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森の中で会ったのは
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「ここでございますよ」
さあ、とリチャードが外へと促す。外はすでに夜で真っ暗で。
馬車から降りた私の目の前にはもっと真っ黒な物体、大きな森が広がっていた。
いきなり止まった馬車から降ろされ、古い旅行鞄を2つ投げてよこされた。
「それでは森からこちら側には足を踏み入れませんように。それとこちらを亅
執事のリチャードはランプとマッチを手渡してきた。ユルゲンに仕えてるけどそう悪い人ではないのかも。お礼を言おうと顔をあげる間もなく、会釈した執事は馬車に取って返し土埃を上げて去っていった。
「いい人でもないか亅
土埃に手で口を覆って目を細めた。
つまり、森からこっちがもともといたところ。で、森の中から先が隣の市ってことらしい。
ランプをくれたってことは森の中を行けってことよね。
もらったランプに火を灯し、放り投げられたカバンを持つと深呼吸。森の中へと足を踏み出した。
どこまで続いてるのか見渡す限り木、木、木。
どのくらいの森かはわからないがここさえ抜ければ別の町に着くのかな。
草は生い茂って入るものの、ここが道なのか。木と木の間に馬車ぐらいなら通れるスペースが奥へと続いている。
とにかく右を見ても左を見ても背の高い木が好き放題に育ってる。
森林浴にはいいかもだけどマジで暗い。
ランプの灯が届くのも手前ぐらいで真っ暗というより黒い木々の奥は真っ黒。
かなり怖いんだけど。
何も出ないよね?
っていうか夢じゃないのかな。
あの時、私は気絶して長い夢を見てるんじゃないかと思ってた。
3人にキレて目が覚めるかと思ったら、まさかの刑罰で放り出されて森の中にいる。
それにしても夢にしては長い。
まさか現実なんてこと。
ガサリ
?
ガサガサ
ええ?
暗闇から聞こえる物音に意識持っていかれて思考は中断。
イノシシ? シカ? サル?
考えたくないけど、クマ……じゃないよね?
ガサッ、ザッ!
うわっ!
何かが飛び出してきて思わずしゃがみこんだ。
クマだったらもう終わりだ。
首を引っ込めてぎゅっと目をつぶった。
しんっとした中に、
タンっ、タタタ
足音?
クマってあんな軽い音させないよね。
引っ込めていた頭を持ち上げてうっすらと目を開けた。
真っ暗な中、ランプのかすかな灯りに光る目が2つ、ぴんっと尖った耳に長い尻尾。
「ね、ねこ?」
「ミャア」
と鳴いたのはスラッとした黒猫。
「あ~、何だ、よかった亅
黒い大きな生き物じゃなくて本当によかった。
それにしても。
「ねえ、どこから来たの? お家はどこ?亅
黒猫に語りかけると、意味がわかったのか、すいっと向きを変える。タタタっと進んだ黒猫に、
「ちょっと待って亅
黒猫はピタリと止まるとこちらを振り向き、またまっすぐに進んでいく。
まるで、こちらに来いって言ってるように。
「お家はそっちなの?亅
置いていかれないようにあわてて後を追う。
暗い中を進む黒い猫を見失わないように手を伸ばしてランプをかざしてついていった。
タタタと進んでいた黒猫がピタッと止まりこちらを振り向きニャーとひと鳴き。
目の前にこれまた黒い大きな物体が現れた。
家だ。
真っ暗な中に建っている家は窓からの明かりはなく黒く佇んている。
人の気配はまるでない。
空き家。
黒猫は勝手知ったるなのか、ドアの隙間から中に入っていった。
「こんばんは~、どなたもいませんよね亅
一応、挨拶しつつ、中に足を踏み入れた。
ギイ~と嫌な音をたてるドア。
ギシギシとなる床。
しかも真っ暗だし。
何だか昔見たホラー映画に出てきそうだ。
怖いけど、外で寝るよりはましと思うしかない。
「朝までお邪魔します亅
部屋の中をランプで照らした。
中は意外に広い。テーブルと椅子がある。台所らしいものと暖炉らしきものも。ベッドはないけど。
見ると黒猫が部屋の隅で丸くなっている。
「そこで寝るの? 私も寝てもいい?」
そっとそばに行くとカバンをクッション代わりにして横になった。
