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猫との暮らし
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「これ、タイ厶だし、こっちのはローズマリー。あ、どくだみも生えてる亅
朝になり泊まった小屋と周りを散策した。
朝日が差し込む森の中は昨夜の真っ暗な怖さとは大違いで、まるで童話の世界。
小屋も古いけど頑丈そうで、掃除すれば暮らしてはいけそうだ。
裏には小さな小川が流れてて、魚も泳いでいた。
「だから、ここに住んでたの?亅
昨夜からお世話になってる黒猫は、小川のそばで泳ぐ魚をじっと見ている。
糸はカバンにあったし釣りできるかな、待って、網があれば罠を作って。
カバンの中には着古した私の服が詰め込まれていた。他には裁縫道具や刺繍糸、本に日記らしいものまで。もう少しお金になるものでも入ってたらよかったんだけど。婚約者を頼りにしていってたんだろうから仕方ないか。
「ったくあんな男!」
黒猫が顔をあげ、びくりとする。
「あ、ごめんね」
思わず声に出してたようで、黒猫に謝ると、
「何もないよりはマシよね。まずは掃除!亅
と気合を入れた。
拾ってきた枯れた細い枝をまとめて箒にするとホコリを掃き出す。カバンに入っていた古い布を雑巾代わりにして床を拭く。
こんなことになって、ずっと夢だろうと思ってた。
だけどあまりに長過ぎるし、リアルすぎる。
現実世界で日本人だった私はストレス解消にスマホで転生モノやファンタジーの漫画を読んでいた。ゲームまで手を伸ばしてもいたのよね。まあそのぐらいハマっていた。
まさにそれじゃないのかな、って何となく思い始めていた。
何のお話なのかはわからないけど、どれかの中に転生しちゃったんじゃないだろうか。
この世界に転生し私はミーガンになってしまったわけで、ミーガンはどうなっちゃったんだろう。
私と同じように彼とお義母さんと友達に裏切られて。
私みたいにキレて怒ってなんてタイプではなさそうだし、卒倒しちゃったのかな。同じ状況だった私の意識がそこに入り込んだのかも。
じゃあ、本当のミーガンはこの体の中で眠っているのかもしれない。
ただ、いったいどの話なのか、漫画なのか、ゲームなのか。わからない。
それにどうせ転生するならお金持ちの悪役令嬢にでもなればよかったのに。ミーガンはどう考えても悪役令嬢ではなさそうだ。悲劇の貴族令嬢かな。今はその貴族の称号すらないみたいだが。
「悪役令嬢に転生したら死を回避しつつ静かに暮らしたのになあ」
悪役令嬢らしからぬ働きぶりで、キレイになった床をぐるりと見回した。
「まあ、ここも静かに暮らせるわよね。うるさい人も嫌な奴もいないし」
窓辺であくびをしていた黒猫がたんっと床に降りると、あちこちをくんくん。
「どう、きれいになったでしょ」
自慢げに背中をそらす私に近づいてきた黒猫は、
「みゃあみゃあ」
と顔を見て声を上げた。
「え? 何? あ、もしかしてごはん?」
黒猫が満足げに「にゃあ」とひと鳴き。
「あ、えーと。魚取りにいこうか」
ともかく、布の袋みたいなのをカバンから取り出して持っていく。
小川の中には小さい魚が結構泳いでる。手でつかめそうな気がするんだけど。
「うわっ」
「ひゃっ」
「きゃあああ」
案に相違して手元には濡れそぼった袋のみ。
「あの、仕掛けをつくれば、明日の朝には」
取れるんじゃないかな、ダメかな、と黒猫のほうを見ると。あきれたような顔でまるでため息のように「にゃあああああああ」と鳴かれた。
そのまま方向転換するとすたすたと進んでいく。
完全に呆れられたみたい。
「ねえ、何か取りに行くの?」
猫の本能で狩りに行くのかも。だが、黒猫はこちらを振り返ると、
