目標:撤収

庭にハニワ

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……いきなり?

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俺と目が合った瞬間、銀竜が連れてきた男は。

「すいませんでした!」

一声叫ぶと同時にいきなり土下座した。

何でだ。

っつーか、土下座って文化があるのかこの世界?



まあ、それはそれとして。
いきなり土下座から始まったこの男。
伏せてるから顔は分からないが、金茶の短い髪に浅黒い肌ってさ。
どっかで見覚え……っつーか、聞き覚えないか?
なあ?

とにかく、ここでゴチャゴチャやってんのもどーかと思うし。
移動しようぜ。
昨日ミヤさんが頑張って作った《壺中天(仮)》に。

「ちょっと待って、コウ。(仮)って何だい? (仮)って。僕は3時間かけて、頑張って作ったんだよ?」

ミヤさん……あれだけ細かくチェック入れといて、《鑑定》はしてないんだ……。

「え?」

俺の肩をわし、と掴んでミヤさんは何の事だ? と詰め寄ってくる。
近い。
んで、痛い。
そしてリッカさんが、いつものよーにくふくふ笑っている。
そんなリッカさんを見て、スズが呆れ顔ってとこまでワンセットになってないか?

「今そんな場合じゃないってことは、分かってるでしょーが。文句なら鑑定結果の文章に言って下さいよ。俺の《壺中天(笑)》なんか、(笑)ですよ」

そう言えばそうだったね、と冷静になったミヤさんは。

「じゃ、とにかく中に入ろうか」

と、何事もなかったよーに仕切り始めた。

……いや……いーんだけどね?
なんか、こー……ね?



パッと見は小さいプレハブ小屋なのに、中は入ると8畳間っつー、理不尽な《壺中天(仮)》に、男は目を見張ったが。
やっぱり土下座体勢に入った。

……何なんだよ、一体。
何か俺らにやらかしたワケ?

とにかく、銀竜にあの肉人形を追っかけて行ってからの話を聞こうか。
この土下座男については、その後だ、後。
好きなだけ土下座してりゃいーさ。



俺らは椅子に座り。
当然のよーにリッカさんが茶の仕度をして。
茶菓子までスタンバイして……。
どーもTV見るよーな体勢に入ってないか?
娯楽じゃないんだぞ。
……多分。

まあ、いーか。

銀竜、話せ。
長引くよーなら、椅子に座れ。

「御意」

銀竜は、土下座男を少しだけ気にしながら、椅子に腰掛けて話し始めた。



──あの時──

マドゥーニーの町を出るまで、あの肉人形は普通の人族のように振る舞っておりました。
市場で買い物して、何やら飲み食いすることまでやっておりましたね。
仕組みは分かりませんが、奇妙に感じたことを覚えております。

さて、肉人形はマドゥーニーを出てから、人の形を捨て去りました。
いきなり白目を剥いたかと思ったら、ガクガクと身体を揺らしながら、その姿形が変化していったのです。
……足が多数あれば良いというものではない、と思ったのですが。
……なんというか。
曰く言いがたい形状の、多脚生物となって、ワサワサと……。
予想外に素早い動きで、とにかく不気味でした。
いつしか道を外れ。
山道ですら無い、道無き道をひたすら追いかけましたが。
ボロボロと肉片をこぼしながら行くので、追跡は容易でした。
道しるべが腐った肉片、というのもかなりイヤなモノでしたが……。









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