黒猫はちらりとこちらを見て立ち上がりかけたけど、またくるりと丸くなった。
さあ、とリチャードが外へと促す。外はすでに夜で真っ暗で。
馬車から降りた私の目の前にはもっと真っ黒な物体、大きな森が広がっていた。
いきなり止まった馬車から降ろされ、古い旅行鞄を2つ投げてよこされた。
「それでは森からこちら側には足を踏み入れませんように。それとこちらを亅
執事のリチャードはランプとマッチを手渡してきた。ユルゲンに仕えてるけどそう悪い人ではないのかも。お礼を言おうと顔をあげる間もなく、会釈した執事は馬車に取って返し土埃を上げて去っていった。
「いい人でもないか亅
土埃に手で口を覆って目を細めた。
つまり、森からこっちがもともといたところ。で、森の中から先が隣の市ってことらしい。
ランプをくれたってことは森の中を行けってことよね。
もらったランプに火を灯し、放り投げられたカバンを持つと深呼吸。森の中へと足を踏み出した。
どこまで続いてるのか見渡す限り木、木、木。
どのくらいの森かはわからないがここさえ抜ければ別の町に着くのかな。
草は生い茂って入るものの、ここが道なのか。木と木の間に馬車ぐらいなら通れるスペースが奥へと続いている。
とにかく右を見ても左を見ても背の高い木が好き放題に育ってる。
森林浴にはいいかもだけどマジで暗い。
ランプの灯が届くのも手前ぐらいで真っ暗というより黒い木々の奥は真っ黒。
かなり怖いんだけど。
何も出ないよね?
っていうか夢じゃないのかな。
あの時、私は気絶して長い夢を見てるんじゃないかと思ってた。
3人にキレて目が覚めるかと思ったら、まさかの刑罰で放り出されて森の中にいる。
それにしても夢にしては長い。
まさか現実なんてこと。
ガサリ
?
ガサガサ
ええ?
暗闇から聞こえる物音に意識持っていかれて思考は中断。
イノシシ? シカ? サル?
考えたくないけど、クマ……じゃないよね?
ガサッ、ザッ!
うわっ!
何かが飛び出してきて思わずしゃがみこんだ。
クマだったらもう終わりだ。
首を引っ込めてぎゅっと目をつぶった。
しんっとした中に、
タンっ、タタタ
足音?
クマってあんな軽い音させないよね。
引っ込めていた頭を持ち上げてうっすらと目を開けた。
真っ暗な中、ランプのかすかな灯りに光る目が2つ、ぴんっと尖った耳に長い尻尾。
「ね、ねこ?」
「ミャア」
と鳴いたのはスラッとした黒猫。
「あ~、何だ、よかった亅
黒い大きな生き物じゃなくて本当によかった。
それにしても。
「ねえ、どこから来たの? お家はどこ?亅
黒猫に語りかけると、意味がわかったのか、すいっと向きを変える。タタタっと進んだ黒猫に、
「ちょっと待って亅
黒猫はピタリと止まるとこちらを振り向き、またまっすぐに進んでいく。
まるで、こちらに来いって言ってるように。
「お家はそっちなの?亅
置いていかれないようにあわてて後を追う。
暗い中を進む黒い猫を見失わないように手を伸ばしてランプをかざしてついていった。
タタタと進んでいた黒猫がピタッと止まりこちらを振り向きニャーとひと鳴き。
目の前にこれまた黒い大きな物体が現れた。
家だ。
真っ暗な中に建っている家は窓からの明かりはなく黒く佇んている。
人の気配はまるでない。
空き家。
黒猫は勝手知ったるなのか、ドアの隙間から中に入っていった。
「こんばんは~、どなたもいませんよね亅
一応、挨拶しつつ、中に足を踏み入れた。
ギイ~と嫌な音をたてるドア。
ギシギシとなる床。
しかも真っ暗だし。
何だか昔見たホラー映画に出てきそうだ。
怖いけど、外で寝るよりはましと思うしかない。
「朝までお邪魔します亅
部屋の中をランプで照らした。
中は意外に広い。テーブルと椅子がある。台所らしいものと暖炉らしきものも。ベッドはないけど。
見ると黒猫が部屋の隅で丸くなっている。
「そこで寝るの? 私も寝てもいい?」
そっとそばに行くとカバンをクッション代わりにして横になった。
黒猫はちらりとこちらを見て立ち上がりかけたけど、またくるりと丸くなった。
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