目標:撤収

庭にハニワ

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たらふく食った後だってぇのに。

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食事会が終わって。

…あんなに作ったのに足りなくなるとは思わなかったわ、マジで…。

しょーがないから異次元倉庫から追加する事にした。
何種類か作りおきしてたパスタ類をドンドンと出したらば、なかなかの速さで無くなった。
正直、ちょっとびっくり。
リドラさんはカニクリームがお気に召したようで、そればかり食べていた。
…カニをメインにした料理…?
とりあえず、焼いただけ~の焼きガニを追加した。
毛ガニっぽいが毛ガニではない。分類的にはカニになり美味しく頂ける、という《鑑定》結果だったので喜んで捕獲したヤツを。

〆にこっそり大量に作っていたオレンジシャーベットを出して。

全部キレイに平らげていただきました~。

あー、疲れた。



客が帰った後のギルド長の家にて。

綺麗に片付けも終わり、客間から私的な部屋に移動したギルド長──クリス──と、リドラの2人。
シンプルなソファセットにウッドベースのローテーブル。
2人掛けのソファに2人ぴったりとくっ付いて座っている。
ローテーブルには、コウから譲り受けた酒の実から作った清酒が一本。その酒を満たしたグラスが一つ。
リドラの前には、果汁を蜂蜜と炭酸水で割ったモノが。コレもコウから仕入れたモノである。
…あの子供はどれくらいの量を、異次元倉庫にしまい込んでいるのか…。
どうやらため込んでいるのは食糧だけじゃなさそうだし…。
考えるの、よそう…。

「…クリス」

クリスの肩に頭を預けていたリドラが ふ、と顔を上げてクリスの顔を見つめる。
クリスと2人きり、以外の場所では基本的に無表情がデフォルトだったリドラ。
今日はずいぶんと楽しそうにしていたな、と思い出しながらクリスは愛しげにリドラを見つめる。

「何かしら? リー…」
「…食べ終わったらギルドに戻るって言ってたけど…いいのか?」

クリスはリドラの肩に回していた手で、リドラの髪を撫でながら。

「大丈夫よ。緊急なモノは無いし、今日の分は明日に回しても十分間に合うモノばかりだし。…ランちゃんも満足してたしねぇ」

クリスは楽しげに笑い。

「ちょっと予想以上だったわねぇ。あんなに料理上手な子だとは、思っても見なかったわ。ギルド員なんかやってないで、料理屋でも始めればいいのにねえ。流行るわよ~」

するとリドラは、ちょっと困ったようで。

「ん…。でも、そうしたら俺はアイツらには会えなかった」
「あら…」

クリスは楽しそうに微笑み。

「あの子たちのこと、気に入ったの?珍しいわねぇ?」
「うん…」

リドラはこっくりと頷き、言った。

「コウ、だっけ…。アイツ、俺と同じ…」
「おなじ?」
「うん。…アイツもお母さんいないって…。俺も、お母さんいないから…」

リドラにとっての両親は、いても居ないのと同じだったらしい。

「そっか…」

クリスはリドラを抱きしめて、しばらくの間、2人はそのまま動かなかった。



昼にがっつり食い過ぎたんじゃね?
《壺中天(笑)》に戻った俺らは、茶の間でまったりと…っつーか、でろーんと伸びて、いや伸びきっていた。
礼儀作法にウルサいヤツがいたら、説教モンだ。
…銀竜ですら、満足げにしている。

…なあ、今日の晩飯なくても…。

「「「それはイヤ」」」
「………」

あ、そー……。

んじゃ、適当に すいとんでも作るかね。
出汁はたっぷりあるし。
キノコ出汁に根菜類…大根、ニンジン、イモ…キノコに肉も少し。
沸騰させて、緩めに溶いた小麦粉生地を少しずつ落としていく…って、俺は教わったんだけど。家庭によって作り方違うんだろーな。
まあいーや。うどんより楽だ。

刻み野菜の出汁──ミルポワっつったかな、確か──は、いずれそのうち出番が来るだろうよ。ブイヨン代わりにしてもいーや。

「な~、コウよ…」

スズが伸びきったままで。

「オレが今日頑張って剥いた牡蠣、全部使ったのか~?」

いーや。後で牡蠣フライにする気満々だが。
…土手鍋は、味噌がないから作れないしな。
クラムチャウダーならぬオイスターチャウダーの方がいいか?

「両方~」
「…どっちも、いいね~…」
「スッゴく悩ましいわね~…」

銀竜は、チャウダーとは何ぞや?という顔をしている。
そーか。知らんか。
じゃあ近日中に食わせてやろう。

とにかく、今はひと休みさせてくれ…。







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