目標:撤収

庭にハニワ

文字の大きさ
225 / 374

地味に不幸な男。

しおりを挟む
これまでに、幾つかあったゴタゴタの仕掛け人が、目の前のこいつ──ジェイド・フーガだと判明。

俺が微妙な顔してると、スズは何か納得することがあったよーで。

「……あの、カニ登場の直前の妙な気配は……あんただったのか」

スズは、あれ何だろ? と思ってたんだよ。
猫科のライカンだから、気配が人っポかったり猫っポかったりしたのか~……と、疑問がとけて1人スッキリしている。

リッカさんは妄想が暴走してるよーで、目がカマボコの断面みたいな半月型になってる。
とりあえず、放置する方向で。



俺は、今までにあったいろんなことを思い出してみた。

「えー……エ○リアンだろ。酔っ払い猿のキングとクイーンだろ。森の中のカニだろ。……あと……色ボケ人魚にも関わってたか?」
「あぁ……。そう言えば、人魚の証言通りの容姿だよね。……何だろう。他にもやらかしてそうだよね」

ミヤさんの追求に、ジェイド・フーガは視線を右斜め上に動かした。
……まだ何かありそうだな。

吐け。
全部吐け。
この際だから、思いっ切りよく吐き出してスッキリしちまえ。

ジェイド・フーガは少し躊躇して。
ためらいながらも話し出した。

「……自分たちに何の関係があるのか? と思うだろうが……まずはおれの話を聞いてくれないか……」

妙に畏まった口調で、ジェイド・フーガは話し始めた。

「おれは虎のライカンだが、本来生まれた一族からは放逐された身でな。当時、まだ幼いおれを拾って育ててくれたのが、母だ。気紛れで奔放な所もあるが、母はおれを可愛がってくれてな……」



途中省略するぞ。

つまり、義理のお母さんに大事に大事に育てられて、こんなに大きくなりました、と。
見た目20代半ばの人の姿。
何も知らない色ボケ肉食女子ならば、ふらふら~……と寄っていきそーなくらいには、良い男振りではあるんだろう。

で?
続き、よろしく。

「……母は気紛れで奔放だと言っただろ。おれも1人立ちしてからは、たまに様子を見に行くくらいで、四六時中べったりだったワケじゃないから……。正直、何故そうなったのかは分からないんだが……。ある日、母の姿が見えなくなったと母の友人から連絡があってな。心当たりを探したんだが、まったく手掛かり無しで……」

あ~うん。
そこら辺の苦悩と焦燥感を深く掘り下げて語らなくてもいいから、先に進め、先に。

「……母は捕らわれていた。おかしな性格の、イカれた錬金術師に」

……はい?

俺らがキョトンとしていると、ジェイド・フーガは。

「まあ、いきなり錬金術師とかいわれても困るか……」

いや、錬金術自体は知ってるし。
むしろ活用しまくってるし。
唐突だな……って思っただけだが。

「おれもいまだに納得出来てないんだけどな。……母は錬金術師に捕らわれていて、助けに行ったら……母を人質にされて、言いなりになるしかなくなったんだよ……」

ジェイド・フーガは、悔しいやら腹立たしいやら……と、ぐちゃぐちゃの感情が溢れた表情で、続けた。

「あの変態の言いなりになってだいたい……50年近くか。おれが素直にあの変態の言いなりに、素材集めやら何やらやってるうちは、母を実験台にはしない、と……。母は鎖に繋がれ、部屋に閉じ込められて50年近く……。極稀に顔を見ることるが、じわじわと憔悴してきていてな……」

ジェイド・フーガの方が辛そうだ。

……よーするに、母親──義理の──を人質にとられて、言うコト聞かざるを得なかった、と。

……素材集めってのも、あんまり良いイメージ湧かないな。
変態なんだろ?

「変態だ。まごうことなき変態だ」

思いの外きっぱりと宣言するジェイド・フーガ。

「何でもいいから素材になりそうなモノを持ってこい、って言われて。嫌がらせ兼ねて魔素が飽和状態になって死んだ獣の死体をそのまんま、丸ごと全部持っていったら大喜びしやがってな~……」

本来、魔石だけ持っていくべきところなんだが。
そう言ったジェイド・フーガの目は死んでいた。









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

貴方のために

豆狸
ファンタジー
悔やんでいても仕方がありません。新米商人に失敗はつきものです。 後はどれだけ損をせずに、不良債権を切り捨てられるかなのです。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

【完結】ゲーム開始は自由の時! 乙女ゲーム? いいえ。ここは農業系ゲームの世界ですよ?

キーノ
ファンタジー
 私はゲームの世界に転生したようです。主人公なのですが、前世の記憶が戻ったら、なんという不遇な状況。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか。  ある日、我が家に勝手に住み着いた平民の少女が私に罵声を浴びせて来ました。乙女ゲーム? ヒロイン? 訳が解りません。ここはファーミングゲームの世界ですよ?  自称妹の事は無視していたら、今度は食事に毒を盛られる始末。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか?  私はどんな辛いことも頑張って乗り越えて、ゲーム開始を楽しみにいたしますわ! ※紹介文と本編は微妙に違います。 完結いたしました。 感想うけつけています。 4月4日、誤字修正しました。

処理中です...