「にゃあ」
こっちに来いとばかりに顔をくいっと前へ向ける。
どうやらついて来いといっているようだ。
朝になり泊まった小屋と周りを散策した。
朝日が差し込む森の中は昨夜の真っ暗な怖さとは大違いで、まるで童話の世界。
小屋も古いけど頑丈そうで、掃除すれば暮らしてはいけそうだ。
裏には小さな小川が流れてて、魚も泳いでいた。
「だから、ここに住んでたの?亅
昨夜からお世話になってる黒猫は、小川のそばで泳ぐ魚をじっと見ている。
糸はカバンにあったし釣りできるかな、待って、網があれば罠を作って。
カバンの中には着古した私の服が詰め込まれていた。他には裁縫道具や刺繍糸、本に日記らしいものまで。もう少しお金になるものでも入ってたらよかったんだけど。婚約者を頼りにしていってたんだろうから仕方ないか。
「ったくあんな男!」
黒猫が顔をあげ、びくりとする。
「あ、ごめんね」
思わず声に出してたようで、黒猫に謝ると、
「何もないよりはマシよね。まずは掃除!亅
と気合を入れた。
拾ってきた枯れた細い枝をまとめて箒にするとホコリを掃き出す。カバンに入っていた古い布を雑巾代わりにして床を拭く。
こんなことになって、ずっと夢だろうと思ってた。
だけどあまりに長過ぎるし、リアルすぎる。
現実世界で日本人だった私はストレス解消にスマホで転生モノやファンタジーの漫画を読んでいた。ゲームまで手を伸ばしてもいたのよね。まあそのぐらいハマっていた。
まさにそれじゃないのかな、って何となく思い始めていた。
何のお話なのかはわからないけど、どれかの中に転生しちゃったんじゃないだろうか。
この世界に転生し私はミーガンになってしまったわけで、ミーガンはどうなっちゃったんだろう。
私と同じように彼とお義母さんと友達に裏切られて。
私みたいにキレて怒ってなんてタイプではなさそうだし、卒倒しちゃったのかな。同じ状況だった私の意識がそこに入り込んだのかも。
じゃあ、本当のミーガンはこの体の中で眠っているのかもしれない。
ただ、いったいどの話なのか、漫画なのか、ゲームなのか。わからない。
それにどうせ転生するならお金持ちの悪役令嬢にでもなればよかったのに。ミーガンはどう考えても悪役令嬢ではなさそうだ。悲劇の貴族令嬢かな。今はその貴族の称号すらないみたいだが。
「悪役令嬢に転生したら死を回避しつつ静かに暮らしたのになあ」
悪役令嬢らしからぬ働きぶりで、キレイになった床をぐるりと見回した。
「まあ、ここも静かに暮らせるわよね。うるさい人も嫌な奴もいないし」
窓辺であくびをしていた黒猫がたんっと床に降りると、あちこちをくんくん。
「どう、きれいになったでしょ」
自慢げに背中をそらす私に近づいてきた黒猫は、
「みゃあみゃあ」
と顔を見て声を上げた。
「え? 何? あ、もしかしてごはん?」
黒猫が満足げに「にゃあ」とひと鳴き。
「あ、えーと。魚取りにいこうか」
ともかく、布の袋みたいなのをカバンから取り出して持っていく。
小川の中には小さい魚が結構泳いでる。手でつかめそうな気がするんだけど。
「うわっ」
「ひゃっ」
「きゃあああ」
案に相違して手元には濡れそぼった袋のみ。
「あの、仕掛けをつくれば、明日の朝には」
取れるんじゃないかな、ダメかな、と黒猫のほうを見ると。あきれたような顔でまるでため息のように「にゃあああああああ」と鳴かれた。
そのまま方向転換するとすたすたと進んでいく。
完全に呆れられたみたい。
「ねえ、何か取りに行くの?」
猫の本能で狩りに行くのかも。だが、黒猫はこちらを振り返ると、
「にゃあ」
こっちに来いとばかりに顔をくいっと前へ向ける。
どうやらついて来いといっているようだ。
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