!」
「…あなた1人の為に、竜鱗族・水鱗族の人たちと戦争になるような事は避けたいのよ。…と、言うよりも、あなた如きの為にそんな馬鹿げた事、起こす訳にはいかないの。あなたがこれ以上、彼らに近づかなければ良いだけの話よ。簡単でしょう?…なぶり殺しにされたくなければ、大人しく学園内に居なさい」
子供先生は、固まった。
言葉も出ないようだった。
そしてもう一つ。
水面下でコソコソと動いているヤカラが…。
見るからにアヤシげな地下実験室。
金属やガラスで作られた様々な器具。
異様な雰囲気を放つ薬品や薬草類。
魔素を大量に含んだ鉱石や金属が、そこら中にゴロゴロと転がっている。
天井で煌々と光っている灯りの魔法具は、細長い棒が2本一組になって等間隔で並んでいる。
…蛍光灯のように見える。
よく見れば、ガラスの器具…ビーカー・フラスコ・試験管など…この世界では見かけないモノであるのに、そこでは当然のように様々な試薬を満たして並べられている。
そしてその中を、白衣を着た男が1人、楽しそうに動いている。
ブツブツと、何やら余人には理解不能な事を呟きながら。
地下実験室の扉を開けて、小さな男の子が入ってきた。猫耳と猫の尻尾が付いている。
そして誰かの面影があった。
人ネコの子供は、子供らしい声で言った。
「ごしゅじんさま、虎の人がもどってきました」
白衣の男は我に返り、人ネコの子供の頭を軽く撫でると、子供を従えて上の階へと向かった。
人ネコの子供と共に白衣の男が向かったのは、とある部屋。
窓を背にして机と椅子が一組。
それ以外何も無い、素っ気ない部屋だった。
そこに、金茶の短い髪に浅黒い肌の男が1人待っていた。
白衣の男はどっかりと椅子に座り、口を開いた。
「今度は良い報告が聞けるんだろうね?」
「そう…だな。ある意味良い事なんだろうな…」
金茶の男は感情を押し殺した声で淡々と、自分が見てきた事を話した。
ガラン支部で起きた事すべてを。
少年達は、思いもよらぬモノの庇護下にあるらしい事を。
「…絡め手であの子1人にするのはムリかー…。さすがに鱗の種族全部を敵にまわすのは、な~…。めんどくさい。…んじゃ、君がなんとかしてよ」
白衣の男は、あっさりと言った。
「…はあ?」
「君があの子を連れてきてよ。他の連中はいらないから、ほっといてもいいや。欲しいのは真言君だけだからね」
そばに立たせていた人ネコの子供を膝に乗せて頬ずりしている白衣の男。
「この子も頑張って真言君に似せて作ったけど、やっぱり本物が欲しいんだよね~。あ、今は赤髪赤目のコウ、だっけ…。ん~…本物が手に入るまで、赤い子でも作って遊んでよーかな~…2Pカラーか…。あ、君に拒否権は無いからね。ボクの言うとおりにしなけりゃ、君の大事なあの子がどうなるかな?」
ニヤニヤと、イヤらしい顔で笑う白衣の男。
抱え込まれている人ネコの子供の無表情との差がすごい。
「大事な子に何かされたくなければボクの言うコト聞いてよ、ね?」
白衣の男はくつくつと笑いながら。
「いや~、希少な虎のライカンを自由に使えるって、気分良いね~。これで真言君がボクのモノになれば、言うコトなしだね。じゃあ、待ってるよ?ジェイ・フーガ」
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